Vol.7 No.2 2014
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研究論文:通信の大容量化に対応する「長さ」の国家標準(稲場ほか)−73−Synthesiology Vol.7 No.2(2014)要求から、目的や用途に不用な機構は省き、製作しやすいシンプルで堅牢な構成を目指した。例えば、過飽和吸収体のように入手しにくい特殊なデバイスの使用を避けて、モード同期機構を非線形偏波回転に変更し、空間光学系をできるだけ排除したファイバー中心の構成とした。とはいえ、自身でモード同期レーザーから製作するのは初めてのことであり、試行錯誤の連続であった。コムの広帯域化の鍵となる、波長1~2 µm帯で機能する高非線形ファイバーについては、(現時点でも)広帯域化において最高性能のファイバーが同じ時期に入手できた。このような経緯により、自家製作を開始してから約1年という速さで、モード同期ファイバーレーザー、超短光パルス増幅器の設計・製作、高非線形ファイバーによる光コムの広帯域化、オフセット周波数信号の検出、堅牢性確保のためのファイバー系の配置・固定、および位相同期や温調等の制御系構築まで行うことができた。2006年初頭には、1週間連続の光周波数計測[12]という、Ti:Sコムでは無論のこと、ファイバーコムであってもそれまで報告されたことのなかった長時間測定を実現した。このような堅牢性は、モード同期ファイバーレーザーの全ファイバー化、高いビート信号のS/Nを得るための光増幅部のブランチ化構成(図3)、および目的波長の光コム発生に最適な高非線形ファイバーの選定、などといった独自のレーザーシステムにより得られたものであり、自家製作による成果である。長期連続測定はすぐに実質的な発見をもたらした。我々は、高い周波数安定度を持ち堅牢性にも優れた、波長532 nmヨウ素安定化Nd:YAGレーザーを開発してきた[13]。保有している数台のレーザーのうち、1台の周波数が次第に下がってきている現象が長期的な測定によって観測されていた(図5上)。ファイバーコムを用いた長期連続測定により、同じペースでの周波数減少(約−20 Hz/週)が観察され(図5下)、周波数変化が断続的なものではなく、連続的なものであることが明らかとなった[12]。このように、長期連続測定はこれまで見えなかった現象を観察することができる。今後実用化される光周波数標準等への適用においても、連続測定できる堅牢性は実質的に必要な性能の一つである。4.3 波長分散調整の重要性−製作ノウハウの確立1台目の自家製ファイバーコムシステムが完成し、連続測定には成功したが、その後何台かのモード同期ファイバーレーザー(発振器)および超短光パルス増幅器を製作する過程で、超短光パルス増幅器からの出力やスペクトル、および高非線形ファイバーによる広帯域化の再現性が乏しいという問題点があった。光パルス増幅器へ入射する平均およびピークパワー、偏光依存性等の検討を行ったが、発振器と増幅器を繋ぐ光ファイバーの分散に起因する、光パルスのチャープ量の違いがその原因であった。オシレーターの分散調整、増幅器~高非線形ファイバー間の分散調整の必要性はよく知られていたが、オシレーター~増幅器間の分散調整についてはそれほどよく知られていなかった。これまで実験結果として報告されていたのは、増幅器前で正か負どちらかに大きくチャープさせて光パルスのピークパワーを下げ、増幅した後に逆にチャープさせてパルス圧縮を行うチャープドパルス増幅法[14]くらいであった。我々は、オシレーター~増幅器間の光ファイバー長を変えて増幅器に入射する光パルスのチャープ量を変化時間(1日/目盛)時間(1年/目盛)周波数(400 Hz/目盛)周波数(100 Hz/目盛)図5 我々が開発した波長532 nmヨウ素安定化Nd:YAGレーザーの周波数変化Ti:Sコムにより2年半にわたり断続的に測定された結果(上)、およびファイバーコムにより1週間連続で測定された結果(下)。どちらの結果も変化率は約−20 Hz/週であることを示している。オシレーター~EDF間(A-B間)のシングルモードファイバ長(m)アンプ後(C点)のパワー(mW)45403530252015105140150160170180190200210220230HNLFEDFPZTPEDF光アイソレーター励起レーザー/2/2/4/4励起レーザーCBA図6 オシレーター出力(A点)~光アンプ入力部(B点)間のシングルモードファイバー(SMF)長を変えたときの光アンプ出力部(C点)での光パワーの変化出力がピークとなるSMF長が存在し、それが広帯域光コム発生の最適値である。

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