産総研LINK No7
15/16

CACSは、時々刻々の動的な交通状況を考慮する経路誘導システムとしては世界初のもので、1977年、システムを搭載した車両と搭載していない車両の、どちらが先に目的地に到着するかを競い合う実験を東京都心で行ったところ、搭載車両が勝利し、システムの有効性・利便性が確認された。 1990年代に入り、産総研は、それまでの個車の自動運転研究に通信技術を加えた協調走行の研究を進めてきた。その一つが、イルカが仲間と“会話”をしながら同じ方向に泳ぐように、車車間通信によって前後の車両の走行情報を把握し合い、複数車両が協調して走る技術だ。このような車車間通信と運転制御が実現すれば、それぞれの車が、周囲の車の運転状況に応じて、センサーで捉えるよりも確実に加速・減速したり、車間距離を保ったり、適切なタイミングで合流したりできるようになる。 2000年には、自動運転車5台による合流や追従などのさまざまな協調走行のデモを公開した。この頃の自動運転技術は、乗用車の安全で快適な走行だけではなく、トラックやバスの隊列走行により二酸化炭素の排出量を低減するという、省エネルギー化のための有力な技術としても注目されていた。産総研では、日本自動車研究所など15の企業・機関とともに、NEDOプロジェクト協調走行技術でより安全で「エコ」な交通システムへ「エネルギーITS推進事業」に参加。この成果は、2013年2月、4台のトラックによる時速80 km、約4 mの車間距離での隊列走行の成功として結実した。車間距離を短くすることで空気抵抗を減らし、全体で約15 %の燃費削減も実現している。 現在、産総研では企業や大学などと連携して、自動運転や協調走行、隊列走行を応用した新しい交通システムの提案と研究開発に取り組んでいる。目標は2020年頃の実用化だ。 自動運転や運転支援システムにおいて、車の制御を主とした産総研の基盤的な技術開発は、先駆的・先導的研究として、これまで業界に少なからず影響を与えてきた。 2015年、産総研には、自動車ヒューマンファクター研究センターや人工知能研究センターが発足し、自動運転システムにおけるHMI(ヒューマンマシンインターフェース)*やAI(人工知能)の応用に積極的に取り組んでいる。自動運転の技術は、自動車メーカーなど各企業が、しのぎを削って開発を進めているが、産総研には、企業間の協調領域となるシステムの評価や、社会受容性の検証を含め、実社会で使える研究開発を進める役割がある。例えば、AIの応用が期待されているが、その限界や安全性の証明などを、実際にユーザーが使用する車の制御と関連づけて進めている研究もその一つだ。 自動運転車の実用化に向けて、産総研の果たすべき役割は大きい。*- 人間と機械が情報をやり取りするための手段や、そのための装置・ソフトウェアなどの総称。■ 自動操縦車(1962~67年)■ 知能自動車(1974~84年)■ 時速80 km、車間距離約4 mの 隊列走行実験風景(2013年2月)(産総研つくば北サイトのテストコースにて)走行経路に電線を埋め、そこに電気を流して車を制御した。コンピュータビジョンによって車両前方の情報を認識・処理して走る。15 2016-07 LINK

元のページ  ../index.html#15

このブックを見る