Vol.7 No.2 2014
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−139 −Synthesiology Vol.7 No.2(2014)編集後記Synthesiologyの発刊以来、7年目に入りました。本誌は、発刊の趣旨にもあるように「研究成果を社会に活かすために行うべきことを知として蓄積する、すなわち当為的知識を集積することを目的」として学術ジャーナルを発刊され、今日まで至っています。特に、従来の学術誌とは異なり、研究開発の成果を社会に活かすために何を行えば良いかについての知見を掲載すること(編集方針)を記載することを特徴としています。研究目標と社会とのつながり、研究目標を実現するためのプロセス(シナリオ)を記述するなど、これまでの学術論文誌とは異なった観点からの記載が執筆要件としています。創刊当初は産総研関係者を中心とした運営でありましたが、昨年夏からは本誌のさらなる普及を図ることを目指し外部機関の方々に幹事をお願いし、種々の改革案を議論してきました。その中から次号から新たな取り組みとして掲載した論文についてSynthesiologyらしさを紹介するページを新しく設けることになり、今号で試行してみました。以下にしめします。通信の大容量化に対応する「長さ」の国家標準本論文では、「長さ」の国際標準や次世代光周波数標準に繋がる光周波数コムの研究開発を主題とした論文である。大型で電力消費の大きい励起レーザーを用いたレーザー光コムに代わり、信頼性に優れ、長時間の連続動作が可能な光ファイバー型周波数コムへの進化過程を記載している。研究開発の中で取り組んだ自家製作に至るシナリオやプロセスが記載されているなど、Synthesiologyらしい構成となっている。ソーラー水素製造の研究開発本論文は、再生可能エネルギーとして重要な太陽光エネルギーの利用技術の一つである太陽光水素製造技術の研究開発について紹介されている。実用化に向けて長期の時間を要する課題であり、研究開発の最終目標に向けて途中に2段階のコスト面からの中間目標を設定し、さまざまな水素製造技術を比較・検討するとともに、独自に開発した「光触媒-電解ハイブリッドシステム」を対象に変換効率の理論的限界、ハイブリッドシステムのコスト試算を行い、将来の導入に向けたシナリオを展開している。モジュール化に基づく高機能暗号の設計情報セキュリティを支える暗号は、ときどき破られることがあり、改良が続けられている。そのたびに暗号は複雑になり、専門家にとってもその安全性を証明することは困難で、証明が間違うこともある。この論文では、代理再暗号というおもしろい性質を備えた高機能暗号を例にして、暗号をモジュールに分割することで証明を容易にする方法が著されている。高度なIT技術を安全に社会に展開する有力な方策である。糖鎖プロファイリング技術がもたらすパラダイムシフト糖鎖は、遺伝子、タンパク質に次ぐ第3の生命鎖と言われるが、複雑な構造を簡便に解析する手法が欠けていることが障害となり機能の解明は大幅に遅れている。本論文では、特定の糖鎖構造に特異的に結合するタンパク質(レクチン)に注目し、糖鎖の構造的特徴を迅速、簡便に明らかにする新しいコンセプト「糖鎖プロファイリング」が構成された過程について述べられている。「糖鎖工学と言う新しい学問領域への突破口」への思いが伝わってくる。ボールペン技術による家庭用高精細映像光伝送システム開発本論文では、家庭でも普及したハイビジョンテレビなどの高精細映像を伝送する光ファイバーの接続技術の研究開発が紹介されている。研究目標として技術的な性能である通信速度の要求以外に、安全・簡単・高信頼・低価格などの目標を設定し、プラスチック型ファイバーとボールレンズを組み合わせた新たな光接続法の開発など要素技術とその統合化に向けたシナリオ、およびその実証実験の結果が記載されている。これまでに本誌には、130編を超える論文が掲載されていますが、その多くは掲載論文も産総研研究者によるものであります。最近、大学や企業の研究者・技術者の方々からの投稿も徐々に増えてきましたが、その数はまだ多くはありません。社会の中で産・学・官の研究者・技術者が連携したプロジェクトが数多く展開されています。それらの研究開発成果の公表とともに、プロジェクト推進で行われた研究プロセスを本誌に掲載することにより、「社会に役立つ研究を効果的にかつ効率よく実施するための方法論」を確立し、社会の知として共有されることを願っています。また、本誌の掲載論文は、産総研のホームページおよびJ-Stage(独立行政法人日本科学技術振興機構(JST)の総合電子ジャーナルプラットフォーム)上で、電子ジャーナルとして公開されています。是非、ご活用していただきたいと思います。(編集委員 多屋 秀人)電子ジャーナルのURL産総研HPhttp://www.aist.go.jp/aist_j/aistinfo/synthesiology/index.htmlJ-Stagehttps://www.jstage.jst.go.jp/browse/synth/-char/ja/

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