産総研LINK No.18
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産総研と農研機構の連携事例組まれていることをご紹介いただけますか。井邊 SDGsには科学技術が社会的貢献を果たせるということが明示されており、私たちもそれを意識して、農業や食品等の産業と技術革新をつないでいきたいと考えています。 特に私たちが取り組むべきテーマに気候変動があります。例えば温暖化による米の品質や収量の低下があり、それに対する適応策を考えていく必要があります。一方で、農業自体が温室効果ガスを発生させている面もあり、その発生を抑制することも取り組んでいくべき課題です。 さらに、私たちは陸上の生物の多様性にも貢献できると考えています。農研機構の農業環境変動研究センターでは気候変動や生物多様性に関する研究を行っていますが、それは生物多様性も農業にかかわっているからです。天敵や病害虫抵抗性品種により農薬を使用しない環境保全型農業により、生物多様性が非常に富んでいる地域で生産された農作物は、里山や生物多様性に関心のある消費者にとって非常に高い付加価値がつくと思います。大規模化が難しい地域で農業を活性化するには、生物多様性などの環境問題に取り組むことも一つの方法となると考えています。中鉢 産総研の初代理事長である吉川弘之先生は、2001年の産総研発足時、産総研は持続可能な社会のためにあるということを明確に憲章に示し、職員も「社会の中で、社会のために」の方針のもとで研究活動をしてきています。それもあって、グリーンテクノロジー、ライフテクノロジー、インフォメーションテクノロジーを研究分野の柱に据えているわけですが、これらの進展により科学や技術はSDGsの達成に貢献することができると考えています。 技術が複雑化し、多様化している現代においては、社会を変える技術開発は、研究者個人の力だけではなかなかできません。一人の研究者が大発明をするのも重要ですが、これからはそれ以上に、連携できる人が社会を変えていくのではないかと感じています。私たちもそうですが、企業の皆さんにも自前主義を捨てていただき、国立の研究機関はもとより、国際連携、地域連携や学界、産業界、金融界との連携など、さまざまなパートナーと連携していく必要があるのではないでしょうか。 今こそ、知を結集して人類共通の問題に取り組むべき時だと、私は考えています。何千年何万年の知見を蓄えている農研機構と私たちのナレッジとで、何か新しいものを生み出し、日本の発展のために役立てられればと願っています。—松岡 SDGsに対する両機関の取り組みは非常に重要であり、その中ではお互いの連携が必要になってくることが、今後いくつも出てくるでしょう。 本日のお話を通じて、両機関ともに連携の重要性を強く意識していること、連携により単に技術をつくるのでなく、新しい農業をつくること、そして技術を社会に定着させることが重要だと考えていることがよくわかりました。今後も両機関が力を合わせ、さらなるイノベーションの創出と社会的課題の解決に邁進してくことを期待します。本日はどうもありがとうございました。TOP MESSAGE▲鶏卵アレルギーの原因物質の一つであるオボムコイド遺伝子をゲノム編集技術で欠失させたニワトリを開発した。詳しくは産総研LINK No.16をご参照ください。(産総研、農研機構、信州大学による共同研究)▲殺虫剤をどれくらい使用すると土壌中に殺虫剤分解菌が増殖し、どれくらいの殺虫剤散布の頻度で害虫カメムシが土壌中の分解菌を体内に取り込んで殺虫剤抵抗性になるのかを明らかにした。殺虫剤抵抗性の発達を未然に防ぐ新たな農地管理技術につながる。(産総研、農研機構、沖縄県農業研究センターによる共同研究)▲運動性の精子を誘導するとともに、泳ぎの形によっても選別ができる運動性精子選別器具を開発した。これにより、受胎に有利な健全性の高い精子を捕集でき、家畜の繁殖性改善が期待できる。写真は、本器具で捕集した精子により人工授精し誕生した子牛第一号。(産総研、農研機構を含む8つの研究機関による共同研究)07 2018-04 LINK

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