Vol.7 No.2 2014
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シンセシオロジー 研究論文−68−Synthesiology Vol.7 No.2 pp.68-80(May 2014)1 はじめに光周波数コムが発明される以前は、光領域の周波数計測は極めて困難であった。測定装置として多くのマイクロ波発振器、特殊な非線形逓倍混合素子、波長(周波数)安定化レーザー(以下、安定化レーザー)を用意して、セシウム原子周波数標準器の発生するマイクロ波周波数9,192,631,770 Hzを基準に、順次逓倍・混合を繰り返して光領域の周波数とリンクする「周波数チェーン」[1][2]が用いられていた。これは非常に大がかりな装置であり、開発だけでなく、測定の実施に膨大なコストと人的資源を必要とした。さらに、この装置は1種類のレーザーの周波数しか測ることができず、別の波長のレーザーには異なる周波数チェーンを構築する必要があった。このような事情から、国際度量衡委員会は実用的なメートル定義の実現のために、周波数チェーンで測定されたレーザーの周波数を基に、安定化レーザーのリストを作成し、これらを波長標準(長さ標準)として用いることを勧告[3]している。各国の標準研究所で作られた安定化レーザーは、同等性を確認するために持ち寄って、国際的な周波数比較(国際比較)を行う。国際比較されたレーザーは、その国における長さ計測のための基準レーザーのお・お・も・と・となる。そして、実際に国際比較が行われるのは、ほとんどが波長633 nmヨウ素安定化ヘリウムネオンレーザーである。日本においても、長さ計測のトレーサビリティの頂点である国家標準(特定標準器)は、2009年まで産総研が保有するヨウ素安定化ヘリウムネオンレーザー[4]であった。光領域の周波数計測には長さ標準以外にも多くの応用分野があり、社会的に最も重要な分野が光ファイバー通信稲場 肇*、大苗 敦、洪 鋒雷光周波数コムは、可視~近赤外波長域において、等しい周波数間隔でモードが並ぶ光周波数のものさしであり、光とマイクロ波領域の周波数とを精密に比較するなど、大きな技術革新を起こした。しかし、当初用いられていた、固体レーザーを用いた光周波数コムは、大型・高価で、かつ長時間安定に動作させることが困難だった。我々はファイバーレーザーを用いた光コムに早くから着目して研究開発を進めてきた。特に、レーザーも含めた光コムシステムの産総研内での開発に成功してからは、通信帯波長におけるレーザー周波数の校正をはじめ、長さの国家標準、そして次世代光周波数標準のための新しいレーザー制御技術を開発するなど、独自性のある成果を挙げている。通信の大容量化に対応する「長さ」の国家標準− ファイバー型光周波数コムの開発 −Hajime Inaba*, Atsushi Onae and Feng-Lei HongOptical frequency comb is a collection of laser modes with equal frequency intervals in the visible to near-infrared regions that enables direct comparison of optical frequencies with the microwave atomic frequency standards. Traditional solid state laser-based frequency comb systems were large, expensive and very difficult to operate for long periods of time during experiments. From the early stage of development, we proposed fiber lasers as a feasible means for achieving a reliable frequency comb. After we succeeded in developing an in-house fiber-based frequency comb at AIST, we made further advances, including calibration of optical telecommunication band, establishment of national standards of length, and development of a narrow-linewidth comb for optical lattice clocks.キーワード:光周波数コム、ファイバーコム、光周波数計測、長さ標準、光通信帯波長、波長安定化レーザー、モード同期レーザーKeywords:Optical frequency comb, fiber-based frequency comb, optical frequency measurement, length standard, optical telecommunication band, wavelength-stabilized lasers産業技術総合研究所 計測標準研究部門 〒305-8563 つくば市梅園1-1-1 中央第3National Metrology Institute of Japan, AIST Tsukuba Central 3, 1-1-1 Umezono, Tsukuba 305-8563, Japan *E-mail: Original manuscript received May 30, 2013, Revisions received October 4, 2013, Accepted October 24, 2013National length standard supporting high-capacity optical fiber communication systems- Development of fiber-based optical frequency combs -

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