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2021.03.26

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火山の一生を知る
年代測定法で歴史を知り、
未来につなげる
地質調査総合センター
活断層・火山研究部門
火山活動研究グループ 主任研究員 山﨑 誠子 Yamasaki Seiko
山﨑 誠子 主任研究員の写真
KeyPoint近年、活火山の活動評価には、歴史記録に残る噴火だけでなく、数万年から数十万年という長いスケールでの噴火履歴を知らなければならないことがわかってきた。産総研では、地質学的な長い時間を調べる定法を使って火山の一生を追い、「火山の活動史」を明らかにする評価・分析し、防災・減災に貢献する研究に取り組んでいる。
Contents

火山岩の年代を測り、火山の一生を追う

 その山は活火山なのか。次の噴火はいつ頃で、どのようなタイプの噴火だと考えられるのか?火山の近隣の住民や登山者にとって、噴火に関する情報は命や財産を守るために非常に重要だ。そしてそのような将来の噴火や規模を予測するには、その火山がいつ、どのようにでき、どのように活動してきたかという活動史を知ることが、重要な手がかりとなる。

 産総研はそのために複数の年代測定の研究を行い、火山活動の履歴の把握に務めている。年代測定というのは、地質的なイベントがいつ起こったのかを測る技術であり、火山の場合は過去の噴火が測定対象となる。地質調査で見つかった、複数の噴火の痕跡や、火山体を形成する岩石の年代を測定することで活動史を明らかにし、その火山はどのように成長してきたのか、現在その火山はどのような段階にあるのか、活動に周期性があるのか、次の噴火が近づいているのか、というような将来予測の材料となる基礎データを蓄積している。

 火山活動研究グループの山﨑誠子は、そういった火山噴出物の年代測定の研究に取り組んでいる。「リアルタイムで噴火が近づいているかどうかは、地震計や傾斜計、火山ガスなどの観測データから判断され、異常が検知されたときには気象庁から噴火警戒レベルなどとして注意が出ます。しかし、どのようなタイプの噴火が起こりそうか、一度始まった噴火がどのように移り変わっていきそうか、ということに対しては、過去の履歴が重要で、いつ、どのような活動をしてきたかを詳しく調べて、対策をたてる必要があります」

複数の年代測定法を用い適用範囲の空白を埋めていく

 年代測定法にはさまざまな種類があり、測定できる年代の範囲や対象となる試料がそれぞれ異なる。

 「放射性炭素年代測定法(14C法)」は、放射性炭素14の割合を大気中と地層に含まれる生物由来の炭素とで比較し、その生物が死んでからの時間を測定する方法だ。理科の教科書にも登場する比較的よく知られた手法であり、名前を見聞きしたことがある人も多いのではないだろうか。この測定法が得意とする範囲は、数万年までと比較的“新しい”年代であり、炭素を含む試料にのみ適用できる。

 しかし、溶岩など調査の対象物に生物の痕跡があるとは限らず、この手法が使えないこともある。その場合に用いられる方法の一つが、カリウムを含む試料を測定する「カリウム−アルゴン年代測定法(K-Ar法)」だ。カリウムは地殻中で7番目に多い元素で、多くの岩石や鉱物に含まれている。この測定法は、カリウム40(40K)というカリウムの放射性同位体がアルゴン40(40Ar)に放射壊変する量の時間的変化を利用している。岩石が形成された時点では気体であるアルゴンはほとんど含まれないため、調べたい岩石の中の40Ar含有量と、残っている40Kの量を計量することで、岩石の年代を測定できる。

 「従来のK-Ar法では基本的に数十万年から数億年の岩石や鉱物が対象となります。放射炭素年代が適用できる範囲と従来のK-Ar法が適用できる範囲の間にある『数万年~数十万年』の期間は空白域となっており、日本の火山でもまだデータが不十分です。そこを埋めるための手法開発を進めています」

 山﨑はK-Ar法とその発展形であるAr/Ar法による年代測定を専門としており、これまで数十万年前より古い年代しかわからなかったこの測定方法を、1万年前付近まで測定できるようにしようとしているのだ。現在の課題は測定精度と確度の向上だ。K-Ar法は風化した岩石を用いるとアルゴンが岩石から外に出てしまっているため、“正しい”年代を示さない。また、異なる時期にできた鉱物の集合体である岩石をそのまま測っても噴火の年代とは言えない。「どんな試料を測定しても値自体は出ます。測定で生じる誤差として現れる精度と、その測定値が正しいかどうかは別に評価する必要があり、試料自体に起因する原因は採取や前処理で気をつけるしかありません」。そのため風化の少ない「新鮮な岩石」を求めて険しい山の中に行き、腰と、脚にその重さを感じながら持ち帰った岩石を丹念に処理し、測定を行う日々を送っている。

防災・減災に向けた情報発信を

 過去の噴火活動をもとに防災計画やハザードマップがつくられていくため、データの空白期間を埋めていくことは非常に重要だ。しかし、どんなにデータを整えても、その情報が利用されなければ意味がない。今まで積み重ねられてきた火山研究者の研究成果を「知識」として整理し、行政や登山者などが使える「情報」としなければならないと山﨑は考えている。

 「年代の情報だけでなく、地質調査や他の研究成果も含めた情報が総合的に反映されている火山地質図は、自治体の防災協議会でも活用されています。しかし、このような専門的な場所だけでなく、もっと広く研究成果を伝えていくことも必要だと感じています」

どれだけ研究を重ねても次の噴火を予測することは難しい。しかし難しいとばかりも言っていられない。そのためにも、自らの研究を進めるだけでなく、関連する研究を行う研究者と連携し、より社会に役立つ情報として発信する必要がある。さらには、より多くの人に、火山だけでなく地質のことをわかりやすく伝えていくことで、情報の受け手側に理解してもらえる土壌をつくることも大事だと感じている。地質の研究を総合的に行う産総研だからこそできる連携と情報発信を、これからも模索していく。

地質調査総合センター
活断層・火山研究部門
火山活動研究グループ
主任研究員 山﨑 誠子 Yamasaki Seiko
山﨑 誠子 主任研究員の写真

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活断層・火山研究部門

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