Vol.7 No.2 2014
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研究論文:ボールペン技術による家庭用高精細映像光伝送システム開発(当麻ほか)−120−Synthesiology Vol.7 No.2(2014)精細ディスプレイによる遠隔地間の「Face-to-Faceコミュニケーションシステム」を提案している[5]。この全フッ素化GI型POFは、石英系MMFと同等の広い帯域を有しており、材料の物理特性では石英よりも優れているため、ジョージア工科大学のラルフらにより高い評価を受けた[6]。プラスチック素材のため、押出成形技術で大量生産すれば低コストでの製品化が可能である。ただし、高速通信を可能にするために、コア径を小さくしており、接続の容易さの点ではSI型のような利点はなく、石英系MMFと同様に軸合わせ精度のよい接続が求められ、端面のキズ、ホコリにも気を遣う必要があり、防塵キャップを付けたり、接続前に端面クリーニングをしたりすることが求められる。このキズ、ホコリについて言えば、プラスチックは石英よりも材料が柔らかい上に静電気を帯びやすく、むしろ石英以上に気を使っているのが現状である。前述のボールレンズを組み合わせて、端面処理を改善する方法も考えられるが、低価格短距離通信を特徴とするPOFのビジネス展開の上で、高コストになるボールレンズ装着は常識ではありえない選択であった。GI型POFが発明されて20年、特性の良さは理想的でありながら、実用性を考えると、このようなトレードオフのために普及する用途が限定された状態が長年続いてきた。今回の我々の研究は、この事実をブレークスルーできるイノベーティブな統合技術である。開発のシナリオを図3で説明する。光ファイバーの欠点である接続の精度要求の高さと端面のキズやホコリのケアについて解消する技術として、ボールレンズを装着する「ビーム拡大コネクター」があることをすでに述べたが、POFを使うとコストが見合わないし、石英ファイバーでは、一般消費者に使用に耐える柔軟性がない。つまりボールレンズの機能は優れているが、従来のビーム拡大コネクターの組み立て技術では、トレードオフを抜け出せない。一方、家庭用ではなくエレクトロニクス部品の用途で、基板上の狭く小さな場所をジャンパー線のようにつなぐことができる光コネクターを目指していた鳥飼(当時日本航空電子工業勤務)は、ボールレンズがあれば接続は容易になるものの、ジャンパー線に必要な超小型形状にすることに困難を憶えていた。2009年、異業種交流で出会ったボールペンメーカー三菱鉛筆の技術者とのディスカッションがその方向性を大きく変えるきっかけとなった。「ボール」の材質!!!!!!× 実績が少なく採用への障壁が高い× 少量生産が困難で需要が必要○ 連続大量生産で低価格化可能○ 破断面から破片が出ず安全× 静電気がホコリを引き寄せやすい× 柔らかく端面がキズつきやすい《欠点》○ 柔らかく折り曲げても断線しない○ 石英系と同等の高速通信《特徴》家庭用に低コストで簡単に接続できる高精細映像光伝送システムの基盤形成と実証目標従来の高精度ハウジング設計によるボールレンズ取り付け技術(POFでは高価になり需要なし×)ボールペン製造技術を応用したユニークなレンズ取り付け技術(石英は組み立て時に破断×)統合技術組み立て技術要素技術取扱い易く安価で多用途に応用可能(家庭用に最適)車両・軍事など過酷な環境向き(家庭用には不向き)ボールペン型インターコネクト○レンズ取付けにハウジング不要○様々なコネクターに応用可能○高い生産技術で高精度○安価で大量生産に実績ありビーム拡大コネクター×折れ防止のためケーブルが太い×軸合わせ精度のために高コスト×ハウジング形状が大きくなる×特殊用途のため少量生産ボールレンズ○端面のキズ・ホコリ防止○接続が容易GI型POF○折り曲げに強い○大量生産で低コスト× 端面のキズ・ホコリ× 接続精度が必要石英系MMF○実績あり社会的に認知× 折れやすく破片が危険× 端面のキズ・ホコリ× 接続精度が必要×××図2 GI型POFの特徴と欠点全フッ素化GI型POF(屈折率分布型プラスチック光ファイバー)は、その物理的柔軟性によって、石英系ファイバーにはない折り曲げに対する耐久性を有し、破断による危険性もないため、一般家庭の消費者が取り扱い易い素材である半面、キズやホコリに対しては、石英系ファイバー以上に注意が必要である。図3 家庭用光接続技術開発のシナリオボールレンズの効果はかつてより知られていたが、取り付けのためのハウジングと組み立てに精度が必要で、安価に製造することが難しく、特殊な用途にしか使われなかった。本研究は、ボールペン製造技術を応用することで、極めて精度良く低コストでボールレンズの取り付けを可能とした。「○」は家庭用途に有利な特性、「×」は家庭用途に不利な特性。

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