Vol.7 No.2 2014
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研究論文:ボールペン技術による家庭用高精細映像光伝送システム開発(当麻ほか)−124−Synthesiology Vol.7 No.2(2014)値も同様に、5章のパワーバジェットの計算で使用された。③レーザーの安全性評価次に、万が一のケーブル破損による光漏れを想定し、レーザー光線による人体への影響、とくに目の安全のために被ばく放出限界(AEL)値に基づいた光パワーを評価した。ADCMT社の光パワーメータ「8250A/82311」と、NEC製の850 nm光源の光トランシーバー、その受信機を使用して安全性評価を実施し、AEL値のファイバー1本あたりが-1.57 dBmと算出され、家電向けクラス1のアイセイフティ安全基準(レーザー光の安全性の規格で、家庭用機器では、最も安全なクラス1の規格値を守ることが要求される)を満たしていることを確認した。5 パワーバジェットの評価本提案システムが、目標とする家庭内高精細映像通信システムに適しているかどうかを確認するために、4章で述べた実験結果を組み合わせて、パワーバジェットの評価を行った。図10は、10メートル、20メートル、50メートルの3種のケーブル長におけるコリメーション損失、アラインメント損失、パワーペナルティ、およびケーブル損失の4つの損失を積み上げて、目標とするパワーバジェットに対しての余裕度(マージン)を推定した結果である。パワーバジェットの目標値(7.43 dB)は、IEEE802.3aeの受光感度(Stressed Receiver Sensitivity: SRS)の数値(-9 dBm)をもとに、アイセイフティを考慮して、Launch Powerの値(レーザーの出射パワー:-1.57 dBm)を差し引いた分である(9 dB − 1.57 dB = 7.43 dB)。コリメーション損失の値(2.72 dB)は、図5の平均値(1.36 dB)を2倍にしたもの(ケーブルの両端に結合損失があるため)である。アラインメント損失は次の6章で述べる8チャンネルのGI型POFを束ねて作られたコネクターの総損失(4.76 dB)から、各チャンネルの1本のファイバーのコリメーション損失分(2.72 dB)を差し引いて算出したもの(4.76 dB -2.72 dB =2.04 dB)である。つまりコリメーション損失とアラインメント損失を足したものが、コネクター全体の挿入損失量となる。またケーブル長に依存するパワーペナルティ、およびケーブル損失の二つの損失値については、それぞれ図9(a)および図9(b)の近似直線から計算で求めた。例えば、10メートル長のGI型POFにおけるパワーバジェットは、長さに依存しないコネクターの総損失(4.76 dB)と長さに依存するパワーペナルティ(10メートルで0.11 dB)とケーブル損失(10メートルで0.38 dB)をすべて合計した値(5.25 dB)となり、目標バジェット(7.43 dB)に対して、2.18 dBの十分なマージンがあることがわかる。ここで示した10メートルという長さは、家庭用電化製品の室内配線接続には十分な長さであり、また、6.2節のシステム検証で実際に使用したプロトタイプケーブルのサンプル長でもある。これらの他に4章では、軸ズレ損失(図6)、ギャップ損失(図7)、曲げ損失(図8)の3つのミスアラインメントによる結合損失の評価を行ったが、これらによって生じる損失を、図10で示したパワーバジェットのマージンから切り崩していくことになる。マージンの量が多ければ、接続精度が低くても目標に収まるが、マージンが少なく厳しければ、損失を最小限に抑える接続精度が必要となる。4章で述べた結果からわかるように、この研究で提案し(b)ケーブル損失(a)パワーペナルティケーブル長(m)ケーブル損失(dB)1005000-0.5-1-1.5-2-2.5-3-3.5-4y =-0.0375xケーブル長(m)パワーペナルティ(dB)y =-0.0114x0-0.5-1-1.5-2-2.5-3-3.5-4100500 マージン (10 m)=2.18 dBパワーバジェット: 7.43 dB (目標)ケーブル長 (m)累積パワー損失 (dB)5020101098765432101.870.750.660.290.380.112.042.042.042.722.722.72コリメーション損失アラインメント損失パワーペナルティケーブル損失図9 ケーブル長に対するパワーペナルティと損失のデータ左(a):長さの異なるサンプルのパワーペナルティを実測し、近似直線の数式を求めた。右(b):光損失とケーブル長の関係を測定し、近似直線を求めた。図10 トータルシステムの損失累計とパワーバジェット損失の測定値を積み上げて累計し、トータルシステムのパワーバジェットに対する余裕度を求めた。10 mでは2 dB以上の余裕があり、20 mまでは問題なし、マージンがほとんどなくなる50 mくらいまで、用途拡大ができると予測できる。

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