Vol.7 No.2 2014
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研究論文:ソーラー水素製造の研究開発(佐山ほか)−88−Synthesiology Vol.7 No.2(2014)数の半導体光触媒について同時並行でQEを向上させる研究を行い、最後に組み合わせることで全体性能を向上することができる。6.3 太陽エネルギー変換効率の実用的な評価次に、実際に得られている太陽エネルギー変換効率(ηsun)について議論する。これまでの成果としては上述の通り、粉末光触媒水分解のηsunは0.35 %程度に達していることがわかった。この数字は太陽光発電と比較すればあまりにも小さい数字に見えるが、スイッチグラス等の植物の効率を超えるレベルになっている。例えば、バイオマスエネルギーを利用したバイオマスエタノール生産の場合、トウモロコシのηsunは0.8 %程度、最も性能の高い藻類で3 %程度である。これは太陽光発電より1桁小さい数字であるが、一部の国や地域で実用化しているという事実は重要である。バイオマスエタノール生産はエネルギーを貯蔵できるという、太陽光発電にはない大きな利点もある。このように、ηsunが小さくても条件やコスト次第で経済性が成り立つ場合が十分にある。光触媒水分解の概念は、太陽エネルギーを直接化学エネルギーとして貯蔵できる意味で、太陽光発電よりもバイオマスエネルギーに近いので、バイオマス利用のηsunを超えることが大きなマイルストーンになる。現状の光触媒による太陽エネルギー変換効率は藻類のそれよりもまだ低いが、バイオマスの明反応自体の効率向上は遺伝子組み換えに頼る必要があり、人為的操作には限界がある。一方で、光触媒では材料探索とその調製法を工夫することで効率を飛躍的に高められる可能性がある。さらに、光触媒エネルギー変換貯蔵はバイオマスエタノールとは異なり、収穫・粉砕・糖化・発酵等のプロセスが不要であり、枯れない、栽培の世話が少ない、砂漠や海上等どこでも使える、などの大きな利点がある。レドックスを用いた光触媒反応はおよそ開放形に近い単純なプールで進行する、まさに究極の人工光合成系である。バイオマス利用との比較により、ηsun目標としては3 %程度またそれ以上あれば太陽光発電とも十分に競争できると考えられる。7 光触媒−電解ハイブリッドシステムのコスト試算と実用化の可能性実用化の議論のために最終的には、システム全体のコスト試算を行って、水素製造コストを比較する必要がある。光触媒-電解ハイブリッドシステムにおいて、中間目標①の太陽光発電と水電解を組み合わせたシステムより低コストで水素製造が可能かどうか、中間目標②やNEDO目標の30円/Nm3以下になるかどうかを試算した。コスト試算の固体高分子膜型水電解については電力中研の報告書を参照した[7]。また、光触媒プール部分および土地代についてはDOEの報告書を参考にした[9]。比較対象とする水電解装置としては、大型の固体高分子型電解装置(32,000 Nm3/h)を仮定した。電力コストはその時間帯の最も安い電力を選択して用いるが、8円/kWh(夜間電力相当)、40 %稼働率とした。光触媒-電解ハイブリッドシステムは、鉄イオンレドックスを用いて光触媒の太陽エネルギー変換効率(ηsun)は3 %とした。光触媒コストはWO3の2倍、光触媒プールはポリエチレン製、寿命10年で減価償却、昼間にFe2+を生成して夜間(10 h)のみ電解を行う、とした。結果と計算の仮定の一例を図9に示す。上記水素発生に必要な光触媒プール面積は3 km2となる。光触媒プールコストは268円/m2光触媒が利用できる限界波長(Lmax)/ nm(b)(c)(a)13001100900700500300051015202530理論限界太陽エネルギー変換効率( sunm)/ %η光触媒が利用できる限界波長(Lmax) / nm量子収率(QE) / %9007005003000204060801001 %3 %5 %10 %図8 光触媒の鉄イオンレドックス反応(Eº=+0.77 V)の量子収率(QE)と理論限界太陽エネルギー変換効率(ηsun m)光触媒が利用できる限界波長までの光吸収効率が100 %の場合図7 光触媒のレドックス反応の理論限界太陽エネルギー変換効率(ηsun m)光触媒が利用できる限界波長までの光吸収効率と量子収率が100 %の場合(a)太陽光スペクトル、(b)鉄イオンレドックス反応、(c)Eº=0のレドックス反応

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