Vol.7 No.2 2014
55/78

研究論文:ボールペン技術による家庭用高精細映像光伝送システム開発(当麻ほか)−119−Synthesiology Vol.7 No.2(2014)(MMF)が広く使用されているが、家庭やオフィスの室内用途では、ケーブルを折り曲げたり束ねたり、むき出しで床に這わせたりするために、取り扱いに気を付けないと折れてしまうという欠点を持っている[1][2]。また折れたファイバーのガラス破片が被覆を破って飛び出しユーザーを傷つける危険性もはらんでいる。さらに破損したガラスは、通常の燃えるゴミとして廃棄できない。さらにファイバーの端面にキズやホコリがつくと、接続不良が起こりやすく、接続にあたって端面の汚れをアルコールで拭き取ったり、ホコリをエアブローで除去したりする必要があり、一般消費者にとっては扱いにくい。端面処理の欠点を解消するために、従来からある技術として、光ファイバーの端面にボールレンズを付けて、端面から広がる光をコリメート(集光)し、コア径よりも出射光のビーム径を拡大させる「ビーム拡大コネクター」が知られている[3]。図1に示すように、通常は端面同士を精度よく密着させる必要がある光ファイバー接続において、ボールレンズを装着することにより、軸ズレ精度に余裕を持たせ、密着の必要性がなくなる上に、端面のキズやホコリの影響を受けにくくすることができる。過酷な屋外の条件下での光通信接続を可能にするため、航空機や船舶、車両、軍事用途等で用いられている[4]。ところが光ファイバーの軸とボールレンズの中心の位置関係を精度よく固定するためには、コネクターのハウジング部分の設計および組み立て精度が必要で、大量生産に向かない上、非常にコストがかかることから、特殊用途にしか使われていない。またハウジングが大きくなりがちで小型化ができない。また、石英ファイバーの欠点である脆くて折れやすい点については、近年では折り曲げに強いものも出てきているが、被覆を厚くするなどケーブルが太くなってしまうという欠点がある。このような背景の中でこの研究では、一般家庭における高精細映像の非圧縮伝送を可能とするための、安全で扱い易く、信頼性の高い低コストの高速光通信システムを提案するものである。具体的には、プラスチック光ファイバーの端面に小さなボールレンズを装着した、超小型光インターコネクトを開発し、このインターコネクトを複数本組み合わせた新規コネクター付きケーブルを試作、高精細映像を実際に流して検証を行った。2 目標とシナリオ一般家庭に普及可能な光通信システムを導入するにあたり検討しなければならない課題は、その通信速度(伝送帯域)というテクニカルな要求を満たすことだけではなく、ユーザーの視点に立って、安全で扱い易く、簡単に信頼性の高い接続が可能で、かつ低価格で提供できるかどうか、という点である。この点で要求を満たすことが困難な石英系光ファイバーに代わって、プラスチック光ファイバー(POF)は、優れた柔軟性と物理的耐久性を示し、大量生産で安く製造することが可能な媒体として最も有力な候補である。POFは石英系光ファイバーに比べて、折り曲げに強く、踏みつけても断線することがない。一般に普及しているPOFは、伝送帯域の狭いステップインデックス型(SI型)であり、コア径が大きく接続時の軸ズレや端面のキズ、ホコリに気を使う必要がないので、消費者が使う室内の配線用途に向いていると考えられる。しかし、この研究が目指している非圧縮高精細映像の伝送を考えると、数100 Mbpsの帯域では、伝送速度が不足している。一方で慶應義塾大学の小池らのグループが発明した全フッ素化屈折率分布型プラスチック光ファイバー(GI型POF)(図2)は、高速通信にも対応できるものとして商品化されており、プラスチックの素材の特徴である柔軟性を兼ね備えながら、40 Gbpsに迫る世界最速の伝送帯域を持つ。小池らは全フッ素化GI型POFを用いた大画面高 光ファイバー球形集光レンズコア部(a)従来の突き合わせ接続方式(物理的接触 + 高精度な軸合わせ)(b)ボールレンズ接続方式(接触が不要 + 軸合わせの精度が緩和)図1 ボールレンズの特徴従来の光ファイバー接続は、端面を突き合わせて接触させ、光軸を正確に合わせる必要があった。これに対して、ボールレンズを終端に付けた光ファイバーは、コア径よりも拡大されたコリメート光が出射され、軸ズレの精度が緩和されるうえ、ギャップを開けて非接触でもつながるため、結合がとても簡単になる。

元のページ 

page 55

※このページを正しく表示するにはFlashPlayer10.2以上が必要です