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2021.01.29

LINK for Society

技術の多面展開で新型コロナに挑む!
非医療技術で支える「新しい日常」
企画本部 研究戦略室
室長三宅 晃司Miyake Koji
三宅 晃司 室長の写真
新型コロナウイルス感染症の流行により、私たちの生活は劇的に変化し、社会・経済活動はかつて経験したことがない停滞を余儀なくされている。
感染リスクをコントロールしながら、人々の生活に安心・安全を取り戻し、社会・経済活動を維持発展させていく、そのためには医療・医薬の分野だけでなく、社会活動のさまざまな面で感染リスクへの対策が必要となる。
産総研は今のこの未曽有の社会的危機に対して、専門性と総合力を発揮すべく、研究所一丸となって、新型コロナ対策のための研究開発に取り組んでいる。
Contents

感染リスクを下げ、人々の生活を正常化する

──2020年3月末発表の第5期中長期目標において、産総研は「エネルギー・環境」「少子高齢化」「強靭な国土・防災」という社会課題の解決を目指していくことを示しました。今、新たにそして大きな社会課題となった新型コロナウイルス感染症対策について産総研の取り組みを教えて下さい。

三宅所内でアフター・コロナ検討チームを立ち上げて、議論を重ねてきました。この検討チームには、7つの研究領域だけでなく、イノベーション推進本部や広報部なども参加し、課題解決に向けて全所的に取り組むことができる体制としました。現在の最大の社会課題は、コロナの存在を前提としながら、人々の生活を正常化し、社会・経済活動を維持・発展するために感染リスクをコントロールし、早急に下げていくことにあります。その課題の解決に向けて貢献できる所内の技術を探索し、かつ、世の中にある技術調査も行ったうえで、「治療・予防・拡散防止」という3種の技術を抽出しました。

 産総研は医療・医薬品開発の専門機関ではありません。私たち産総研が取り組んでいくべき研究開発については、「医療行為とは異なるアプローチで感染リスク低減に資する技術の開発と社会実装」を想定しています。

──研究開発のテーマとしては、現在、いくつあるのでしょうか。

三宅コロナ対応で取り組むべき研究課題を集めた結果、68もの研究課題がありました。主としてウイルス感染のリスク軽減につながる技術、軽減した環境を測定する技術、その空間にいる人の行動を測る技術などです。これらの技術を融合し、社会活動の再開に向けてどれだけリスク低減が可能であるかの検証を行っています。

 研究内容の具体例を挙げますと、CO2濃度の測定、空気の流れや人の動き、人の流れをシミュレーションして可視化する技術などを駆使し、どのような換気をすればどれだけ空気は入れ替 わるのか、大勢が集まる場所ではどのようなところで人が密集しやすいのか、避難する場合はどのような経路・手順で行うのがスムーズなのか、といったことを明らかにする研究などがあります。

──新型コロナ対策にはスピードが要求されます。すでに社会で実際に使われたり、対策に貢献したりした技術があればご紹介ください。

三宅飲食の場でクラスターが発生することが知られていますが、産総研は、政府からの要請で、飲食時に会話で、口からどのように飛沫が発生するかを可視化計測しました。その結果、飲食の場ではマスクをしないため、その状況での会話が感染拡大に影響を与えることが見えてきました。この結果は第15回新型コロナウイルス感染症対策分科会で報告され、「イベント中の発声がないことを前提にしうる催し物(映画館など)に限定して、収容率を100%以内にすることができる」という政府の方針の決定に貢献しました。

 また、事業者と協力し公共交通機関の車内の換気量調査や、民間スポーツ団体からの依頼によるスタジアムなどにおける感染予防に関する調査にも取り組んでいます。

新しい日常に向けて

──今後の展望をお聞かせください。

三宅コロナ禍の社会課題は医療、福祉から経済、教育まであらゆる領域に及びますが、幅広い研究領域から多様な技術を集めて融合させ、対応できることが産総研ならではの大きな特徴だと言えます。

 産総研は2020年3月末に、2020年4月から2025年3月までの第5期中長期目標において、「エネルギー・環境」「少子高齢化」「強靭な国土・防災」という社会課題の解決を目指していくことを示しました。これらの目標は喫緊の新型コロナ対策につながるものではありませんが、アフター・コロナ社会における新しい日常で期待されるイノベーションにつながります。

 例えば、少子高齢化という社会課題に対応する省人化や遠隔操作の技術が、コロナ禍で省人化された工場の稼働、生産性の向上につながると期待されます。また、エネルギー・環境制約への対応では、コロナ禍により、日本をはじめ2050年のカーボンニュートラル実現を表明する国が増加していますが、この実現に貢献できると考えています。

 日本だけでなく世界中の企業や研究機関・大学が力を結集すれば、新型コロナウイルスを克服できる日がくるでしょう。産総研は、喫緊の新型コロナ対策のみならず、コロナ禍後の「新しい日常」を技術開発で支え、「新しい社会」の発展に総合力で寄与したいと考えています。

企画本部
研究戦略室
室長三宅 晃司 Miyake Koji
三宅 晃司 室長の写真

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国立研究開発法人産業技術総合研究所