Vol.7 No.2 2014
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シンセシオロジー 研究論文−81−Synthesiology Vol.7 No.2 pp.81-92(May 2014)1 緒言:太陽エネルギー利用技術の意義と課題化石資源の枯渇問題やその消費で排出される炭酸ガスによる地球温暖化問題が近年顕在化し、それらに対応するためには化石資源依存度をできるだけ早く低下させる必要がある。人類が持続可能な社会を構築し発展を続けるためには、再生可能エネルギーの革新的な有効利用技術の早期開発が不可欠である。再生可能エネルギーの中でも太陽エネルギーは最も膨大であり、風力、波力、潮力、バイオマスの源でもある。地球に降り注ぐ太陽エネルギーの1時間分で世界中の全エネルギー消費量の1年分を賄うことができ、その総量は風力や地熱、水力のそれぞれ約500倍、5千倍、5万倍も大きい。しかし、太陽エネルギーにはエネルギー密度が低いことおよび天候の影響が大きいという二つの重大な欠点があるため、有効利用できる技術が限定されている。太陽光発電や太陽熱利用、バイオマス利用による燃料製造はすでに実用化されているが、これらの技術の延長上の研究によって化石資源を代替し、地球規模でのエネルギー問題の解決に至るかどうかはまだ見通せない。エネルギー密度が低い太陽エネルギーをさらに有効利用するためには、太陽光発電以上に安価でかつ非常にシンプルな革新的技術開発が必要不可欠である。太陽エネルギー利用の選択肢の一つに、植物の光合成と同じように光子を直接化学エネルギーに変換する人工光合成技術(Artificial photosynthesis)がある。人工光合成という言葉は非常に魅力的であるが、定義が曖昧であるために誤解を招きかねない。広義には植物の光合成機構の全体または一部を模倣することであり、必ずしもエネルギー問題の解決を目的としない研究も多い。エネルギー問題が顕在化した状況において、新しい太陽エネルギー変換技術の実用化を早期に実現するためには、人工光合成に関しての言葉の意味や研究開発シナリオを再考する必要がある。佐山 和弘*、三石 雄悟新しい太陽エネルギー変換技術の実用化および再生可能エネルギー社会の実現のためには、今から方向性を見定めて段階的かつ戦略的に研究することが重要である。この論文では、「ソーラー水素製造」の意義を明確化した。さまざまなソーラー水素製造技術を比較し、その実現可能性を議論した。特に著者らが開発した産総研の独自技術である「光触媒−電解ハイブリッドシステム」について、他の技術と比較しながらその有効性を検討した。コスト試算を行うことで、このシステムが低コストのソーラー水素製造のための有力な候補技術になることを示すとともに、その実用化に向けたシナリオについて議論した。ソーラー水素製造の研究開発− 独創的な光触媒−電解ハイブリッドシステムの実現を目指して −Kazuhiro Sayama* and Yugo MisekiIt is important to carry out research strategically and in a step-by-step manner in order to put new solar energy conversion technologies into practical use and to realize a society based on renewable energy. In this paper, we clarified the meaning of “solar hydrogen,” compared various solar hydrogen production technologies, and discussed their feasibilities. Specifically, we showed the effectiveness of the “photocatalysis-electrolysis hybrid system,” which was invented by AIST, as a promising candidate technology for low cost solar hydrogen production, based on preliminary cost estimations. The scenario toward the realization of the hybrid system is also discussed.キーワード:ソーラー水素製造、光触媒−電解ハイブリッドシステム、人工光合成、レドックス媒体Keywords:Solar hydrogen production, photocatalysis-electrolysis hybrid system, artificial photosynthesis, redox mediator産業技術総合研究所 エネルギー技術研究部門 〒305-8565 つくば市東1-1-1 中央第5Energy Technology Research Institute, AIST Tsukuba Central 5, 1-1-1 Higashi, Tsukuba 305-8565, Japan *E-mail:Original manuscript received July 2, 2013, Revisions received September 19, 2013, Accepted September 30, 2013Research and development of solar hydrogen production- Toward the realization of ingenious photocatalysis-electrolysis hybrid system -

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