Vol.7 No.2 2014
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研究論文:糖鎖プロファイリング技術がもたらすパラダイムシフト(平林)−107−Synthesiology Vol.7 No.2(2014)態で蛍光標識し、解析する点である。LCマッピング法[5]は我が国で開発された糖鎖構造の照合式同定法注3)だが、この方法は、糖鎖をグリコシダーゼやヒドラジン分解で切り離したのち、相互分離と検出を容易にするために、タンパク質に結合していた糖鎖の還元末端を蛍光剤で標識するのが一般である[6]。しかし、数十種から時には数百種に及ぶ糖タンパク質糖鎖の一斉分離と構造同定を行うのは容易ではない。したがってほとんどの場合、構造解析自体が研究目的になってしまい、その先にある真の目的には届かない。糖鎖の切り離しと相互分離という操作を省き、最短ルートで必要な情報が得られれば、糖鎖解析の速度と質は飛躍的に高まる。この時間差を縮め糖鎖の機能探求にいち早く導くことが、糖鎖プロファリングの役目である(図2)。糖鎖研究が重要であると多くの研究者が気づいていたにも関わらず、それが進展しなかった理由は有効な糖鎖プロファイリング技術がなかったためと言える。糖鎖研究の先哲である永井克孝・三菱生命科学研究所所長(当時)は糖鎖エンジニアリングプロジェクトのスタートに際し、2003年7月4日付の日本工業新聞(20面)で装置開発の意義について、次のように語っている。「自動化装置がないと、研究にはスペシャリスト以外は入り込めない。専門家の言うことを聞き、許可を得るというような手続きを踏まなくても、自動化装置により、配列が分かり、必要とする糖鎖をつくり出せれば、誰でもやれる。それに図2 これまでの糖鎖解析法(LC、MS、CE)とレクチンマイクロアレイによる糖鎖プロファイリングによる方法のちがい前者では構造既知の標準品と比較するため(記憶照合法)、糖鎖を糖タンパク質から切り出す必要がある。MSでは異性体を事前に相互分離する必要があり、解析前にLC等で精製する必要も生じる。これに対し、レクチンマイクロアレイでは糖タンパク質試料をそのまま蛍光標識し、一連のレクチンとの相互作用を一括解析する。レクチンとの相互作用結果がアウトプットに反映されるので、糖鎖構造が同じでもコアタンパク質の種類や濃度が異なることで解析パターンが変化することもある。 LCMSCE糖鎖プロファイリング~レクチンマイクロアレイ糖鎖はタンパク質に結合したまま糖結合親和性を有するタンパク質、抗体等レクチン糖タンパク質試料蛍光標識ピリジルアミノ化、2AB化等従来の解析法~MS、LC、CE等糖鎖の切り出しが必要糖鎖特異的切り出し種類によって方法が異なるPNGaseF、アルカリ水解等Cy3等蛍光標識蛍光標識した糖タンパク質試料通常、糖鎖構造は不均一相互作用データ処理・統計解析レクチンタンパク質の側鎖であるアミノ基、カルボキシル基、スルフヒドリル基、あるいはビオチン化等を介してスライドガラスに固定化したものレクチンマイクロアレイ表1 SGプロジェクト(2002補正~2005年度)糖タンパク質構造解析技術開発のテーマと実施体制1. 糖タンパク質構造解析技術の開発1-1. グライコプロテオミクス(産総研、首都大、近畿大、 島津製作所、ジ-エルサイエンス、他) ・プロテオーム型戦略(プロテオーム解析手法による 大規模糖タンパク質の同定) ・グライコーム型戦略(タンパク質同定と糖鎖構造情 報の双方を取得する方法論の開発) ・グライコフォーム解析(糖タンパク質から糖鎖を切り 離し糖鎖する手法の解析)1-2. 質量分析利用糖鎖構造解析(産総研、島津製作所、 サイバーレーザ、三井情報、東京理科大、他) ・MALDI-QIT-TOF質量分析計による糖鎖構造解析、 糖ペプチドに適した高スループット・ソフトイオン化方 法の探索、糖ペプチドの構造解析に適した断片化法 の探索1-3. 糖鎖プロファイリング技術(産総研、島津製作所、 J-オイルミルズ、東大、他) ・FAC:レクチン・標準糖鎖間の網羅的相互作用解析 ・糖鎖プロファイラー開発:エバネッセント波励起法に 基づくレクチンマイクロアレイの開発2. 糖鎖構造同定データベースの構築(産総研、三井情報、 富士通) ・糖タンパク質データベースの構築 ・オリゴ糖データベースの構築 ・レクチンプロファイルの解析 ・質量分析による糖鎖構造解析ソフトウエアの開発 ・分子計算に基づく糖鎖断片化予測ソフトウエアの開発

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