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1日は25時間!?

体の中のシーソーゲーム

体内時計の正体

 体内時計を支配する時計遺伝子が最初に確認されたのは1984年のことでした。概日時間が通常と異なるショウジョウバエの遺伝子を調べた結果、すべてperiod(per)と命名された同じ遺伝子に突然変異が認められました。つまり、ショウジョウバエの概日時間は遺伝子によって支配されていることが分かったのです。

 さらに1997年には、ほ乳類からperiodに似た遺伝子であるper1が、1998年にはper2、per3が発見されました。時計遺伝子は1種類ではなく、例えば共通の時計遺伝子として、clock、BMAL、CRYなどもその後発見されています。

 では、その遺伝子はどこにあるのでしょうか。ショウジョウバエでは、脳内にマスタークロックがあるという主時計説と、各組織にサブクロックが存在してこれが光によって同調されているという太陽光説があり、まだ決着はついていません。

 一方、私たち人を含むほ乳類では脳内の一番奥にある「視交叉上核」と呼ばれる一対の器官にメインクロック(中枢時計)があると考えられています。実際に、この器官にダメージを受けた動物は24時間のリズムを失ってしまいます。

 ところが、この24時間のリズムは「視交叉上核」のみならず、目、心臓、肺などの末梢器官の細胞にも見られます。つまり、全身にサブクロックがあるわけで、「視交叉上核」が破壊されると末梢器官のリズムも消失することから、主時計が末梢時計を支配していることが分かります。

 さらに産総研の石田さんは、一つひとつの細胞すべてにリズムを刻む末梢時計があると考えているそうです。つまり、中枢時計から何かしらの信号が発信され、それに同調して各細胞がリズムを刻むのではないかと考えられるのです。もしそうだとすると、血液中を信号を伝える物質が移動している可能性があり、最近の石田さんの研究では、この脳内時計とは違うタンパク質が末梢時計に必要なことが解ってきており、今後の大きな課題となっています。

写真:ラットの中枢時計のある場所

ラットの中枢時計のある場所
(視交叉上核)

図:ヒトの視交叉上核

ヒトの視交叉上核


体内時計のスイッチ遺伝子

 遺伝子は、タンパク質を合成する設計図として機能します。そのプロセスを簡単に言うと、まず遺伝子が持っている設計図がmRNAと呼ばれるメッセンジャーにコピーされます。mRNAは細胞内のリボソームに設計情報を伝え、そこでタンパク質が合成(翻訳)されていきます。そして動物の肉体のすべてが出来上がっていくわけです。しかしタンパク質には、もう一つの重要な任務があります。それは、遺伝子のスイッチをオン・オフにすることです。

 遺伝子のスイッチのオン・オフというのは、遺伝子を遺伝子として機能させたり(発現と言います)、逆にその機能を制御したりすることを指します。

 まず、数種類ある時計遺伝子の情報によって、タンパク質が作り出されます。

 そのタンパク質のうち、ある2種類が細胞核の中で結合し(複合体と言います)、さらに遺伝子のある塩基配列に接続します。この接続が、体内時計の発信源となる時計遺伝子のスイッチをオンにするのです。スイッチが入れられるとPERタンパク質とCRYタンパク質と呼ばれる複合体の合成が促進され、細胞内に蓄積されます。

 すると、今度はそのPER、CRY複合体タンパク質が、遺伝子のスイッチをオンにした複合体の活性を抑え、体内時計の発信源となる時計遺伝子のスイッチをオフにするのです。

 実は、このオン・オフのスイッチの切り替えサイクルがほぼ24時間になっているのです。つまり、このゆっくりとしたシーソーゲームが、体内時計の本体というわけです。

写真:上

写真:下

ラットの細胞で、時計遺伝子からmRNAが昼と夜とでどのように作られるかを可視化したもの。上の写真では、昼より夜のほうが濃くなっているのが分かる。下の写真は中枢時計を破壊されたラットのもので、昼夜の差が消滅している。昼がD、夜がNのレーン。左から眼、脳、心臓、肺、脾臓、肝臓、腎臓。


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