Vol.7 No.2 2014
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研究論文:ソーラー水素製造の研究開発(佐山ほか)−85−Synthesiology Vol.7 No.2(2014)膜を使用)。n型半導体光電極に関しては明確なコスト試算は公開されていないが、調製方法や水素捕集が簡便、貴金属が対極で集約された利用なので、p型半導体光電極よりも低コスト化できると想定でき、欧州を中心に世界中で研究されている。著者らはn型の酸化物半導体光電極において最も高い太陽エネルギー変換効率の1.35 %(外部バイアス考慮済み。Applied bias photon-to-current efficiency:ABPE)を報告している[10]。4.2 重点化すべき方式は?もし研究開発に無限の時間があれば、最も単純な従来型光触媒での水素製造が最も低コストになるかもしれない。しかし近未来、例えば2030年までに実用化を考えるのであれば、将来的な水素製造コストだけでなく実現までの障壁の大小やスピードも考慮すべきである。図2に示すように、多くの技術に関して現状の太陽エネルギー変換効率とシステムコストや複雑さはトレードオフの関係にある。表1のソーラー水素製造技術の中でも同様の傾向がある。これらの長所短所が大きく異なる技術を比較するのは非常に難しいが、実用化を加速するには研究の重点化がある程度必要になる。著者らは、水素製造コストと実現までの障壁の両方を考慮して、独自開発した光触媒−電解ハイブリッドシステムが重点化すべき方式の一つになると考えて研究を行ってきた。次章以降では光触媒−電解ハイブリッドシステムに関して、その原理と開発に至った経緯、現状の進展状況、長所・短所を踏まえた重点化の理由、コスト試算、実用化に向けた研究シナリオについて説明する。5 光触媒−電解ハイブリッドシステムの原理と長所5.1 可視光を用いた光触媒水分解の限界著者らは一段光励起による光触媒水分解の研究を25年以上継続している。紫外線での水の完全分解(H2とO2が化学量論比で定常的に生成すること)は多くの光触媒で実現していたが、可視光では困難であった。レドックス媒体を用いる色素増感太陽電池を同時期に研究していた関係で、少し視点を変えて、植物の光合成の二段光励起のZ―スキーム型反応を模倣し、2種類の光触媒とレドックス媒体を用いた水の完全分解に挑戦した。その結果、1997年に紫外線も一部必要であるが、Fe3+/Fe2+レドックスと光触媒、イオン光反応を組み合わせたZ−スキーム型の完全分解反応に成功した[11]。さらに、2001年には可視光のみでの光触媒水分解に世界で初めて成功することができた[12]。これは、水素発生側にPt-SrTiO3(Crドープ)光触媒、酸素発生側にPt-WO3光触媒、レドックス媒体としてIO3−/I−を用いた系である。この系は人工光合成モデルとして学術的には興味深く、その後にいくつかのグループから改良した光触媒の報告があったが、可視光での見かけの量子収率(QE)用語1は6 %程度、太陽エネルギー変換効率(ηsun)用語2は0.1 %前後にとどまっていた。特に図4で示したように、伝導帯のポテンシャル制約の問題で最適な半導体材料が非常に限定され、水素発生側の光触媒の効率を高くすることが困難であった。5.2 光触媒−電解ハイブリッドシステムの発明光触媒による水分解反応には効率の低さだけでなく、実用化への大きなハードルがいくつもある。水素と酸素が爆鳴気として発生すること、大面積で漏れのない透明な水素捕集カバーが必要なこと、水素発生効率の性能向上のために大量の貴金属助触媒に頼らざるを得ないこと、等である。これらの問題を解決しなければ、例え高性能な光触・水素発生助触媒が大面積で必要・大面積での水素捕集・外部バイアスやケーブル不要・電荷の拡散長が短いpn接合膜(バイアス無し)・水素発生助触媒が大面積で必要・大面積での水素捕集・外部バイアスが不要p型+n型半導体・外部バイアス必要・水素発生助触媒が大面積で必要・大面積での水素捕集・太陽電池と同様の材料でコスト高・効率が現状で非常に高いp型半導体・外部バイアス必要・対極での水素捕集が容易・酸化物多く、調製簡易光n型半導体光電極系・外部バイアス必要・半導体の電位制約が少ない・水素捕集が容易・効率が現状で高い光触媒-電解ハイブリッドシステム・現状効率が低い・ガスが分離発生すると活性低下・水素発生用助触媒が大面積で必要・大面積での水素捕集・一段光励起より種類が多い・外部バイアスが不要・理論上ガス分離発生可能二段光励起型光触媒(Z-スキーム型)・現状効率が低い・水素と酸素の混合発生・水素発生用助触媒が大面積で必要・半導体の電位制約が厳しい・大面積での水素捕集・最も単純・外部バイアスが不要従来型光触媒(一段光励起)光触媒系短所長所表1 半導体を用いたさまざまなソーラー水素製造技術の比較

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