Vol.7 No.2 2014
26/78

研究論文:ソーラー水素製造の研究開発(佐山ほか)−90−Synthesiology Vol.7 No.2(2014)用語1:見かけの量子収率(QE):ある特定の波長の入射する光子の数に対して、反応に利用された光子数の割合を示す。用語2:太陽エネルギー変換効率(ηsun):入射する太陽エネルギーに対して、取り出したエネルギーの割合を示す。鉄イオンの反応の場合、水を酸素に分解してFe3+をFe2+に還元する反応として蓄積されたエネルギーの割合を示す。農作物の場合は、年間の太陽エネルギー総量に対して、年間で収穫された作物の乾燥物から計算した蓄積エネルギーの割合を示す。ηsunは光吸収波長領域や光吸収効率、QE、光子のエネルギーが物質に蓄積される割合という多くの因子で決まるのでQEの値よりも小さくなる。用語解説[1]K. Sayama, H. Arakawa, K. Okabe and H. Kusama: Jpn. Patent 3198298 (2001); U.S. Patent 09/028495 (1998).[2]Y. Miseki, H. Kusama, H. Sugihara and K. Sayama: Cs-modified WO3 photocatalyst showing efficient solar energy conversion for O2 production and Fe (III) ion reduction under visible light, J. Phys. Chem. Lett., 1 (8), 1196-1200 (2010).[3]日本学術会議, 理学・工学分野における科学・夢ロードマップ, (2011), http://www.scj.go.jp/ja/info/kohyo/kohyo-21-h132.html[4]NEDO燃料電池・水素技術開発ロードマップ2010, (2010), http://www.nedo.go.jp/news/other/FF_00059.html[5]エネルギー・環境会議のコスト等検証委員会報告書, (2011). http://www.aec.go.jp/jicst/NC/tyoki/sakutei/siryo/sakutei10/siryo2-2-3.pdf[6]NEDO太陽光発電ロードマップ(PV2030+), (2009). http://www.nedo.go.jp/library/pv2030_index.html[7]Y. Asaoka and M. Uotani: Feasibility study on hydrogen production with off-peak electricity -evaluation of the effects of availability and electric power transmission, CRIEPI Research Report, T02039, 1-16 (2003).[8]A. Fujishima and K. Honda: Electrochemical photolysis of 参考文献いキーワードとして「ソーラー水素製造」を優先して使用した方が良い、と考えている。第2章で述べたように、ソーラー水素製造は目的指向の第2種基礎研究を明示する言葉である。また、外部バイアス利用の是非について、人工光合成では使わないことを良しとする考えがあるが、ソーラー水素製造では積極的に使いこなす考え方の違いがある。光触媒-電解ハイブリッドシステムが実用化できるかどうかは、光触媒反応の性能向上とともに図6の外部バイアスも含めたシステム全体設計も重要である。この分野の研究者はいまだに非常に少なく、異分野融合(異分野からの新規参入および異分野内部での発展)が進めば実用化への応用展開は加速度的に進むことが期待される。中間目標①の「太陽光発電+水電解」はライバルではなく、さらに異分野融合を進めるべき相手の一つである。光触媒-電解ハイブリッドシステムはハイブリッド自動車の概念と似ている。ガソリンエンジンとモーターと蓄電池を単純に車載すると車体価格が上がるのは当然であるが、一方で実際に燃費が良くなるとは限らない。すべての要素技術を最適化してかつ相互にうまく連携することによって初めて燃費が下がる。この燃費に相当するのが光触媒-電解ハイブリッドシステムの水素製造コストである。システム全体の初期投資が大きくなっても水素製造コストが低下できたり、付加価値を高めることができれば実用化への展望を拓くことができる。この研究の初期段階においては、新規の半導体や助触媒等の光触媒材料の新規開発が非常に重要である。著者らは材料開発の高速自動スクリーニング技術に注力している[17]。半導体の金属の組成や助触媒、レドックス媒体の組み合わせは無数にあり、人力での探索には限界がある。高速自動スクリーニング技術を用いれば予想外の新規材料候補を早期に見いだすことができる可能性がある。さらにこの研究の波及効果として、レドックス媒体の光触媒反応の研究はZ−スキーム型反応の酸素発生光触媒の研究に直接応用できる。また、Fe2+イオンを用いた燃料電池やレドックスフロー電池の研究も行われているので、高い還元力を持つレドックス媒体を太陽エネルギーによって大量に生成できれば、蓄積されたエネルギーを水素ではなく電力に変換することも可能になる。8.3 実用的な導入のシナリオこの研究の初期段階の材料探索と並行して、全体システムの小さな実証試験を早期に行い、問題点を抽出しながら解決する必要がある。光触媒関連は当分大学や研究所を中心に材料開発が進行するが、電解や装置設計に関しては企業がそのポテンシャルを活かしながら早期に参入できるので、産学官連携が重要になってくる。著者らは全体を連結したシステムの小型実証試験を今後行う予定である。光触媒プールは大きな蓄電池の働きをするので、太陽光発電だけでなく風力発電等のさまざまな変動の激しい再生可能エネルギーとの親和性が高いことも重要な特徴である。再生可能エネルギーの導入拡大に伴って、その出力変動の貯蔵が必要となるが、通常の電池よりも低コストに大量の電力を貯蔵する技術として近年、風力発電や太陽光発電の再生可能エネルギー余剰電力による水電解水素製造が研究されている。立地次第では、この電解装置に光触媒とレドックス反応を組み合わせて、昼間と夜間の電解を組み合わせれば設備稼働率が上がり、水素製造コストをさらに低下させることも可能になる。短い周期および長い周期での大規模な電力負荷平準化に貢献できる。余剰電力利用は、初期の導入実証としてはハードルが低いので、このような余剰電力電解と光触媒とのハイブリッドシステムによる本格的な実証研究が実用化の第一歩になると想定される。

元のページ 

page 26

※このページを正しく表示するにはFlashPlayer10.2以上が必要です