Vol.6 No.1 2013
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−4−Synthesiology Vol.6 No.1(2013)座談会:科学・技術・イノベーション時代の新しい研究方法科学技術振興機構社会技術研究開発センター)を引き受けたとき、設立当初の目標と異なって論文生産のファンディングになっていたので、これは実験だと思って、社会実装への重点シフトを常に考えながら領域総括(PO)を選ぶ、公募条件の工夫等を進めて来ました。社会実装を意識的に掲げ継続していくと、申請する側も研究体制づくりや成果の社会実験の仕方あるいは研究組織をどう構成するかを旧来型でなく考えます。まさしく構成学の一種であると私は思います。赤松 あるところまで介入すると、そこで行われている研究開発がプロセスの中で適切だったかどうかを評価しなければいけませんが、プロジェクトはいったん始まるとなかなかそこはいじれない世界になっていませんか。有本 おっしゃるとおりですが、RISTEXではPI(研究主宰者)や研究体制を何件かプロジェクトの途中で変えています。プロジェクトごとの個々の研究成果、評価だけではなく、一層上のプロジェクトが集まったプログラムのレベルで、マネジメントの方法等について構成的・俯瞰的な分析をし、RISTEX全体の運営改善に反映させる。こうした相互作用が非常に大事だと思っています。赤松 JSPSはどちらかというと基礎的なファンディングをしておられますね。安西 目的志向の研究以外に、知的探求から出発したアプローチがいろいろなところに芽を出していて、それを拾うことがイノベーションに大きな役割を果たしていると思います。あるところを選択してテーマを決めても、それ以外の畑に芽が出ているかもしれない。フィールドは無限にあり、科学技術の可能性は広い。その広いところの芽を常時育てることが、特に日本のような「追いつけ追い越せ」の時代を過ぎて、自分でオリジナリティを持ってイノベーションを進めていかなければいけない国にとっては極めて大切で、今までの話につなげれば、JSPSは無限の畑で芽をはぐくむ、それも自分から芽が育っていくように施肥するファンディングの機関だと考えるべきではないか。それは往々にしてマーケットから遠いため地味なのですが、科学技術のテーマの広さや、これからのイノベーションが全く新しいところから芽が出るかもしれないという、シンセシスのおもしろさにはそういう面がありますし、そういうシンセシスから出てくるイノベーションを支えるためには、私は広い畑を地道に耕し、芽を出させる仕組みが安定的・強力に必要だと思っています。もう一つ申し上げると、「シンセシス」と言うとイノベーションのプロジェクトマネジメントに近い話に聞こえますが、私はイノベーションは人から生まれる面が強いと思います。開発者、技術者、研究者が信念を持って、可能性を伸ばしながら新しい芽を生み出す、それがなぜ、どのようにしてできるのかを解明するのが「シンセシスの科学」の方向だと思います。赤松 これが芽になっているのか、蕾になっているのかという判断はどのように考えたらいいでしょうか。安西 評価はファンディングの目的に依存すべきだと思うのです。例えば、JSPSが扱っている奨励研究や若手研究者向けの少額のファンディングで、厳密に2年間で結果が出たかどうかを評価することには私は賛成ではなく、長期的にその人が研究者として育っていくかどうかを評価しないといけないと思いますが、反対に多額のものは厳しく評価しないといけない。ただ、これは政府のR&D資金の評価の問題と言えるかもしれませんが、どちらかというと申請時点の評価が厳しくて、研究成果の評価については目線が次の予算を取るほうに移っているのではないか。しかし、そこが曖昧だと、芽を出す研究と目的を持った研究が同じように評価されてしまう。基礎研究については縦断的に見ながら長期的な評価を行い、目的志向の研究については研究期間が終わった時に、産業界や違うセクターから見てもきちんと成果が出ているかどうかを評価するという、メリハリをつけることが必要だと思います。中村 JSTも分野やフェーズによって違うマネジメントをしないといけないと考えています。特にフェーズについては、初めに多めの研究テーマを設定して、2年目安西 祐一郎 氏
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