Vol.7 No.2 2014
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研究論文:ボールペン技術による家庭用高精細映像光伝送システム開発(当麻ほか)−125−Synthesiology Vol.7 No.2(2014)ているボールレンズを端面に装着することによって、ラフな精度で結合しても損失の増大が小さいことから、パワーバジェットのマージンに対する接続精度の設計が楽になり、部品製造工程や品質管理にも良い影響を与え、部品コストを抑えることが可能となる。逆に言えば、ボールレンズがない従来の結合方法の場合には、かなり精度良く接続しないと、パワーバジェット内に収まらないことが想像でき、通信不良を起こす危険性が高く、家庭内での使用はあまり勧められない。要求を満たすために接続精度を高めようとすれば、コストがかかり消費者価格へも影響する上、接続時の取り扱いも難しくなってくる。したがって、本提案システムは家庭内での使用に十分耐えられる性能とコストを持つと考えられ、住宅の通信配線設計において、高い自由度をもっていることを示唆している。図10が示す通り、ケーブルが長くなると、パワーバジェットのマージンが少なくなってくる。長さが20メートルになった場合を考えてみると、長くなることで室内にとどまらず部屋間の機器接続も可能となって利用価値が高くなる。パワーバジェットは、5.80 dBとわずかに上昇し、目標に対するマージンが1.63 dBと若干下がるものの、まだ十分なマージン(1.63 dB)がある。この研究では住宅内のネットワークへの活用を目指している。これまでのところ、パワーバジェットの目標以下に抑えるには、50メートルが最長である(図10)。マージンがほとんどない(0.14 dB)ので、リスクは高くなるが、本提案のボールレンズ方式であれば、ミスアラインメントによる結合損失が非常に少ないので、50メートルまでの長さであれば十分に期待が持て、ホームネットワーク市場に光通信を実現するための有力候補となり得る。しかし住宅内のネットワークはこれより長い場合もあり、将来的にさらに長いアプリケーション(大きな住宅、集合住宅、オフィス等)にも展開するためには、コネクターのアラインメント損失(2.04 dB)を低減する改善が課題である。6 非圧縮映像伝送の検証6.1 光電ハイブリッド高速映像伝送インターフェースこの章では、開発された光インターコネクトの活用事例として、高精細映像伝送のための光ケーブルとコネクターのプロトタイプを開発し、その妥当性の検証のための映像伝送実験を行ったことを報告する。高精細映像伝送の光化のためには、映像機器類からの信号出力、それとつなぐ映像機器への入力が光化されていることが前提である。しかし現実問題として、機器の入出力端子が光化されているものは非常に少ない。急にすべてを光化することは難しいため、過渡期として電気信号での入出力と光での入出力の両方ができるようにしておくことが重要である。端子は全く電気のまま、伝送路は光に変換して伝送するアクティブ光ケーブル(AOC)も盛んに開発が進んでいるが、我々はもう一歩進んで、映像端子の横に、新たに光端子を設けて、電気だけで接続することも、光と組み合わせて接続することもできる「ハイブリッドコネクター」のプロトタイプを開発した。このハイブリッドコネクターは、図11に示すような構造になっている。既存の映像電気信号の入出力方法としては、コンテンツ保護を厳格に行っているHDMIが消費者にも一般的に使われていることから、今回のプロトタイプ試作では、HDMIとの互換性を重視し、HDMIが規定するものと同等な信号の入出力ができる端子を基本に、その横に並べて、最大40 Gbpsの伝送を可能とした光入出力端子を組み合わせて、コネクター設計を行った。この光端子の中には、この研究で開発した超小型ボールペン型光インターコネクトが8チャンネル組み込まれている。各チャンネルに最大10 Gbpsの信号が流せることから、4本ずつを双方向で利用すれば、最大40 Gbpsの双方向伝送ができる。プロトタイプ試作は、オスのコネクター(プラグ側)とメスのコネクター(レセプタクル側)をそれぞれ作成した。レセプタクルの左側、プラグの右側にHDMI Type-Aと同等のコネクターを付けた。通常のハイビジョン映像を伝送するためにはこちらが使われ、さらなる高精細映像の伝送には、光端子が使われる。6.2 4K3D非圧縮映像伝送によるシステム検証 この研究で開発したハイブリッドコネクターのプロトタイプを使用して、慶應義塾大学内の施設を利用して、4K3D 60i(画素数3840×2160、立体視左右デュアルストリーム、毎秒60フレーム、インターレース)の非圧縮映像を一方向40 Gbps双方向8チャンネル光インターフェースHDMI Type-A相当インターフェース図11 光電ハイブリッドコネクター(試作品)従来のハイビジョン映像伝送用コネクター「HDMI」と同様の機能を備えながら、さらに高精細な映像を光通信で送受信できる光コネクターを組み合わせたもの。光コネクターには、8本のボールペン型光インターコネクトが組み込まれている。

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