Vol.7 No.2 2014
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研究論文:ソーラー水素製造の研究開発(佐山ほか)−91−Synthesiology Vol.7 No.2(2014)執筆者略歴佐山 和弘(さやま かずひろ)1990年3月東京工業大学総合理工学研究科電子化学専攻修了。1997年博士(理学)取得(東京工業大学)。1990年4月物質工学工業技術研究所(当時、化学技術研究所)入所。組織再編で産業技術総合研究所に。現在、エネルギー技術研究部門太陽光エネルギー変換グループ研究グループ長。半導体光触媒を用いた水分解水素製造の研究開発を一貫して行ってきた。太陽光発電工学研究センター革新材料チーム長を兼務し、色素増感太陽電池の研究開発にも従事。この論文では、光触媒-電解ハイブリッドシステムの開発背景や特徴、他の技術との比較や実用化へのシナリオについて主に担当した。三石 雄悟(みせき ゆうご)2009年3月東京理科大学大学院理学研究科化学専攻博士課程修了。同年4月産業技術総合研究所に入所。現在、エネルギー技術研究部門太陽光エネルギー変換グループの主任研究員。学位論文より光触媒を用いた水分解のための新材料開発に従事してきた。この論文では、光触媒―電解ハイブリッドシステムのコスト試算について主に担当した。water at a semiconductor electrode, Nature, 238, 37-38 (1972).[9]B. D. James, G. N. Baum, J. Perez and K. N. Baum: Technoeconomic analysis of photoelectrochemical (PEC) hydrogen production, DOE Report (2009), Contract No. GS-10F-009J (2009). [10]R. Saito, Y. Miseki and K. Sayama: Highly efficient photoelectrochemical water splitting using a thin film photoanode of BiVO4/SnO2/WO3 multi-composite in a carbonate electrolyte, Chem. Commun., 48, 3833-3835 (2012).[11]K. Sayama, R. Yoshida, H. Kusama, K. Okabe, Y. Abe and H. Arakawa: Photocatalytic decomposition of water into H2 and O2 by a two-step photoexcitation reaction using a WO3 suspension catalyst and an Fe3+/Fe2+ redox system, Chem. Phys. Lett., 277 (4), 387-391 (1997).[12]K. Sayama, K. Mukasa, R. Abe, Y. Abe and H. Arakawa: Stoichiometric water splitting into H2 and O2 using a mixture of two different photocatalysts and an IO3-/I- shuttle redox mediator under visible light irradiation, Chem. Commun., 2416-17 (2001).[13]S. Mizuta, W. Kondo, K. Fujii, H. Iida, S. Isshiki, H. Noguchi, T. Kikuchi, H. Sue and K. Sakai: Hydrogen production from hydrogen sulfide by the Fe-Cl hybrid process. Ind. Eng. Chem. Res., 30, 1601-1608 (1991).[14]Y. Miseki, H. Kusama, H. Sugihara and K. Sayama: Significant effects of anion in aqueous reactant solution on photocatalytic O2 evolution and Fe(III) reduction, Chem. Lett., 39 (8), 846-847 (2010).[15]Y. Miseki, H. Kusama and K. Sayama: Photocatalytic energy storage over surface-modified WO3 using V5+/V4+ redox mediator, Chem. Lett, 41 (11), 1489-1491 (2012). [16]Y. Miseki, S. Fujiyoshi, T. Gunji and K. Sayama: Photocatalytic water splitting under visible light utilizing I3-/I- and IO3-/I- redox mediators by Z-scheme system using surface treated PtOx/WO3 as O2 evolution photocatalyst, Catal. Sci. Technol., 3, 1750-1756 (2013).[17]H. Kusama, N. Wang, Y. Miseki and K. Sayama: Combinatorial search for iron/titanium-based ternary oxides with a visible-light response, J. Comb. Chem., 12 (3), 356-362 (2010).査読者との議論議論1 全般質問・コメント(長谷川 裕夫:産業技術総合研究所、柳下 宏:産業技術総合研究所環境化学技術研究部門、立石 裕:産業技術総合研究所)この論文は、太陽光水素製造の実用化に向けて、長期にわたる研究開発の推進において重要である、研究開発目標、シナリオの設定を主題とし、基礎研究の成果をプロジェクト化し発展させていく過程が述べられており、シンセシオロジーにふさわしい論文と思われます。一般には、第2種基礎研究として考えている内容が達成されて、初めて、実用化のシナリオができるという研究開発の流れとなると思われます。この研究では特に、実用化シナリオを基礎研究の段階で描いていますが、その必要性、重要性を強調してください。回答(佐山 和弘)まさしくご指摘の点がこの論文で最も伝えたかったことです。太陽光水素製造技術開発の歴史は長く、実用化まで長期間を有するエネルギー技術の開発に一般的に当てはまることですが、エネルギー価格の変動やエネルギー政策の転換等の影響により、基礎研究の進め方や方向性が大きく影響を受け、それが研究開発推進の障害となってきたように思われます。このような長い期間を有する研究開発の実用化を効率的に推進するために、明確な開発目標とマイルストーンを定めた長期の研究開発計画と、実用化シナリオの策定が特に重要と思われます。この点を第1章、2章に詳しく述べました。議論2 シナリオと時間軸質問・コメント(立石 裕)一般的に、新しいエネルギー技術の導入を促進し実用化につなげていくためには、付加価値の大きい対象や他の研究開発と組み合わせることによって、高コストでも導入できるところから、実証研究を開始し、それと併せて基礎研究によってコストダウンを図っていく道筋が考えられます。第7章のシナリオの部分では、このような展開を明確に、できれば時間軸について触れながら記述してください。回答(佐山 和弘)ご指摘に従って、実用化を目指していく太陽光水素製造の研究全体の流れを時間軸に沿って、第7章の最初の段落に追加記載しました。なお、経産省の未来開拓技術実現プロジェクトの光触媒の研究においては、太陽エネルギーが水素生成に寄与する効率として、2021年度までに10 %という目標値が設定されています。総合科学技術会議の環境エネルギー技術革新計画の中でもこの目標を踏襲しています。水素製造コストについて、NEDOの水素製造のロードマップに準じるのであれば、2020年より前に目標①、2030年までに目標②の30円/Nm3以下を目指すことになります。議論3 目標設定、シナリオ、要素技術の構成・統合質問・コメント(立石 裕)シンセシオロジーの発刊趣旨の一つでもある、「目標設定と社会的価値を含めて、具体的なシナリオや研究手順、要素技術の構成・統合のプロセス」に関して、より明確に記述し、研究者自らが行った第1種基礎研究をどのように第2種基礎研究、製品化研究につなげていくか、研究分野の異なる研究者から見ても、容易に伝わるように心がけてください。回答(佐山 和弘)この研究分野の研究者だけでなく異分野の研究者から見ても良く分かるように、第1種基礎研究を第2種基礎研究および最終目

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