産総研LINK No12
15/16

を採取。全系統を通常条件下で栽培したときに、何が起こるかを観察してそれらのデータを完備した。 同時に、それらの系統を低温、乾燥といった特殊な条件下で栽培し、各種の環境に対する耐性系統を探した。凍結させても凍らない、2週間水をやらなくても枯れないなど、既存の方法では、簡単に特定できなかった特徴をもつ系統も見つかったという。 「約300種の系統とデータが網羅されたことで、『早咲きの品種を開発したい』『省スペースで種子を増産したい』『砂漠でも育つ穀物を』などの目的に対し、その形質をもつ品種をつくるためのターゲット遺伝子を探しやすくなりました。有用植物の開発効率は大幅に上がるでしょう」 地球上には資源・エネルギー問題や食糧問題、環境問題など、多くの問題があるが、植物は、食糧として重要なだけでなく、バイオマス燃料にもなる。また、二酸化炭素を吸収して地球温暖化の進行を抑えたり、土壌に水を蓄えて水害を予防したり、環境問題に対しても力を発揮する。 「スーパー植物の開発により、それらの問題の解決や、より健康で豊かな生活の実現に貢献する。それが私たちのミッションです」と藤原は笑顔で話す。 VP16法で得られた、約300系統のシロイヌナズナの知見は、転写抑制因子の機能の解明といった基礎研究の進展にも貢献できる。産業への応用にしても、単位面積当たりの収量増、温暖化などに対応した品種開発、耕作不適地の利用、植物工場での生産効率化など、非常に広範囲への応用が期待される。 さらに、このVP16法は、近年注目を集めている「ゲノム編集」という、思い通りに遺伝子を改変する技術を利用した育種を加速させる手段としても期待されている。ゲノム編集を育種に応用するには、まずどの遺伝子をゲノム編集で破壊すべきかを把握しなければならない。今までは地道に手探りで、もしくは手当たり次第に進めるしかなかった、目的とする形質の付与に必要な遺伝子を発見する作業を、各段に効率よく進められるようにするのが、藤原らが整備した系統とそのデータである。 日本国内ではゲノム編集技術の法整備はこれからだが、遺伝子組換えとは別に分類されれば、企業の抵抗感が小さくなる可能性もあるという。その意味でも開発された植物遺伝子制御技術は、企業にとってゲノム編集技術をさらに活用しやすくする魅力的な成果だと言えるだろう。 「ゲノム編集の実用化が近い現在、スーパー植物の作出と知財化は“早いもの勝ち”の状況と言えます。『こんな植物ができたら』という夢がある方は、ぜひ一度ご相談ください。これまでの品種改良という概念を大きく変える成果が期待できます。企業の皆さまが欲しい特性を最大限に引き出したオーダーメイドの植物を生み出し、社会に貢献していきたいと思っています」▲シロイヌナズナは種をまいてから、育ち、再び種を採取できるようになるまでのライフサイクルが約2~3カ月と短く、DNA配列がすべて解読されている。そのため、遺伝子の研究ではまずシロイヌナズナが研究材料として使われ、その後ほかの植物の育種へ応用することが多い。お気軽にお問い合わせください!〒305-8566茨城県つくば市東1-1-1 中央第6産総研 生物プロセス研究部門: 029-861-6040: https://unit.aist.go.jp/bpri/: bpri-webmaster-ml@aist.go.jpウェブサイト植物遺伝子制御技術とスーパー植物15 2017-04 LINK

元のページ  ../index.html#15

このブックを見る