Vol.7 No.2 2014
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研究論文:通信の大容量化に対応する「長さ」の国家標準(稲場ほか)−80−Synthesiology Vol.7 No.2(2014)質問・コメント(土田 英実:産業技術総合研究所)Hall、Hänschらによる光周波数コムの基本原理発明をベースとして、より実用的な装置に仕上げるための研究開発と位置づけられます。ファィバーコム自体の開発に関しては、目標が明確であり、目標達成までの道筋も詳細に記述されています。議論2 標題について質問・コメント(土田 英実)標題が「通信の大容量化に対応する長さの国家標準」となっていますが、光通信で必要とされるのは「長さ」標準ではなく、「光周波数」標準です。論文の趣旨と合致した標題、例えば、「光通信の大容量化を支える光周波数の国家標準」などのように変更することは可能でしょうか。回答(稲場 肇、大苗 敦、洪 鋒雷)通信帯波長への対応はもちろん重要なミッションであり、校正技術の確立において我々は常に先手を打ってきました。ただ一方で、長さ標準の実現技術もまた我々の重要なミッションであり、SIメートルを実現する国家標準の運用を長きにわたって行ってきました。歴史的にも、長さ標準の実現はより古くから行われており、光周波数標準が必要になったのは21世紀に入ってからですので、説明としては長さ標準→光周波数標準の順番にさせて頂きたいと存じます。また、そのような理由により、表題についても変更なしでご了承願えれば幸いです。議論3 光ファイバーコムの応用分野質問・コメント(土田 英実)光ファイバーコムの主要な応用分野として、光通信に重点を置いていることは、標題から理解できますが、5章の内容は、光通信から長さ標準、国際比較、高速制御等多岐に渡っており、発散している印象を受けます。長さ標準に関わる内容を記載してもよいと思いますが、光通信の部分をもう少し膨らませることはできないでしょうか。光通信で規定されている周波数グリッド、周波数計測技術に対する要求、光ファイバーコムが産業界でどのように利用されているかなどの記述があれば、理解が一層深まると思います。回答(稲場 肇、大苗 敦、洪 鋒雷)今回解説したファイバーコムの成果では、「いろいろな応用ができた」ことも重要なポイントと考えていました。しかし、ご指摘のとおり発散しているという印象を持たせないよう、光通信の記述を充実させるために5章の冒頭に追記を行いました。議論4 ファイバーコム開発の動機や予測質問・コメント(小林 直人)この論文によると、ファイバーコムにより固体レーザーコムの欠点をほとんど克服し、非常に高精度の光コムを作ることができたとのことですが、2点ほど質問があります。(1)ファイバーコムを開発しようという動機ですが、論文によると共同研究企業が高性能ファイバーレーザーを提供してくれたからとの記述がありますが、ファイバーコムを開発すれば高性能コムになりそうだという予測は始めからあったのでしょうか。(2)ファイバーコムを自作したことが今回の大きな開発要素となったとの記述がありますが、そうすることよって始めからうまくいく予測があったかどうかをお聞きしたいと思います。回答(稲場 肇、大苗 敦、洪 鋒雷)2002~2004年の科学技術振興調整費プロジェクト「ブロードバンド光シンセサイザ」で、ある企業との共同研究が実現しました。その会社のモード同期ファイバーレーザーは信頼性が高く、非線形結晶を内蔵するなどで波長800 nm帯の光コムも発生できるなど、優秀なレーザーでした。2004年には高非線形ファイバーと組み合わせた絶対光周波数計測も実現して、ファイバーコムの開発は一段落しました。しかし、レーザーシステムはその会社が開発したものですから、例えばビート信号のS/Nが低くてもコム発生部には手を入れられず、他にも制御系等に不満がありましたが、改造はその会社に依頼しなくてはなりませんでした。また、光コムを使って行いたい研究はたくさんあり、多数の光コムが必要でした。それらのことから、その後の改善、そしてツールとして研究を展開していくためには、モード同期ファイバーレーザーから増幅系、非線形ファイバ(HNLF)の選定など、すべてのシステムを自作することが重要だと考えました。コムの製作については、Ti:Sコムおよびメーカー製ファイバーコムでの経験、CWファイバーレーザー製作の経験などがありましたので、超えなければならない課題は多いと思いましたが、少なくとも周波数計測できるシステムは自作できるだろうと思っていました。自作のシステムが最も使いやすく、高い性能のものになるという自信まではありませんでしたが。しかし、現在、市販のコムシステムを見る機会がたまにありますが、気に入らない仕様があっても、自分で改造しにくい構造になっていて、それを自分が使わなければならないとしたら辛いな、と思います。議論5 光コムとしての高性能の実現質問・コメント(土田 英実)4.1節の始めに、Ti:Sレーザーとファイバーレーザーの性能(出力、パルス幅)を比較した記述がありますが、光コムとして動作させるために、どのようにして性能の差を克服したのか明確には記載されていません。用いた手法(光増幅、パルス圧縮等)と、性能差がどこまで小さくなったかを具体的に記載して下さい。回答(稲場 肇)光コムの広帯域化においては、出力やパルス幅といったレーザー側の性能を上げることも有効ですが、高非線形ファイバーの選定やCEO信号検出方式の工夫といったレーザー以外の最適化も必要でした。今回は、例えば、波長帯域が1オクターブに満たないコムのCEO信号を2f-3f干渉計で検出したり、最適な高非線形ファイバーを見つけて適用したりすることにより、CEO信号を検出することができました。4.5節にも加筆しましたが、レーザーの自家製作以降も、Ti:Sコムと比較したとき、パワーやパルス幅といった時間軸上での性能差は特に小さくなっておりません。我々がめざし、開発したのは高速制御による低い雑音性能、および堅牢性を持つ、周波数軸上で高性能かつ実用的なファイバーコムです。議論6 光コムとしての高性能の実現質問・コメント(土田 英実)4.3節に分散制御の必要性が詳しく記述されていますが、光ファイバー通信や超短光パルスに関わる研究者にとっては、常識的な内容に思われます。また、平均パワーとピークパワーの区別が明確ではなく、スペクトル拡がりとの関係も理解しにくくなっています。出力増大を伴う原因も含めて、わかり易い記述に改めて下さい。回答(稲場 肇)平均パワー、ピークパワーについては、ご指摘の通り区別いたしました。また、出力増大に伴う原因についても、仮説ではありますが加筆致しました。分散制御について4.3で述べた、光アンプへの入射光パルスのチャープ量を適正に調整すると、出力光の平均パワーが増大する現象は、論文、および特許として認められたオリジナルな成果ですので、ご了承いただければ幸いです。

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