アニュアルレポート 2005-2006
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Life Science & Technology32Annual Report 05-06脳神経情報研究部門Neuroscience Research Institute研究部門長岡本 治正URL: http://unit.aist.go.jp/neurosci/TEL: 029-861-5069FAX: 029-861-5842研究の概要代表的な研究成果当研究部門では脳の構造と機能を理解するとともに、それに基づいて、安心・安全で質の高い生活を実現するための技術基盤の確立を目指し産業の振興に資する研究を展開しています。具体的には、生体分子レベルから脳の高次情報処理機能に至るまで様々なレベルでの研究を進め、得られた研究成果をもとに、脳内分子、細胞活動のイメージング・計測技術の開発、リハビリ促進等のための脳組織、機能の修復技術の開発や脳の学習機能を参考にする柔軟な情報処理のための基盤技術の開発を目指しています。今年度から新たな部門重点課題として「機能分子の生体脳内バイオイメージングに関する研究開発」を開始しました。また、平成18年4月1日付けで、ニューロテクノロジー研究グループと視覚情報処理研究グループを新設するとともに、脳情報工学研究グループを脳機能計測研究グループへ名称変更を行い、体制の強化を図りました。脳卒中などにより脳に損傷をうけると重篤な後遺症が残ることがしばしばありますが、脳には可塑性があるため、脳損傷後の訓練によって機能的な回復を示す場合もあります。当研究部門のシステム脳科学研究グループでは、このような脳機能回復のメカニズムを明らかにし、脳機能の回復を促進するための技術開発を行っています。大脳皮質からの主要な運動出力を担う第一次運動野に損傷を作成し、上肢指運動のリハビリテーショントレーニングを行ないました。トレーニング課題を行っている時に上肢の動きを撮影し、課題の成功率を測定することによって、運動機能の回復を定量的に評価することに成功しました。その結果、大脳皮質運動野上肢領域の損傷後には重篤な運動麻痺を生じるものの、その後上肢を用いたリハビリテーショントレーニングを行うことにより、運動機能の顕著な回復が見られることがわかりました。また、回復は指の近位関節から遠位関節の順番で生じること、損傷から1〜2ヶ月のトレーニング期間を経て指の独立した運動と、拇指と示指の先端を用いたつまみ把握(精密把握)が可能になることも明らかになりました(図1)。脳損傷後に機能回復が生じる背景として、失われた脳領域の機能を代償するような、脳内神経回路の再組織化があると考えられます。そうした脳機能回復の基盤となる神経回路変化を明らかにするために、神経突起の構造変化に関わる神経成長関連タンパク(GAP-43、MARCKS、neurograninなど)の発現に着目し、脳内における脳内神経成長関連タンパクの発現動態を調べました。その結果、損傷モデル動物の機能回復直後の脳では、損傷された第一次運動野の神経細胞は破壊されたままですが、第一次運動野の前方に位置する運動前野において、神経成長関連タンパクの発現が正常脳と比べて亢進していることが示されました(図2)。この結果は、損傷領域である第一次運動野とは別の領域である運動前野において、損傷領域の機能を代償する神経回路変化が起きている可能性を示唆しています。図1 運動野損傷後リハビリ過程の行動学的解析図2 機能回復にともなう神経回路変化を遺伝子発現により解析損傷後の経過日代償的把握精密把握エサ把握の成功率損傷モデル個体正常個体遺伝子発現(運動前野腹側部)損傷部位(第一次運動野)50µm

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