産総研LINK No.18
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おいしいと他国からのニーズも高いので、その得意なところを生かし、さらに品種開発を進めたりバイオテクノロジーで付加価値を高めたりすることで差別化を図っていくことが重要だと考えています。バイオテクノロジーによる差別化の例としては、産総研との連携によるアレルゲン除去卵の開発が実を結びつつあります。このような農産物の付加価値を高める方向の連携が、この先、私たちの生命線になるでしょう。中鉢 基礎研究や発明をイノベーションに結びつけていくには、学界から始まる科学の成果を産官学連携によってテクノロジー化し、それを社会に変革をもたらすものに変えていく仕組みがなければなりません。さらに言えば、産学官「金」とも言われるように、金融界のお力添えも必要かもしれません。そのようなリソースを投じて社会に反映させていく役目を、農研機構、産総研、大学、そして産業界は担っていると思います。 そんな中で、産総研では産業界のニーズをもっと聞こうということで、イノベーションコーディネータという企業連携の専門部隊が、さまざまな企業を訪問しています。彼らは、北は北海道から南は沖縄まで、今この瞬間も企業を訪問してニーズをお聞きし、答えを出すという活動をしています。個々の企業ニーズに合う技術を提供するために、私たちはオール産総研でソリューションを探し、それで足りないところは大学や他の研究機関、あるいは海外との連携も含めて答えを探す、ということをやっています。 また、産業界に関しては、ニーズをより早く聞くために、「冠ラボ」と称した企業研究室を産総研内に設置し、自社の研究所のように産総研を使っていただいています。現在、8つの冠ラボが活動中です。 そして、大学はイノベーションの芽を育てる大切な機関ですので、そこでの知見をいち早く取り入れるため、大学内に「オープンイノベーションラボラトリ(OIL)」という産総研の研究所を設置する取り組みを進めています。現在、東京大学、京都大学、名古屋大学など7つの大学に設置しており、例えば名古屋大学であれば天野浩先生の窒化ガリウムの研究室と組む、東北大学であれば新規材料の開発期間を短縮する計算科学のラボをつくるなど、大学と産総研の互いの強みを融合させる連携を行っています。 こういった大学の先端的な成果をいち早く取り入れて産業化に向けて橋渡しをすることは、国際競争力を高めることにもつながっていくと考えています。—松岡 2018年1月には、政府がバイオ技術の活用戦略として、民間企業が参加する共同研究プロジェクトの推進、産学官連携を整備して生物や植物を活用した新素材を製造業や医療分野の成長につなげていくこと、そして人材育成支援などを盛り込むことを発表しました。ゲノム編集技術の発展により、薬や化粧品に利用できるカイコや、杉花粉の花粉症を改善する効果をもつコメなど、さまざまな新しい生物資源も生まれていますが、今後の農業の発展に関して感じていることをお話しください。井邊 今、「ゲノム編集」という画期的な技術が広がりつつあります。これはターゲットとなる遺伝子のみを選択的に改変できるもので、現在、農業分野でも農研機構を中心に、日本のさまざまな作物においてゲノム編集が可能だということを実証しつつあります。この技術の活用法の一つとして、私たちの遺伝子品種改良センターは米の収量の増加を提案しています。現在、ゲノム編集したイネの新しい系統を、いよいよ自然の条件下で実証実験する段階にきているのですが、最新データによると、実際に米の収量TOP MESSAGEバイオテクノロジーで農業革新を05 2018-04 LINK

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