English

 

ニュース

2019/01/01

理事長年頭所感-新春に想う 2019-

年頭所感の中鉢理事長画像


あけましておめでとうございます。
日頃は、産業技術総合研究所(産総研)の活動にご理解とご協力を賜り、誠にありがとうございます。

130年ぶり、キログラムの定義改定に貢献

昨年11月、フランスで開催された国際度量衡総会で、質量の単位(キログラム)の定義が130年ぶりに改定され、本年の世界計量記念日(5月20日)より適用されることとなりました。この改定作業に産総研は日本を代表して参画、各国の計量標準研究機関と協働で最高水準の測定技術を投入し、新標準の調整値決定に大変重要な役割を果たしました。質量は科学や産業の基盤となる極めて重要な単位であり、このたびの定義改定作業に参画し、貢献できたことは、産総研の長として、この上なく誇りに思います。今後、ナノテクノロジー、バイオテクノロジーなど、質量の精密測定が必要な分野で、新たな研究が創出されることを大いに期待しています。

「平成」の終わりを迎えて

今年、2019年は30年続いた「平成」が終わりを迎えます。振り返ってみれば、この30年間は、日本の社会や産業にとって、厳しいことが多い時代でした。1995年1月に阪神・淡路大震災が発生し、6,000人を超える生命が失われました。2011年3月の東日本大震災では、18,000を超える方々が犠牲となりました。この二つの大震災に加え、日本列島は毎年のように、自然災害に襲われ、貴重な人命と多くの財産が失われました。平成の30年間は日本人にとって、自然の脅威と国土の脆弱性を再認識した期間でもありました。

同じ時期、日本企業も苦難の道を歩みました。バブル崩壊の後、急速に進んだグローバル化の波に翻弄され、情報通信とインターネットの進化による急激な事業環境の変化に追随できず、国際競争力を失う企業が多く出現しました。経済の停滞を表す「失われた20年」という言葉が頻繁に使われました。

今日、人工知能、ロボット、IoTなどの新たな技術が飛躍的な進化を遂げ、人々の生活を大きく変えようとしています。数年前までは夢物語と思われていた人工知能を搭載した機器が家庭の中に入り始め、自動車の自動運転技術実用化も手が届くところまで来ました。科学技術の発達により、産業の発展は新たなステージに入ったと見られています。

一方、産業発展による負の側面も顕在化しています。地球温暖化が原因の一つとされる異常気象が世界各地で頻発し、我が国でも記録的な豪雨や猛暑が各地で観測されました。

2015年、国連は17の目標と169のターゲットからなる「持続可能な開発目標(Sustainable Development Goals : SDGs)」を採択しました。このSDGsの採択以降、「持続可能な社会」 に対する世界各国の関心は急速に高まり、科学技術の発展を健全な社会の構築につなげることが、今や国を超えた地球規模の課題となっています。

「経済的価値」と「社会的価値」の創出と両立

平成30年の先にある未来の産業は、「経済的価値」を向上させることで人々の生活を豊かにするだけでなく、「社会的価値」を生み出し、二つの価値を両立させることで、安全で安心な社会の構築に資するものでなければなりません。1980年代、日本企業は大量生産・大量販売を実行するため、コスト・品質・物流効率化を徹底的に追求し、国際競争の中で確固たる地位を築きました。しかし、モノに対する需要が一巡し、人々の興味が多様化する中で、日本企業は次第に競争力を喪失していきました。加えて、大量生産・大量販売は、大量廃棄につながり、公害や環境汚染を引き起こしました。

この苦難を乗り越えるために、日本企業は環境負荷を低減する努力を地道に続けてきました。これをさらに推し進めることにより、資源再生をビルトインした循環型産業モデルを構築することが可能となるところまで来ています。加えて、二度の大震災による被害や自然災害による損失を克服する中で、BCP(Business Continuity Plan)も企業経営の中核要素として、根付いてきました。

高度成長後の環境問題やバブル崩壊後の事業低迷は、日本企業にとって大きな試練ではありましたが、この経験を通して蓄積した知見や経験は、未来社会の構築に役立つものと信じています。現在、米国から生まれたプラットフォーマーと呼ばれる企業が世界を席巻し、中国企業が巨大な国内市場を背景に急速に存在感を高めています。しかしながら、米国企業はモノづくりの経験に乏しく、中国企業はモノづくりの苦労を知悉しているわけではなく、環境問題の克服は人類にとって将来的に大きな課題です。モノづくりの経験が豊かで、環境問題に着実に取り組んできた日本企業が、その存在価値を発揮し、国際競争の中で独自の地位を確立する機会が必ずあると考えています。

マルチオープンプラットフォームとして持続可能な社会の構築を目指す

産総研は、設立当初から、 「社会の中で、社会のために」をスローガンに、持続可能な社会構築を目指す研究機関として活動を続けてまいりました。現在は、グリーン・テクノロジー、ライフ・テクノロ ジー、インフォメーション・テクノロジーを研究活動の中心分野として、産業発展に貢献する研究開発や国民の安心・安全など、企業では取り組みが難しい非競争領域の基盤的研究にも積極的に取り組んでいます。

産総研には世界水準の研究開発シーズが多く存在しています。これらのシーズは、企業によって事業化・産業化が実現します。現在、産総研内に企業名を付した連携研究室「冠ラボ」を10社と設立し、戦略分野で連携研究を進めています。一方、大学とは基礎研究の成果をいち早く実用化に結びつける研究を共同で進めるべく、7有力大学のキャンパスにオープンイノベーションラボラトリー(OIL)を設置し、人材交流と共同研究を推進しています。

産総研は、企業よりは大学に近く、大学よりは企業に近い研究機関です。私たちはその特性を生かしながら「マルチオープンプラットフォー ム」として、日本の産業発展への貢献を果たすとともに、健全にして持続可能な社会の構築のために中核的な 役割を担ってまいりたいと考えています。

皆様には産総研の活動にご理解をいただくと共に、一層のご支援とご鞭撻を賜りますようお願い申し上げます。


▲ ページトップへ

国立研究開発法人産業技術総合研究所