Vol.7 No.2 2014
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研究論文:糖鎖プロファイリング技術がもたらすパラダイムシフト(平林)−109−Synthesiology Vol.7 No.2(2014)ことで、ハイスループット化への道が拓けた[11]。著者は、1998年の国際炭水化物学会(サンジエゴ)に参加した折、D. SchriemerのボスであるO. Hindsgaul(現、カールスバーグ研究所)による「Whistler Award」の受賞講演を何気なく聴いた。Hindsgaulは講演の最後の部分で、「とっておきのニュースがある」と切り出した。上記、笠井献一氏が20年前に編み出したFACを、コンビナトリアル化学で合成した化合物スクリーニングに応用展開したというのだ。彼らは10 cm程度のPEEK製チューブにレクチンを固定化したビーズを充填し、この「カラム」を巧妙な手製デバイスを介してESI・MS装置に直結させるという離れ業をやってのけた。著者は仰天した。著者のボスの名前が突然受賞講演で登場したこともあるが、何より彼らのやったことは今までのFACの常識を覆すことだった。著者は発奮せずにいられなかった。ちなみに、当時、同僚たちはガラス製のオープンカラムとフラクションコレクターを用いて分析を行っていた。この先入観を捨てSchriemerとは異なる方法で、迅速、高感度、ハイスループット化への道を模索した。MS装置など、当時の地方大学では手に入らなかったが、かわりに研究室には、共同研究先メーカーが置いて行った古いイソクラティック式の液体クロマトグラフィー(LC)用ポンプ1台と蛍光検出機があった。都合のよいことに、当時市販されて間もないピリジルアミノ化糖鎖(PA糖鎖)という蛍光標識された標準糖鎖が何種類か手元にあった。これらを何とかモノにできないかと思いを巡らしていたある日、「発想の転換」が訪れた。FACでは薄めたアナライト(分析物)をカラム体積に対し過剰量流すことで、アフェニティー保持の破綻を「前端容量」として観察する。この二つの「体積」の関係を保つことが分析には不可欠なので、「カラムサイズを極力小さくし、逆にアナライトをその20倍以上の容量をもつサンプルループを使って注入できないか」と考えついた。LCでは通常分離能を維持するため小容量のサンプルループを用いるので、わざわざループを長くすることは想定外だった。しかし、適当な内径のPEEKチューブを数メートル用いれば20:1の体積比を簡単に達成できることがわかった。試行錯誤の結果、カラムは市販のガードカラム(内系4 mm、長さ10 mm、体積126 µl)で代用できた。ここにPA糖鎖の溶液を2 mlのサンプルループを介して一定流速で注入した。溶出してくるPA糖鎖の蛍光を蛍光検出器につないだインテグレータにより追跡した。カラムには、手始めに市販の植物レクチンを固定化したアガロース樹脂を詰めた。すると、相互作用のあるとされるPA糖鎖は遅れて溶出され、そうでない糖鎖は素通りして溶出された(図5左のクロマトグラム参照)[12]。ある日、この溶出曲線の美しさに感激した同僚の荒田洋一郎氏(現、城西大)は、蛍図5 ヘクト・バイ・ヘクトPJによって産出されたレクチン・糖鎖相互作用のデータ(一部)相互作用の度合いは溶出前端の遅れ(V-V0)として観察される。マトリックスでは最も強い相互作用を赤で、相互作用の無いケースを青で示している。glycolipid Chitin-binding Jacalin Legume lectin Fuc Gal MonocotR-typeOthersMan Oth- ers -glycan N<1 µl1-22-55-1010-50 >50123456789101112131415161718192021222324252627282930313233343536373839404142434445464748490.7 µLRhaC48UDADSLWGALELPWMSTLACAJacalinMPAECLPHAEBPLPNAVVAWFLSBADBAPHALGSL-ⅠPTL-ⅠLBAUEA-ⅠPTL-ⅡSJAGSL-ⅡLCAConAPSAVFALTLGNLNPAHHLRCA120SNASSAACLAALEELTJA-ⅠTJA-Ⅱ21.510.50020406080100Time(min)% of plateau21.510.50020406080100Time(min)% of plateau21.510.50020406080100Time(min)% of plateau21.510.50020406080100Time(min)% of plateau21.510.50020406080100Time(min)% of plateau21.510.50020406080100Time(min)% of plateau

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