Vol.7 No.2 2014
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研究論文:ボールペン技術による家庭用高精細映像光伝送システム開発(当麻ほか)−122−Synthesiology Vol.7 No.2(2014)の特性をそのまま生かすことのできた、この研究における最も本質的にユニークな発明である。つまり、従来からのボールペンに必要とされてきた高精度のアラインメント、ボールの研磨、チューブの固定が、まさに光インターコネクトに求められる精度の高さと一致し、かつ極めて低コストでそれを実現するという、これまでの常識を覆す発明だったといえる。4 実験方法と評価結果それではここで、開発された新規光インターコネクトの性能を測定するための実験方法と、その結果を示す。4.1 結合損失の評価結合損失を測定するために、グレイテクノス社の光パワーメータ「Photom 205A」を使った。軸ズレ測定治具の上で、2本の光ケーブルを端部で結合させ、正確にその軸ズレ距離をx、y、zの3軸方向で制御して固定し、その2本のケーブルをパワーメータの入力と出力にそれぞれ接続し、各条件下で伝送される光のパワーを読みとった。光源の波長は850 nmである。ファイバー端部のゴミは取り付け前に、エアクリーナーで除去した。パワーが最大となるxyz座標を原点と設定し、ここを起点にx、y、z方向に軸ズレさせたときの光パワーをdBm単位で測定し、原点での光パワーを基準に差を取って結合損失(単位dB)を計算した。結合損失を実測するとともに、レイトレーシング法による工学設計ツールZEMAX™を用いて20万回のシミュレーションを実行し、実測データが理論的に間違っていないことを確認しながら実験を行った。シミュレーションで入力した条件は、現物に近い状態を再現するように、ファイバーの直径 0.49 mm、コア径 55 µm、屈折率 1.350、開口数 0.245、ボールレンズの直径 0.55 mm、屈折率 1.51とした。ファイバー端とボールレンズの距離は最適化された長さに設定した。結合損失は、最適な状態で結合したときのコリメーション損失と、結合時に軸ズレが生じて増加するアラインメント損失、端面間のギャップから生じる損失、光ファイバーの曲げから来る損失の4つに分けて評価した。その結果を以下に示す。①結合そのものによるコリメーション損失ボールレンズにより終端処理をしたGI型POFサンプルを40本作成し、そのうちの1本をマスターとして、残りの39本を1本ずつ、マスターに結合しながら損失量を測定した。平均損失は、-1.36 dBであった。その結果のヒストグラムを図5に示す。この結果から、パワーバジェット(送信側の最低出力と受信側の最低感度の差で、使用する機器での最悪の条件を想定した数値)の推定(5章)に使用される結合損失は、両端の結合を考慮して2倍し、2.72 dB(1.36 dB×2)となった。②軸ズレによるアラインメント損失2本のケーブルの結合において、軸ズレ(軸に垂直なx、y方向にずれるもの)が生じた場合の結合損失を、ボールペン技術によりボールレンズが装着されたコネクター同士の接続と、ボールレンズのない通常のファイバー端面つき合わせ接続とを比較して評価した。図6は、パワーが最大となる点を原点とし、軸に垂直な方向に平行ずれを生じさせた場合の損失増加量を測定したデータを示している。この図が示すように、ボールレンズが装着されたものは、軸ズレの許容が高まり、高精度な結合を必要としなくてすむ。あるいは同じ精度の結合では損失を軽減することができる。ボールがない従来のファイバー結合では、1 dB以下の損失に抑えるためには、10 µm以内の精度での結合が要平均=-1.36 dB (n=39)結合損失 (dB)頻度-0.4-0.6-0.8-1-1.2-1.4-1.6-1.8-214121086420ボールレンズ付き軸ズレ量 (µm)損失 (dB)100500-50-1000-1-2-3-4ボールレンズなし図5 試作サンプルの結合損失ヒストグラム試作した40本のボールペン型インターコネクトサンプルの結合損失測定データ。平均損失は、1.36 dB。図6 軸ズレによる損失の比較データ軸に垂直な方向のズレ量による光損失を、ボールレンズ装着の有無で比較したデータ。ボールレンズにより許容ズレ量が広くなる。

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