Vol.7 No.2 2014
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研究論文:ソーラー水素製造の研究開発(佐山ほか)−89−Synthesiology Vol.7 No.2(2014)であり、DOEの報告書(約300円/m2)と同じレベルである。光触媒プール関係(設備、ポンプ、人件費、土地代、管理費、金利等)のコストの上乗せ金額は3円/Nm3前後になる。Fe2+を含む電解液の電解電圧を0.8 Vとすれば、電力部分のコストを約半分にできるので、通常の電解と比べてこの部分のコストメリットは非常に大きい。以上の仮定から、光触媒-電解ハイブリッドシステムの水素製造コストは、25円/Nm3程度になると試算された。同じ条件で、8円/kWhの電力を用いた通常の大規模水電解による水素製造コストは、41円/Nm3程度になる。また3章で述べたように、太陽光発電による電力コストは現状で40円/kWh前後であり、仮に2030年の開発目標である7円/kWhが達成されても、水素製造コストは35円/Nm3以上となる。以上の試算結果の結論として、中間目標①について、光触媒-電解ハイブリッドシステムによって、太陽光発電と水電解を組み合わせたシステムより低コストで水素製造が可能であることが示された。さらに、太陽光発電を含めどのような電力を用いても、光触媒-電解ハイブリッドシステムによって水素製造を低コスト化できる可能性を示すことができた。また、中間目標②相当の30円/Nm3以下も条件次第では達成可能であると言える。以上がコスト試算の基礎データとなる。実際にはこれを基にコストアップ要因とコストダウン要因を追加考慮する必要がある。コストアップ要因としては、例えば、電力料金や土地関係および台風等の自然災害対策費用である。上記の前提で電力料金を1.5倍の12円/kWhとすれば、光触媒とハイブリッドを行った電解システムと行わない通常電解ではそれぞれ33円/Nm3と58円/Nm3になる。コストダウン要因としては光触媒の太陽エネルギー変換効率の向上および鉄イオンよりも酸化還元準位がゼロに近い優れたレドックス媒体の開発等がある。理論光触媒プール関連:約3円(装備、ポンプ、人件費、金利等)のコスト増加分中間目標②30円/Nm341円25円電力コスト0.8 V電力コスト1.79 V電解の装置費、人件費、金利等試算条件:・光触媒の太陽エネルギー変換効率:3 %・光触媒コスト:WO3の2倍・触媒プール(ポリエチレン製、3 km2)・1日平均日射:4時間・寿命10年で減価償却・昼間にFe2+生成。夜間のみ電解光触媒ハイブリッド水電解水素製造コスト 円/Nm36020400限界(ηsun m)は上述のように鉄イオンおよび理想のレドックス媒体で24 %と30 %程度なので、伸び代を考慮すれば今後の光触媒の性能向上は十分可能であり、光触媒プールの面積減少につながる。また、理想的なレドックス媒体を用いて電解電力がゼロに近くすることができれば水素製造コストは14円/Nm3に近くになる。コスト試算結果と実用化までの障壁の低さ(実現可能性と時間)の両方を考慮すると、本システムを重点的に研究する意義は大きいと結論できる。8 実用化へのシナリオ8.1 社会的なロードマップ経産省の未来開拓技術実現プロジェクトの光触媒の研究においては、太陽エネルギーが水素生成に寄与する効率の目標として、2014、2016、2019、2021年度にそれぞれ1 %、3 %、7 %、10 %の値が設定されている。最近、総合科学技術会議が地球温暖化対策に向けた2050年までの技術開発の工程表を盛り込んだ環境エネルギー技術革新計画の中で、人工光合成やソーラー水素の項目追加を検討しているが、上記の目標を踏襲している。数値目標の定義には曖昧な部分はあるが、太陽エネルギー変換効率として今後の実用化へのシナリオの時間的な目安となるであろう。水素製造コストについて、NEDOの水素製造のロードマップに準じるのであれば、2020年より前に中間目標①、2030年までに中間目標②の30円/Nm3以下を目指すことになる。8.2 ソーラー水素製造の今後の研究展開光触媒(および光電極)を用いた太陽光による水素製造はこれまで化学分野を中心に発展し、人工光合成の一部として研究されてきた。しかし、今後について著者らは、実用化を加速するために異分野融合(ハイブリッド)しやす図9 光触媒−電解ハイブリッドシステムの詳細コスト試算共通条件:固体高分子型電解(32,000 Nm3/h)、電力コスト:8円/kWh、40 %稼働率

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