産総研LINK No.17
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ITシステムの開発にかかるコストの負担が、製造業、特に資金力と人材が不足しがちな中小企業にとって業務のIT化に取り組む際の大きな障壁となっている。自分たちの手でITシステムを開発できるツールがあれば製造業のIT化が進むのではないか。そんな発想から生まれたのが、専門的なプログラミングの知識がなくても、自社業務に合わせたシステムを自分たちで構築できる「MZ Platform」だ。産総研は、このツールを広く活用してもらうことで、製造業のIT化が進み業務が効率化できること、そしてその結果として日本の“ものづくり力”が強化されることを目指している。す。私たちは専門知識をもった人材がいない企業でもシステム開発ができるように、さまざまな機能をもったコンポーネント(ソフトウェアの部品)をあらかじめ用意し、それらを組み合わせることで、自社に必要なITシステムを比較的容易かつ短時間で構築できるツールをつくることにしました」と、機械加工情報研究グループの古川慈之も言う。 そこから生まれたのが、システム開発ツール「MZ Platform」だ。2004年のリリース以来、現在まで900以上の企業・法人等に配布され広く使われている製造業の受注管理や工程・品質管理、日程・進捗管理などを自作するシステムである。 開発の経緯には紆余曲折があった。プロジェクト発足当初、ターゲットにしたのは、コンピューターを用いる設計ソフト「CAD」と、製造ソフト「CAM」だった。中小製造業はこれらへの対応に苦戦しているだろうという予測だった。しかし、この活用支援試作ツールをもって企業をまわってみると、予想したほどのニーズがないことがわかった。実際に使ってもらえるツールでなくては意味がない。改めて現場の抱えるニーズを洗い出してみる必要があった。このとき多くの企業を訪問した素形材加工研究グループの徳永仁史は、企業が共通の課題を抱えていることに気がついた。 「工程管理や生産管理に困っている、という声がとても多かったのです。帳票や生産管理記録などを紙ベースで行っている企業では、現場の進捗状況を把握するのは簡単ではなかったわけですね。しかも、人が情報を記入・入力するとデータ自体も不正確になりがちでした」 このような話をまた別の会社ですると「うちもです!」と声が上 2001年、産総研のものづくり先端技術研究センター(現・製造技術研究部門)は、製造業、特に資金力や人材に乏しい中小企業を支援するツールの開発を目指すプロジェクトを発足させた。日本の製造業が競争力を高めていくためには、IT化によって生産効率を向上させることが不可欠であり、それなくして企業はこれからの時代を生き延びていくことはできないだろう。そんな意識が高まっていた時代だった。 現在でも中小製造業のIT化は十分とはいえないが、17年前はIT化には程遠い状況だった。プロジェクトの中心的な役割を担ってきた機械加工情報研究グループ澤田浩之は、当時を振り返る。 「IT化しなくてはと思っても、企業自身が何からはじめてよいのかわからない。だからといって、コンサルタントやシステム開発会社に自社のIT化を外注するのも簡単ではありません。システムの開発や導入には多額のコストがかかるためです。そういったコストの高さがIT化を進めたい企業にとって障壁となっているケースが多数ありました」 IT化が製造業の生産性向上に有効であるのはいうまでもなく、激しい競争の中で自社が生き残っていくためにも必要だった。では、導入時の負担を軽減してスムーズなIT化を進め、中小製造業の競争力を高めていくにはどうしたらよいのだろうか。 澤田たちは企業側にITに関する専門知識がなく、自らプログラムを記述しなくとも、用意されたソフトウェアの部品を自社のニーズに応じて組み合せてシステムを構築し、運用できるツールがあるとよいのではないかと考えた。企業にとっては人材の確保が難しく、その上プログラミングの専門知識を身につける時間も負担となるため、その負担削減にも貢献できると考えたのだ。 「プログラムのコードを一から書くには高度な知識が必要でKEY POINTコストをかけなくても、製造業のIT化が実現できる「MZ Platform」。業務効率化を進め、製造業の“ものづくり力”アップを後押しする。製造業のニーズはどこに?専門知識がなくても、短時間でITシステムをつくれるツールを開発部品で組み立てるソフトウェア開発ツール13 2018-03 LINK

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