Vol.7 No.2 2014
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研究論文:糖鎖プロファイリング技術がもたらすパラダイムシフト(平林)−116−Synthesiology Vol.7 No.2(2014)執筆者略歴平林 淳(ひらばやし じゅん)1980年東北大学理学部卒業。1982年東北大学大学院理学修士。1982年帝京大学薬学部助手~講師。1989年東北大学大学院理学博士。2002年(独)産業技術総合研究所糖鎖工学研究センター研究チーム長。2006年同、糖鎖医工学研究センター副センター長。2012年同、幹細胞工学研究センター上席研究員(現、首席研究員)。査読者との議論議論1 全体的なコメントコメント(上田 完次:兵庫県立工業技術センター)この研究の展開には、いくつかの重要な飛躍があったことが伺えます。物語風であるので、そのエポックが強調されわかりやすくなっていると思います。しかし、それらの飛躍は、単なる偶然ではなく、何らかの仮説に基づいていたはずです。新しい要素技術を仮定したのか、あるいは、既存技術の構成のための仮説を立てたのかなど、明記してください。そうすると、シンセシオロジーの論文として、よりふさわしいものとなります。また、読者の理解を容易にするために、この論文の構成に沿う流れ図のような説明図を加えるのがいいと思います。物語風の記述とセットになって、読者が論理的に理解しやすくなると思います。コメント(湯元 昇:産業技術総合研究所)この研究の目標は「糖鎖プロファイリング技術の開発」であり、「FACによる原理検証」という大きなブレークスルーを軸に、「レクチンのアレイ化」、「エバネッセント波励起蛍光検出法」といった要素技術を統合してレクチンマイクロアレイを開発しています。しかし、そのシナリオは特にバイオ分野以外の人にとってはわかりにくいものとなっています。その大きな理由は、時系列に沿った記述となっているからと思われます。そこで、まずレクチンマイクロアレイとそれを用いた糖鎖プロファイリングの概念図を入れて頂き、そのもととなる原理の検証が必要であったことと、マイクロアレイの要素技術を統合したという構成にして頂けないでしょうか。回答(平林 淳)後半の「応用展開」を除き全編にわたり、ご指摘の点を意識して技術シナリオ、仮説を明示しつつ修正を試みました。本技術の構成・論立てと物語の対応がわかるような図7を最後に加え、かつ技術中心のシナリオとして総括を加えてみました。しかし、時系列(物語風)の論調をくずすと、その持ち味が失われること(文章力によりますが)、結局全部を書きなおすことになってしまうと感じます。熟慮の結果、時系列の記載はそのままとし、冒頭に糖鎖解析の難しさをイメージとしてまず植え付けさせ(課題を提示)、本技術であるレクチンマイクロアレイの操作法の従来法との違い(図2)、レクチンアレイの原概念(図3)⇒ブレークスルーとなったFACの改良(図4)、そしてPJで得たデータ(図5=レクチンアレイのイメージそのもの)という流れを明確に提示しました。さらに、最後に技術が中心のシナリオになるよう、読者にレビューしてもらうべく、総括を加えてみました。議論2 糖鎖の構造解析の困難性の明示コメント(上田 完次)糖鎖が、構造的多様性と時間的不安定性が大きく、複雑であることが、この研究の出発点として強調されています。糖鎖が核酸やタンパク[25]C.D. Rillahan and J.C. Paulson: Glycan microarrays for decoding the glycome, Annu. Rev. Biochem., 80, 797-823 (2011).[26]N. Uchiyama, A. Kuno, H. Tateno, Y. Kubo, M. Mizuno, M. Noguchi and J. Hirabayashi: Optimization of evanescent-field fluorescence-assisted lectin microarray for high-sensitivity detection of monovalent oligosaccharides and glycoproteins, Proteomics, 8 (15), 3042-3050 (2008).[27]久野敦, 武石俊作, 平林淳: レクチンマイクロアレイのタンパク質医薬品生産プロセス開発への応用, バイオ医薬品開発における糖鎖技術 (早川堯夫, 掛樋一晃, 平林淳 監修) シーエムシー出版, 230-241 (2011).[28]J. Hirabayashi, M. Yamada, A. Kuno and H. Tateno: Lectin microarrays: concept, principle and applications, Chem. Soc. Rev., 42 (10), 4443-4458 (2013).[29]A. Kuno, Y. Itakura, M. Toyoda, Y. Takahashi, M. Yamada, A. Umezawa and J. Hirabayashi: Development of a data-mining system for differential profiling of cell glycoproteins based on lectin microarray, J. Proteomics Bioinformatics, 1(2), 68-72 (2008).[30]M. Toyoda, M. Yamazaki-Inoue, Y. Itakura, A. Kuno, T. Ogawa, M. Yamada, H. Akutsu, Y. Takahashi, S. Kanzaki, H. Narimatsu, J. Hirabayashi and A. Umezawa: Lectin microarray analysis of pluripotent and multipotent stem cells, Genes Cells., 16 (1), 1-11 (2011).[31]Y. Itakura, A. Kuno, M. Toyoda, A. Umezawa and J. Hirabayashi: Podocalyxin-targeting comparative glycan profiling reveals difference between human embryonic stem cells and embryonal carcinoma cells, J. Glycom. Lipidom., S5-004 (2013).[32]S. Saito, Y. Onuma, Y. Ito, H. Tateno, M. Toyoda, A. Hidenori, K. Nishino, E. Chikazawa, Y. Fukawatase, Y. Miyagawa, H. Okita, N. Kiyokawa, Y. Shimma, A. Umezawa, J. Hirabayashi, K. Horimoto and M. Asashima: Possible linkages between the inner and outer cellular states of human induced pluripotent stem cells, BMC Syst. Biol., 5 Suppl 1, S17 (2011).[33]H. Tateno, M. Toyoda, S. Saito, Y. Onuma, Y. Ito, K. Hiemori, M. Fukumura, A. Matsushima, M. Nakanishi, K. Ohnuma, H. Akutsu, A. Umezawa, K. Horimoto, J. Hirabayashi and M. Asashima: Glycome diagnosis of human induced pluripotent stem cells using lectin microarray, J. Biol. Chem., 286 (23), 20345-20353 (2011).[34]K. Hasehira, H. Tateno, Y. Onuma, Y. Ito, M. Asashima and J. Hirabayashi: Structural and quantitative evidence for dynamic glycome shift on production of induced pluripotent stem cells, Mol. Cell. Proteomics, 11 (12), 1913-1923 (2012).[35]Y. Onuma, H. Tateno, J. Hirabayashi, Y. Ito and M. Asashima: rBC2LCN, a new probe for live cell imaging of human pluripotent stem cells, Biochem. Biophys. Res. Commun., 431 (3), 524-529 (2013).[36]H. Tateno, A. Matsushima, K. Hiemori, Y. Onuma, Y. Ito, K. Hasehira, K. Nishimura, M. Ohtaka, S. Takayasu, M. Nakanishi, Y. Ikehara, M. Nakanishi, K. Ohnuma, T. Chan, M. Toyoda, H. Akutsu, A. Umezawa, M. Asashima and J. Hirabayashi: Podocalyxin is a glycoprotein ligand of the human pluripotent stem cell-specific probe rBC2LCN, Stem Cells Transl. Med., 2 (4), 265-273 (2013).[37]National Research Council: Transforming Glycoscience, The National Academies Press (US), (2012).[38]N. Taniguchi, T. Suzuki and K. Ohtsubo (eds.): Sugar Chains, Springer, Tokyo (2014), in press. [39]J. Hirabayashi, A. Kuno and H. Tateno: Lectin-based structural glycomics: a practical approach to complex glycans, Electrophoresis, 32 (10), 1118-1128 (2011).[40]平林淳: 糖鎖のはなし, 日刊工業新聞 (2008).[41]平林淳: 転換期を迎えたバイオ医薬品~成否のカギはオープンイノベーションと糖鎖制御, MEDCHEM NEWS, 23 (2), 16-21 (2013).

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