産総研LINK No.17
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明渡 TOTOさんが評価のために使ったのはイットリア*という材料ですが、イットリアの緻密体をつくる技術は従来もありました。そこで、従来の手法でつくった膜とAD法でつくった膜を比較するために顕微鏡で拡大してみたところ、従来の膜にはポア(穴)が見えたのに対し、AD法にはまったくポアがなく、非常に緻密な膜であることがはっきりわかりました。清原 同時に、半導体製造装置の中でどのように削りカスが出てくるのか発塵のメカニズムも探ったところ、コーティング材はポアを起点として脱落を始めていたことが明らかになりました。ということは、ポアのないAD法はこの用途に非常に向いていることになります。これなら従来品に勝てるのではないかと思いました。 装置メーカーのお客様にこの方法を提案したところ、「こんな答えがあるなんて想像していなかった」と驚かれました。この時点ではお客様の装置で発塵がどの程度発生するのかわかっていなかったのですが、評価データを示したことでお客様に測定していただけることになり、測定結果が出てから、開発は一気に進み始めました。佐伯 自分たちの技術をオープンにしたがらない企業も多いのですが、オープンにしないとお客様に信頼していただくことはできません。ここではオープンにしたことで私たちの提案が理にかなっていることをご理解いただき、信頼していただくことができました。 AD法による半導体製造装置向けのコーティング部材は2011年に実用化できましたが、さらに私たちは装置メーカーの先にあるニーズをキャッチアップしたいと、半導体デバイスメーカーにもこの技術の価値を伝えました。そもそも半導体製造装置の発塵で困るのは、装置メーカーというより、装置を使う半導体デバイスメーカーなのです。半導体デバイスメーカーはご存知の通り日本の企業ではありませんが、当社の九州工場まで視察にこられました。半導体メーカーとの協業が始まったことで、いよいよビジネスとしても本格的に動き出しました。明渡 新しい技術の導入は、従来技術の改善とは違ってリスクが高いことなので、当然、企業は慎重になります。そのときにはこのように、サプライヤーとカスタマーが一緒になって開発していくプロセスが重要になると思います。これは産総研と企業との共同研究でも同じことですね。清原 半導体チップの進化とのタイミングに合致したこともあって、この製品は広く求められ、現在は世界トップのシェアを獲得しています。清原 ロードマップでは2020年に7〜8nmピッチのパターンになるとされていましたが、実際はもっと進化は加速しています。この先も、これまで以上に低発塵コーティング材のニーズが増えることは間違いないでしょう。 現在はすでに産総研との共同開発は終わり、私たちは将来的なニーズに向けてAD法を独自に進化させているところです。しかし、AD法の成功を知った他の企業も、新たな技術開発を進めてきています。私たちも今後のニーズをキャッチアップしていく中で、再び産総研と連携することもあるだろうと思っています。明渡 技術は直線的にではなくスパイラル状に進化していくので、基礎研究に立ち戻る必要も出てくるでしょう。基礎研究と応用研究を行き来することで、基礎研究を実用化に結びつけていきやすくなると思います。 お客様が欲しいと思う機能に対して、なぜその機能を求めるのか、その機能をどのような工程で実現することが必要なのかについて原理から考え、さらにその先にいる顧客まで視野に入れてトータルに開発に取り組まれたTOTOさんの姿をそばで見ていて、私自身、非常に勉強になりました。 また、TOTOさんの成功により、これまでこの技術に無関心だった企業にも、使える技術だと広く認識してもらえるようになりました。現在はAD法を実用化につなげたい企業が集まる先進コーBUSINESS MODELアライアンスの設立で、さまざまな用途開発を▲AD法でコーティングされた半導体製造装置部材(写真 : TOTO株式会社提供)06 LINK 2018-03

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