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第32回産総研サイエンスカフェ

「温泉地にIT技術!? サービス工学を使った街づくり」


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 3月9日(金)、つくばカピオ別棟「カフェベルガ」(茨城県つくば市)にて、第32回産総研サイエンスカフェ「温泉地にIT技術!? サービス工学を使った街づくり」を開催しました。話題提供者はサービス工学研究センター 山本吉伸 主任研究員です。

サービス工学

 サービス業は、日本の国内総生産の70%、就業人口で言えば65%を占める産業です。しかし、その経営は勘と経験に頼ってきました。これに工学的アプローチを行うのが「サービス工学」という学問です。

 例えば旅館の仲居さんの動きをデータとして取得しマップに表示すると、新人の仲居さんはベテランの仲居さんとは異なる動きをしていることがわかります。ベテランの仲居さんが無意識にしている行動を、データとして保存・確認できるので、新人の仲居さんが真似をすることにより作業効率の改善ができるようになります。サービス工学とはこのように、従来は勘と経験に頼ってきた対象について、科学的に分析していく学問なのです。

デジタル外湯券「ゆめぱ」

 現在、山本さんが兵庫県豊岡市にある城崎温泉で行っている実証実験について、ご紹介がありました。城崎温泉は1300年の歴史があり、7か所ある外湯めぐりが名物で、年間75万人の観光客が訪れます。この外湯にバーコードがついたレシートのような券で入場できるシステムが、デジタル外湯券「ゆめぱ」です。この「ゆめぱ」を持っていれば、外湯に入れることはもちろん、現金を持たずにお土産屋さんで買い物をすることもできます。また、「ゆめぱ」は日頃使っている電子マネーやタッチ式の交通定期券でも代用することが可能なのです。「外湯めぐりの際に着る“浴衣”は、リラックスした場で着るもの。リラックスした状態では誰だって荷物は持ちたくないですよね。」と山本さんは話します。

 そして、この「ゆめぱ」のすごいところはお客さんが便利で利用しやすくなるという点だけではなく、お客さんの利用履歴をデータとして蓄積し、これを行動分析に用いていることです。(しかも、個人情報は特定できないようになっています。)

ゆめぱの功績

 山本さんは「サービス産業もデータに基づいて投資をしないと、いつまでも勘と経験に頼っていては生産性を上げるのは難しい。」と話します。従来、観光地では、思い付いた取り組みを色々実施して観光客が増えても、どれが成功したのか正確にはわかりませんでした。そのため、一度行った行事をやめられないという状況がありました。しかし、「ゆめぱ」を用いれば観光客の動きをデータとして分析していくことができます。

 例えば、「ゆめぱ」を使って城崎温泉を科学的に分析してみると、10時のチェックインから15時のチェックアウトの時間に人がぐっと減っていることがわかりました。正午の飲食店などの観光地が一番忙しくなる時間帯に人がいない——おそらく城崎の旅館の方々も、経験的にはわかっていたでしょう。しかし、数値として見せることは説得力があります。「観光客の人数が一番多いのはいつなのか」人の動きを可視化したことにより、“なんとなく”で判断していた部分を明確に議論し、対策に踏み切れたそうです。

ゆめぱは「自作したサービス」

 この「ゆめぱ」は取得した観光客の利用データをリアルタイムでお店に送信しています。「実は僕はデータを取っているだけで何もしていません。城崎の人々がこのデータについて自分たちで考え、利用しているのです。」と山本さんは話します。

 ある日の城崎の「ゆめぱ」加盟店のメーリングリストの内容が紹介されました。「昨日はつけ払いが多かったですね。(中略)今までで最高です。お客様の数はお盆の方が多いのにつけ払いが多かったということは、灯篭流しなどのイベントで町を散策される方が多かったのでしょうか。」このことから、花火などの止まって楽しむイベントよりも、灯篭流しなどのお客さんが街を歩くイベントのほうが効果的だということがわかりました。「ゆめぱ」のような共通のインフラを街全体で導入すると、その地域でばらばらだったサービスを連携していくことができます。

 山本さんは最後に「(他所の地域から)そのまま買ってくる政策というのはあり得ません。地元の人たちが自分たちで考え、自分たちで企画し、実行する。そこに意味があります。」と話しました。話題提供者の「街づくりを助ける技術」への信念を感じさせる会でした。

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 会場では、「「ゆめぱ」のつけ払いサービスが3万円であることは妥当か、また幾らが妥当だと思うか?」というアンケートをその場で発券した「ゆめぱ」や、各自が持っている交通定期券、携帯電話などをかざしてアンケートに回答してもらいました。

 次回の産総研サイエンスカフェは、5月18日(金)にカフェベルガで開催されます。テーマは「ロボットで移動する街 モビリティロボットが作る未来の形」です。是非お申込みください。


開催概要
日時 2012年3月9日 金曜日 18時30分 ~ 20時00分
(終了後、30分程度フリーで話題提供者とお話いただく時間をご用意しています。)
会場 カフェ・ベルガ
〒305-0032 つくば市竹園1-10-1(つくばカピオ別棟)
※駐車場は、周辺の有料駐車場をご利用ください。
主催 産業技術総合研究所 広報部
定員 30名
対象 高校生以上
参加費 無料(ドリンク・菓子付き)
申込方法 参加申込につきましては、お申込フォーム、Eメール、電話でお願いいたします。

[1]サイエンスカフェ専用お申し込みフォーム

[2]Eメール:必要事項を記入の上、事務局宛に送信
 必要事項・・・お名前(ふりがな)、参加人数、連絡先

[3]電話:必要事項をお伝えください
 必要事項・・・お名前、参加人数、連絡先

※ご登録いただいた個人情報を本イベントの対応以外に使用することはありません。
問い合わせ先 産業技術総合研究所 広報部 産総研サイエンスカフェ事務局
〒305-8568 つくば市梅園1-1-1 中央第2 つくば本部・情報技術共同研究棟8F
電話:029-862-6211 Eメール:メールアドレス:s.cafe-ml*aist.go.jp(*を@に変更してご使用ください)
※「ラヂオつくば」の番組制作に協力するため、会場で録音させていただく場合があります。
※「産総研サイエンスカフェ」を紹介する目的で、Web等で動画公開するためのビデオ撮影を行うことがあります。

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国立研究開発法人産業技術総合研究所