産総研LINK No.17
4/16

つくれます。清原さんはその点にも驚かれていました。清原 新しいコーティング技術を探していたところだったので、すぐに、一緒にやりましょうとお話ししました。実質的には翌週からもう動き出していましたね。明渡 やはり専門家でも聞いたことのない常識外れの技術だったわけです。その後TOTOの基礎研究所で講演をさせていただき、共同研究する価値があると判断していただきました。佐伯 私は現在、産総研に所属していますが、もとはTOTOの基礎研究所で、光触媒技術の研究者と共同研究をして事業化につなげるなど、基礎から応用に至る一連の研究を担当していました。清原さんがAD法に注目した当時は基礎研究所の所長を務めており、AD法の実用化プロジェクトもTOTO側で進めていました。そのキャリアを評価していただき、退職後は、産総研で先進コーティングのアライアンスを担当しています。 私はこの技術に、膜の緻密さの他にも魅力を感じたのです。当時は企業にも地球環境問題への対策が求められるようになってきた時代でした。セラミックスは1500 〜1600℃という高温で焼いてつくるため、窯業のエネルギー消費量は多く、企業として肩身の狭い思いをしているところもあったのです。AD法は常温ででき、非常にエネルギー消費量が少ない製法なので環境効率が20倍にも上ります。私たちとしてはその点でも願ってもいない技術といえました。清原 新しい表面改質技術の開発を目指して共同研究がスタートしましたが、私たちは基礎的な技術ではなく、量産化のための技術や装置をつくらなくてはなりません。産総研の装置では小さい膜しかつくれていませんでしたので、まずは大面積化する技術を開発する必要がありました。 それに、セラミックスが常温で固化する現象に再現性があることはわかっていましたが、なぜそれが起こるのか、他のセラミックス膜とはどのように性質が異なるのかなどということについては、まだ明らかにされていませんでした。企業としては、膜の生成メカニズムやAD法の膜ならではの性質がわからないままでは実用化に踏み切ることはできません。量産化技術は私たちがつくるので、明渡さんには原理の解明をしていただきたいとお願いをしました。明渡 現象を見つけた私自身の興味とTOTOさんの要請もあり、研究資金の乏しい中、メカニズム解明のための研究を進めたところ、セラミックスの微粒子が高速で基板に衝突することで結晶の粒子が壊れ、壊れたことで粒子が活性化されて再び結合しようとする働きが起こり、その結果、より細かい粒子同士が再結合して膜となる、という現象が起こっていることが明らかになりました。 加熱して固化させる従来の方法では、もともとのセラミックス粒子表面の原子が熱拡散によって移動し、くっつきあって粒子間の隙間を埋め、大きな結晶に成長するので、結晶サイズは数μm以上になります。しかし、AD法によってできた結晶は、一度破砕した粒子がくっつき合ってできるので、5〜500nmと、非常に小さくなることが特徴です。結晶が小さいので、より緻密で堅牢な膜となるということがわかりました。後に、これらの研究は2つの国家プロジェクトで進められましたが、原理が完全にクリアになるまでに5年ほどかかってしまいました。佐伯 技術をつくることと製品をつくることは別物で、技術ができたというのは「製品がつくれる可能性がある」という段階にすぎません。実用化までの長い開発期間のなかで、研究がこのレベルまで進んだら次はこのようなトライアルをするという、指標のような段階がいくつかあるわけですが、その中で特に難しいのは、よいものをいかに均質につくるかという品質管理の部分です。AD法を世の中に出していく上では、どの工場でつくっても同じ品質の製品になることが大切です。だからこそAD法のメカニズムの解明をしていただき、なぜこの技術に価値があるのかを明らかにしていただく必要がありました。明渡 原理や性質・価値を掘り下げて研究し、それらをクリアにした上で応用展開していく。企業との共同研究により実用化までの一連の流れを知ることができ、その中で技術開発のベンチマークを積み重ねることができたのは、私としても刺激的で貴重な体験でした。明渡 国家プロジェクトとして進めていく上では、常温でセラミックス膜をつくる技術をどのような製品として展開していけるかという、出口の提案が必要になります。当初は数多くの企業から、出口を模索し半導体分野に行き着いたBUSINESS MODEL実用化には原理の解明も重要だった04 LINK 2018-03

元のページ  ../index.html#4

このブックを見る