Vol.7 No.2 2014
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研究論文:ボールペン技術による家庭用高精細映像光伝送システム開発(当麻ほか)−121−Synthesiology Vol.7 No.2(2014)においてはガラスと金属の違いはあるものの、細いチューブの先端にボールを装着する、という構造概念の共通性に気づいたのである。さっそくニードルチップ型のボールペンに石英系光ファイバーを挿入し、超小型コネクターを開発する研究が2社の共同で始まった。しかし、ペン先の金属製スリーブに石英系光ファイバーを差し込み、通常のボールペンインクチューブと同じ方法で、外側からかしめて固定しようとすると、石英の材質の脆さゆえに破損してしまうことがわかった。開発を断念せざるを得ない状況にあった2010年、偶然に三菱鉛筆の技術指導にあたっていた小池に相談したところ、石英ファイバーを小池らが開発したGI型POFに置き換えるアイデアが出された。インクチューブのようなプラスチック素材の柔軟性を利用すれば、実現できるという発想である。さらに、ボールペン技術を使えば、ボールレンズの装着が低コストで実現することから、エレクトロニクス分野に限らず、コスト面で困難とされていた家庭用にもボールレンズ付きのコネクターが導入できると予想された。実験の結果、ボールペン製造と同じかしめる固定方法で、ファイバーを破損することなく固定できることが明らかになり、この研究が本格的にスタートすることになったのである。以上要約すると、この研究では一般家庭で利用される低コストで簡単に接続できる高精細映像光伝送システムの基盤形成と実証を目標とし、主要な要素技術としてのボールペン製造技術により、GI型POFの端面に超小型で高精度でありながら低コストでボールレンズ装着を可能とし、その実現を図るというシナリオで研究を遂行した。3 ボールペン型光インターコネクトの開発このようにして我々は、光ファイバーの端面にボールレンズを精度よく装着する方法として、世界で初めて、ボールペン製造技術を応用することに成功し、極めて低コストでの光インターコネクトを実現した[7]。このユニークで全く新しい概念のレンズ装着方法について、その構造を図4に示す。ニードルチップ型ボールペンのペン先は、3種類の部品から構成されている。ニードル部分にあたる金属製スリーブ(内径0.5 mm、長さ7.8 mm)、スリーブの先端に取り付ける金属ボール(直径0.55 mmの真球)、インクが流れるキャピラリーの3点である。このうち、金属製スリーブはそのままに、先端の金属ボールを高透明度の球状ガラス(材質BK7、直径0.55 mm、研磨して真球状にしたもの)に替え、インクチューブの代わりに、旭硝子株式会社製の全フッ素化GI型POF「FONTEX®」を挿入した。金属製スリーブには、POFの位置合わせのためのポンチ加工があり、挿入してポンチ加工までつき当てることで、先端のボールと端面の距離が正確に固定される。また、挿入したファイバーが抜けないように、スリーブの外側からかしめることで固定した。このときのボールレンズの中心とファイバーの中心軸は、精度よく位置合わせされていなければならない。その点で、ボールペン製造技術はもともと、高い精度のもとに設計、製造がなされてきたために、光通信の要求を満たす高精度のアラインメントを実現することができた。また、先端に装着するボールは、光学特性を高めるために、真球でかつ表面に凹凸のないなめらかさが必要であるが、この点においても、従来からのボールペン技術で培われてきた金属球の研磨方法が、およそそのまま生かされた。挿入したPOFを抜けないように固定する「かしめ」についても、およそ現状のボールペン製造技術が使われた。かしめの位置と箇所、かしめ強度については、POFの光学特性にダメージを与えることなく、十分な引き抜き強度が出るように最適化されたが、この点についても現状の生産工程における調整の範囲内で可能であった。これらの工程が、石英ファイバーでは達成できず、POFポンチ加工(挿入突き当て)(c) 先端部の構造金属ホルダー (長さ7.8 mm,外径0.72 mm、内径0.50 mm)全フッ素化GI POF(ファイバー径 0.49 mm,コア径 0.055 mm)ガラスボールレンズ(直径 0.55 mm)3点ポンチ加工(かしめ固定)チップ型ホルダー(b) GI POFを挿入したニードルUni-ball Eye Needle Micro(a) 水性ボールペン10(mm)5010(mm)50図4 ボールペン光インターコネクトの構造ニードルチップ型のボールペン製造技術を応用することで、光ファイバーの先端にガラスのボールレンズを安価に精度よく装着することができる。コネクターのハウジングにボールを付けるのではなく、ハウジングレスでファイバー端に直接ボールが装着できるため、このあとのコネクター設計に自由度が高い。

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