産総研LINK No.18
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同グループの昆盛太郎だ。農産物の糖度、酸度、塩分、それにポリフェノールのような機能性成分まで、多種多様なものについて、測る対象を変質させることなく迅速かつ簡単に計測したいという声が届いているという。 例えば糖度を測るとき、従来は光を使って計測していたが、表面(果物であれば皮)の色に測定結果が左右され、精度が出しにくいことが課題だった。 「電磁波を用いることでより正確に計測できれば、サイズだけではなく糖度などの味による等級分けが容易になります。それによって農産物の付加価値をあげることができるわけです」(昆) また、健康志向で機能性食品の分野が盛り上がっているが、農産物に含有するポリフェノールの含有量がわかれば、高含有のものを高機能食品として売り出すこともできるかもしれない。現在、この新しい計測技術の多様な分野への展開を図っており、生産現場で容易に計測ができることによって農産品に新しい価値が生まれる可能性があるということだ。 とはいえ、これらの測定では水分量計測の技術をそのまま使えるわけではない。そもそも水分量計測にしても、米と砂では同じようにできるわけではない。電磁波の強さやセンサーの回路構造、感度の調整などを、計測するものに合わせて最適化する必要があるため、現在は企業と共同で、対象ごとに最適な解析方法や計測装置の開発を進めているところだ。 「私たちが他の研究テーマのために考えていた回路が使えるなど、他の研究の成果とリンクするところも多く、電磁波の性質に関して理論的に解析して培ってきた産総研の実績とノウハウを役立てることができています」(堀部) もう一つ、反響が大きかった分野がある。加工食品内の異物混入検査というニーズだ。異物混入検査の主流であるエックス線検査は、金属は検出しやすいがプラスチックやビニールなどは見つけにくく、この点を解決できるのではないかと期待されている。こちらはまだ研究が始まったばかりで、「異物の種類とベースの食品の組み合わせにより、検出しやすい電磁波の強さや、位相の変化の仕方が異なるので、現在は理論と実験でそれを網羅的に調べている段階です」(昆)ということだ。 多種多様な分野への応用が期待される計測技術だが、今後はどのように展開されていくのだろうか。昆は「これまで電磁波の技術に力を入れてきましたが、画像を用いた計測技術、検出技術とこの技術を組み合わせることで、より優れた計測技術ができるのではないかと考えています。多様な技術の組み合わせによって、正確で応用範囲の広い計測・検出技術をつくって産業に役立てていきたいです」と語る。 一方の堀部は、農業の未来を予想する。現在、ベテラン農家の方は稲を刈り取る時期を判断するのに、稲穂を握ったり米粒をかじったりして水分量を見ているのだそうだ。しかし、そのような“匠”の技をもつ生産者の高齢化は急速に進み、その一方で後継者は減少の一途をたどる。 「専門性の求められる現場で私たちの評価技術が手軽に使えれば、意欲のある若者が農業に参入しやすくなるし、収益も上げられるようになるでしょう。この技術を農業人口の減少と高齢化という産業全体の課題解決にもつなげていきたいですね」 計測・検出の技術は製品や生産物の安心・安全につながるだけでなく、生産効率をあげ、付加価値を高めることにも貢献できる。 「農業だけでなく、ご自身の業務で水分量測定や成分測定に課題をもっている方、ぜひ産総研にお声がけください。皆さんのニーズに合った測定や検出技術を一緒に考えていきましょう」と堀部は笑顔で言う。生産物の安心・安全や付加価値の向上にも貢献〒305-8563 茨城県つくば市梅園1-1-1 中央第3産総研 計量標準総合センター 物理計測標準研究部門: unit.aist.go.jp/ripmお気軽にお問い合わせください!ウェブサイト: info-ripm-ml@aist.go.jp電磁波で測る関連動画11 2018-04 LINK

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