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2020/01/01

理事長年頭所感-新春に想う 2020-

年頭所感の中鉢理事長画像


あけましておめでとうございます。
日頃は、産業技術総合研究所(産総研)の活動にご理解とご協力を賜り、誠にありがとうございます。


国際会議RD20を開催

新たに元号が令和となった昨年は、地球環境に対する関心が以前にも増して高まった1年でもありました。世界的に頻発する異常気象は地球温暖化に対する社会の危機感を高め、廃プラスチックによる海洋汚染は国境を越えて、身近な問題として人々に認識されています。

2019年6月、大阪で開催されたG20 サミットにおいて、日本政府は地球環境問題へのイノベーション活用の重要性を指摘し、脱炭素社会という目標実現に向け、世界のモデルとなるべく努力することを表明しました。会議では、各国からも異常気象や廃プラスチックによる海洋汚染などに関する懸念が表明され、再生可能エネルギー活用の必要性やCO2の有用物質への転換技術などが議論され、環境問題の重要性についての認識が共有されました。

この議論を受けて、産総研は「クリーンエネルギー技術に関するG20各国の国立研究所等のリーダーによる国際会議」(Research and Development 20 for clean energy technologies:略称RD20)を10月に東京で開催しました。この会議には、G20各国を代表する研究機関のリーダーが参加し、各国のクリーンエネルギー研究開発の最新状況について意見交換を行い、提言をまとめました。


「平成」の時代が残したもの

振り返れば、平成の30年間は、日本の社会や産業が大きな転換点を迎えた時期であったように思います。阪神・淡路大震災、東日本大震災の二つの大震災に加え、日本列島は毎年のように、自然災害に襲われ、貴重な人命と多くの財産が失われました。

私たちは「安全で安心して暮らせる社会」をどう築くのか、改めて大きな課題を突き付けられています。

一方、高度経済成長を支え、世界経済をリードしてきた日本企業も苦難の道を歩んでいます。規模の拡大を目指して、大量生産・大量販売モデルを構築し、品質・コスト・物流効率化を徹底的に追求し、国際市場において確固たる地位を築きました。しかし、モノに対する需要が一巡し、グローバル化とIT化が進む中で、日本企業は急速に競争力を喪失していきました。加えて、大量生産・大量消費は資源の枯渇問題や大量の廃棄物による環境汚染を引き起こしました。我が国はかつて環境先進国と呼ばれ、日本企業の取り組みも高く評価されていましたが、今は欧州企業などに劣後する場面も多く見られます。

日本企業は公害問題を乗り越え、省エネルギー製品を次々と送り出した一方で、新たな課題に直面することになりました。


「経済的価値」と「社会的価値」の両立

これまで企業活動においては売上や利益という「経済的価値」を生み出すことが最優先で、地球温暖化対策や生活の安全・安心などの「社会的価値」創出は企業にとって、「その後(あと)」という位置づけでした。

勿論、経済的価値を生み出さなければ企業は存続できませんし、雇用も確保できません。しかし、地球温暖化の進行や環境汚染の深刻度は、今や待ったなしの状況で、企業は「経済的価値」と「社会的価値」二つの価値創出を同時に推し進め、企業活動として両立させなければならない事業環境となっています。

日本には、古くから「三方よし」、すなわち「売り手よし」「買い手よし」「世間よし」というビジネス哲学を持つ企業が数多くあります。この「世間よし」は正に「社会的価値」の創出につながるもので、私は日本企業にとって「社会的価値」の創出は決して難しい課題ではないと考えています。


社会的価値を創る科学技術

2015年に国連が採択した「持続可能な開発目標(Sustainable Development Goals : SDGs)」は今では広く社会に認知されるようになりました。

この中で数多くの社会的価値創出の重要性が謳われているわけですが、これを達成するためには、多種多様な経済的・人的資源と取り組みを必要とします。G20で議論された通り、その重要な要素の一つが、科学技術とイノベーションでしょう。

今日、人工知能、IoT、ロボットなどの新たな技術が飛躍的な進化を遂げ、科学研究の全分野にわたって技術革新が始まっています。かつては夢物語と思われていた人工知能を搭載した機器が家庭の中に入り始め、人々の生活を変え、自動車の自動運転技術実用化も手が届くところまで来ました。人工知能が医学・薬学の分野で活用され、新しい治療法や医薬品の開発に貢献しています。工場にIoTが導入され、生産革新が一段と進み、物流や販売の現場でも人工知能による管理が取り入れられ始めています。

今や科学技術の発達と産業の発展は新たなステージに入ったと言えるでしょう。

私はこれからの科学技術の研究は「社会的価値」の創出に何らかの形で貢献すべきであり、その目指すべきところは「低炭素」「資源循環」「自然共生」「安全安心」社会の構築であり、その本質は「人間中心」でなければならないと考えています。


産総研の役割

産総研は、設立当初から、「社会の中で、社会のために」すなわち社会的価値創出をスローガンに活動を続けてまいりました。

現在はグリーン・テクノロジー、ライフ・テクノロ ジー、インフォメーション・テクノロジーを主要分野として、産業発展に貢献する研究開発や国民の安全・安心など、企業では取り組みが難しい基盤的研究にも積極的に取り組んでいます。

産総研は様々な可能性を有する最先端の研究シーズを数多く持っています。これらのシーズは、企業の手によって事業化・産業化が実現されます。現在、12社と産総研内に企業名を付した連携研究室「冠ラボ」を13室設立し、戦略分野で連携研究を進めています。一方、大学とは基礎研究の成果をいち早く実用化に結びつける研究を共同で進めるべく、8有力大学のキャンパスに9室のオープンイノベーションラボラトリー(OIL)を設置し、共同研究と人材交流を推進しています。

私は最近、企業の方、大学や研究機関の方に「産総研と未来を始めませんか!」と呼び掛けています。

産総研は、企業よりは大学に近く、大学よりは企業に近い研究機関です。私たちはその独自性を生かしながら「マルチオープンプラットフォーム」として、日本の産業発展への貢献を果たすとともに、健全にして持続可能な社会の構築のために先導的・中核的な役割を担ってまいりたいと考えています。

皆様には産総研の活動にご理解をいただくと共に、一層のご支援とご鞭撻を賜りますようお願い申し上げます。


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国立研究開発法人産業技術総合研究所