産総研LINK No12
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BUSINESS MODEL期間かつ、その場のデータを全体的に取得しなければ使えるデータにはなりません。サービスのすべての側面をどのように計測していくかが難しいところでした。 それからもう一つ、需要予測の正確性を上げる研究にも取り組みました。共同研究は、生産性を向上させて収益性を上げることを目的としたこれら2つの研究からスタートしました。2009年のことです。蔵田 店舗内の人の動きは、1日の中である程度の業務サイクルもありますが、それは平日と週末で異なる、またどの月の一日かによっても違う。結局、1カ月間ごとの計測を数年間行いました。新村 それが、銀座四丁目店で行った、歩行者デッドレコニング*2による従業員のリアルタイムの測位計測です。加速度、地磁気センサーなどを組み合わせて開発した自蔵センサーモジュールを従業員に身に付けてもらい、店内に設置した無線通信装置から電波を受信するなどして作業軌跡情報を把握。従業員一人ひとりのフロアでの動きを可視化しました。これにより、フロア担当者の実質的な接客時間がわかりましたし、作業の無駄も抽出できました。この分析結果をもとに人員配置などを変更し、お客様との会話など、サービスの価値向上につながる作業を増やしたところ、生産性を改善することができたばかりか、お客様からの注文も増えたのです。――これまで、どのような研究に取り組んできたのですか。新村 まずは、集団の行動様式をフィールドワークによって調査するエスノグラフィーという手法に心拍や発汗量計測という科学的アプローチを組み合わせ、従業員のスキルや顧客満足度など、大阪の一店舗の状態をまるごと把握しようと試みました。このときは測位システムで従業員の動きを計測したほか、顧客とのやりとりの音声データを集め、動画も撮影し、フルセットで計測したほか、顧客へのインタビューも行いました。 製造業のラインなら、一度計測すれば汎用性のあるデータが得られます。しかし人間が相手のサービス産業は、その場、その瞬間で状況はすべて異なるので、一定従業員の作業計測からVRを用いた空間レイアウトまで◀新宿山野愛子邸での計測結果改善前(左)より改善後(右)の方が、 客席付近での緑色が多い。これは、仲居さんが客席付近で多く過ごせたことを示している。*2- 歩行者用の推測航法(Pedestrian Dead-Reckoning)。屋内で利用できる位置・方位計測技術や規格は多岐にわたり、計測対象・場所の構造などに応じて適した技術は異なる。PDRは、加速度、角速度、磁気、気圧の各センサーデータに基づいて、歩行動作、移動速度ベクトル、姿勢、相対高度変化量を推定する手法。インフラ整備が不要で、点の集合ではなく線(形、曲率)としての軌跡、姿勢、動作を取得できるのが特徴。08 LINK 2017-04

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