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第38回産総研サイエンスカフェ

「太陽の光で水から水素を ~エネルギー問題解決を目指す人工光合成~」


写真1

 平成25年3月8日(金)、つくばカピオ別棟「カフェ・ベルガ」(茨城県つくば市)にて第38回産総研サイエンスカフェ「太陽の光で水から水素を ~エネルギー問題解決を目指す人工光合成~」を開催しました。話題提供者はエネルギー技術研究部門 太陽光エネルギー変換グループ 佐山和弘 研究グループ長です。

 今回は、太陽光を使って水から水素を作る、人工光合成のお話です。太陽エネルギーを化学エネルギーに変換・貯蔵することで地球エネルギー問題を根本的に解決し、全人類の永続的な発展・平和に貢献しようとする壮大な研究について、佐山さんに紹介していただきました。

 佐山さんの説明は、人工光合成の背景から始まりました。光で水を分解する反応が最初に発見されてから40年以上経った現在、ノーベル化学賞受賞者である根岸教授の後押しや石油価格の上昇により、人工光合成は急速に注目されるようになりました。佐山さんは人工光合成を次のように目的指向で再定義します。

  • 太陽エネルギーを直接化学エネルギーに変換・蓄積すること
  • その化学エネルギーが二次利用しやすいこと

 「太陽エネルギー変換システムを、『芸術品』ではなく、単純な『日用品』にしなくてはならないのです」と佐山さんは語ります。途中のクイズのひとつには、太陽電池と光合成でどちらの太陽エネルギー変換効率が高いか、というものがありました。正解は太陽電池。効率だけみると、太陽電池は植物より多くのエネルギーを生み出しています。しかし、太陽電池が生み出す電気エネルギーは石油のような化学エネルギーと異なり、長時間の貯蔵も長距離の輸送も苦手です。光合成のように、太陽エネルギーを化学エネルギーに変えることで、太陽電池とは異なる方向からエネルギー問題の解決への一歩を踏み出すことができます。

 人工光合成には大きく分けて3つの方法があり、佐山さんはそれぞれに取り組んでいます。まずは「光触媒」を用いる方法。光触媒は環境浄化の目的で実用化されているので、耳にしたことのある方もいらっしゃるかもしれません。この光触媒を人工光合成に用いることで、水を酸素と水素に分解します。光触媒で汚れを分解する実験とともに、光触媒が苦手とする光(可視光)で水の完全分解を行なうシステムの紹介がありました。次に、「光電極」を用いる方法。水は電気を流す(電圧をかける)ことで酸素と水素に分解することができますが、比較的高いエネルギーが必要です。しかし電気を流す部分を光電極と呼ばれるものに変更することによって、より少ないコストで水素を製造できるのです。最後に、光触媒と光電極を組み合わせる方法。このシステムでは、植物の光合成に匹敵するほど高い太陽エネルギー変換効率で水素を製造することができます。佐山さんにお持ちいただいたジオラマはとても説得力があり、人工光合成がより現実的なものになったことを実感できます。佐山さんの言葉を借りれば「異分野融合が革新的システムを生み出す」のです。

 また人工光合成と光合成を同時に行なう構想の紹介もありました。太陽光には様々な波長の光が含まれていますが、人工光合成と光合成では得意とする波長が異なります。そこでこの2つを同時に(2段重ねで)行なうことで、太陽光をより効率的に使うことができます。これも「異分野融合」のひとつ。今後も、思わぬ組み合わせが人工光合成の実用化を更に進めてくれることでしょう。

写真2
途中に簡単なクイズをはさみながら、カフェは進行しました
写真3
光電極を使った人工光合成の実験は大人気でした
写真4
佐山さんに用意していただいた光触媒などを、参加者の皆さんには実際に手にとっていただきました

 カフェの後半では質疑応答をしながら光触媒との「異分野融合」のアイデアを参加者の皆さんに考えていただいた後、光電極を使った人工光合成の実験を実際に行なっていただきました。光電極に光を当てると水素の泡が次々に発生します。見た目にも楽しく、また夢のある実験に、皆さんの目は釘付けでした。人工光合成の生み出す小さな泡が地球のエネルギー問題を解決する日を待ちわびながら、今回の産総研サイエンスカフェは幕を下ろしました。


 次回の産総研サイエンスカフェは平成25年5月に開催されます。ミドリムシから作るプラスチックをテーマに、バイオメディカル研究部門 芝上基成 上級主任研究員に話題提供していただきます。詳細が決まり次第、産総研サイエンスカフェのホームページでお伝えします。ご期待ください!


開催概要
日時 2013年3月8日 金曜日 18時30分 ~ 20時00分
(終了後、30分程度フリーで話題提供者とお話いただく時間をご用意しています。)
会場 カフェ・ベルガ
〒305-0032 つくば市竹園1-10-1(つくばカピオ別棟)
※駐車場は、周辺の有料駐車場をご利用ください。
主催 産業技術総合研究所
定員 30名
対象 高校生以上
申込締切 2月28日 木曜日 17時00分
参加費 無料(ドリンク・菓子付き)
申込方法 参加申込につきましては、お申込フォーム、Eメール、電話でお願いいたします。

[1]サイエンスカフェ専用お申込フォーム

[2]Eメール:必要事項を記入の上、事務局宛に送信
 必要事項・・・お名前(ふりがな)、参加人数、連絡先

[3]電話:必要事項をお伝えください
 必要事項・・・お名前、参加人数、連絡先

※3月1日に皆様に参加の可否を通知いたします。連絡先は必ず記載してください。
※定員を超えた場合には抽選となります。
※ご登録いただいた個人情報を本イベントの対応以外に使用することはありません。
問い合わせ先 産業技術総合研究所 広報部 産総研サイエンスカフェ事務局
〒305-8568 つくば市梅園1-1-1 中央第2 つくば本部・情報技術共同研究棟8F
電話:029-862-6211 Eメール:メールアドレス:s.cafe-ml*aist.go.jp(*を@に変更してご使用ください)
※「産総研サイエンスカフェ」を紹介する目的で、Web等で公開するための写真撮影を行うことがあります。

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国立研究開発法人産業技術総合研究所