産総研LINK No.26
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 「イオン液体はガス吸収量のキャパシティがとても大きいことが魅力です。吸収したガスを取り出す際にも比較的低温での操作が可能なので、プロセス全体のエネルギーコストを下げることができます。現在、温度や圧力など、種々のパラメーターを変えて性能評価を行い、CO₂分離回収をはじめ、さまざまな用途に適した化学プロセスの開発を進めています」形を変えて反応効率をアップ   ここまではイオン液体を液体のまま使う技術を紹介してきたが、同グループの牧野貴至は、機能は維持したまま別の形態で活用する技術の研究開発に取り組んでいる。 「イオン液体を触媒として用いたガスの化学反応は、イオン液体の表面積が大きいほど、また、粘度が低いほど反応が速く進みます。私は表面積の増加と粘度の低下により化学反応の効率を上げるというテーマに取り組みました」 牧野が見つけた答えが「多孔質」と「高圧CO₂」だった。無数の細孔が空いている多孔質の物体は表面積が大きい。また、CO₂はイオン液体に溶けると粘度を低下させる。牧野は多孔質材料のシリカやアルミナに注目し、そこにイオン液体を染み込ませて触媒とし、さらに高圧CO₂も用いることで、40%以下にとどまっていた反応効率を90%以上に向上できたという。さらに、100 ℃で400時間使い続けても触媒として、機能を持続した。 「アルミナなどのフィルターにイオン液体を染み込ませるだけで、高性能なCO₂分離膜として使えます。問題は、ただ染み込ませるだけだと加圧時にイオン液体が脱落してしまい、長く性能を維持することができない、ということです。そこで、イオン液体を高分子と混ぜてゲル化させたものを分離膜とすることにしました」 ゲル化させたイオン液体を評価すると、50気圧という高い圧力をかけても脱落せず、また200 ℃の高温にしても壊れることなく、性能を維持できた。しかも、CO₂透過性能はイオン液体を染み込ませただけの膜よりも高かった。さらに、CO₂分離以外のさまざまな機能を持つイオン液体のゲル化が可能であることも明らかになった。 「イオン液体を微粒子や微小液滴状にしても機能を維持できることもわかっています。これらをガス分離精製や化学反応のプロセスに使いたいと考えています」 イオン液体は現状では単価が高く、実用化までにはまだ少し時間がかかる。しかし、ヒートポンプのように使用量の少ないプロセスであればイオン液体の優位性を出しやすいため、まずはこうしたところから実用化を目指したいという。その後、イオン液体の普及に伴い、プラントのような大規模用途にもチャレンジしていく。 それとは別に、塗装などの作業現場や、宇宙船内などの密閉空間内で空気中から有害物質などを除去する吸着材という、 用途を想定しての開発も進めている。 「イオン液体の設計・評価を通して、私たちは、どのような構造の分子をどのように修飾すれば求める機能を発揮できるのかという知見を蓄えることができました。個々のニーズに応えるイオン液体を設計するためのプラットフォームは、すでにできあがりつつあります。今後、イオン液体が実用化される際に、これが重要な基盤となるでしょう。イオン液体は多様な用途に応用が可能です。分離でも反応でも材料でも、どんなことでも結構です。これまでの試行錯誤の積み重ねから、必要なイオン液体の合成や評価でお役に立てると思います。敷居を低くしてお待ちしていますので、ぜひ私たちにご相談ください」と金久保も呼びかける。 イオン液体を利用した技術を、将来的に大きく普及させたい。同じ思いのもと、金久保も牧野も実用化に向けた研究開発を続けている。さまざまな環境、用途に合ったイオン液体の設計ノウハウがあります。ぜひ一度ご相談を!産総研 東北センター材料・化学領域 化学プロセス研究部門〒983-8551 宮城県仙台市宮城野区苦竹4-2-1https://unit.aist.go.jp/cpt/index.html オリジナルのイオン液体を100種類以上開発 cpt-info-ml@aist.go.jp 022-237-5208技術を社会へつなげるコミュニケーション・マガジン11

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