産総研LINK No.26
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吸着性能が高く、繰り返し使用にも耐える銅プルシアンブルー髙橋 プルシアンブルーは、それ自体で高いアンモニア吸着性能をもっているのですが、私は分子構造に手を加えて、もともとあった空隙サイトのほかに、あえて一部を欠けさせて、欠陥サイトも増やしました。これによってさらにアンモニアを吸着しやすい結晶構造になり、吸着性能は1.7倍向上しました。川本 プルシアンブルーは鉄と鉄がシアン分子により繋がったジャングルジム状の結晶構造ですが、鉄を他の金属元素に置き換えることも可能です。他の金属元素に置き換えたものを「プルシアンブルー類似体」といい、金属元素の色によって、さまざまな色の物質になります。どのプルシアンブルー類似体でもアンモニアを吸着することはできるのですが、それぞれ少しずつ性能は異なります。私たちは70種類以上のプルシアンブルー類似体を合成し、どれが最もアンモニア吸着材に適しているかを評価しました。髙橋 脱臭材として実用化するには、吸着性能だけでなく、コストや繰り返し使うための強度も考慮する必要があります。畜産業の現場では一度に使用する量が多いことから、経済的な負担も考え、吸着材は使い捨てではなく、吸着したアンモニアを脱離してプルシアンブルーを再生させ、何度でも繰り返し使えるものの開発を目指しました。アンモニアを脱離させるには吸着材を薄い酸で洗浄するのですが、金属によっては吸着・再生の繰り返しを行う過程で脆くなり壊れてしまうものもありました。川本 吸着したアンモニアをしっかり脱離させられるか、という点は特に重要でした。吸った分を十分に出せなければ、使うたびにどんどん性能が落ちていくことになります。かといって使い勝手を考えると、脱離するのにいくら費用や時間をかけてもよいというものでもありません。脱離の量や時間などさまざまな観点からすべての類似体を評価し、たどりついた最適な物質が、鉄を銅に置き換えた「銅プルシアンブルー」でした。「プルシアンブルー」といっても、銅の影響で茶色をしています。髙橋 銅プルシアンブルーはアンモニアを吸着して、酸ではがして、また吸わせて……という繰り返しの使用にも十分に耐える強度をもっていました。また、アンモニアは弱アルカリ性なので吸着材にはアルカリ耐性が必要となりますが、銅プルシアンブルーはプルシアンブルー自体よりも高いアルカリ耐性を示します。アンモニア吸着性能もとても高く、銅プルシアンブルー1グラムあたり10 ppmvの低濃度アンモニアを含む空気を5,000リットル処理が可能です。これはイオン交換樹脂やゼオライト、活性炭といった既存の代表的な吸着材の5〜100倍という高い数値となっています。 さらに、湿度の高い空気の中でも、乾燥している空気の中にあるときと同じぐらいアンモニアを吸着できるのも大きな特徴です。アンモニアと水の化学的な性質が似ているため、一般の吸着材の場合、湿度が高い環境では水を吸着してしまいます。そのためアンモニアの吸着性能が落ちてしまうのですが、私たちの開発した銅プルシアンブルーは、分子構造を改変して水よりもアンモニアを吸着しやすくしているので、水蒸気や他のガスが満ちている環境の中でも、アンモニアをしっかり吸着してくれます。川本 銅プルシアンブルーでいこうと決まったら、いよいよ実際の豚舎で使える吸着材の開発のスタートです。セシウム吸着材を共同開発した関東化学が、再び一緒に取り組んでくれることになりました。粒状にしても吸着性能はキープ豚舎や堆肥化施設で、抜群の脱臭効果を発揮髙橋 密閉された豚舎を脱臭する装置としては、アンモニアの混ざった豚舎内の空気を、ファンを回して銅プルシアンブルーを入れたフィルターに送り、そこで脱臭された空気を再び豚舎に戻すというシステムを構想しました。このとき、銅プルシアンブルーが粉体のままでは扱いづらく、再生するのも難しいため、粉 臭いを資源に再生する 技術を社会へつなげるコミュニケーション・マガジン5

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