Vol.6 No.1 2013
52/70

研究論文:光ファイバ広帯域振動検出システムの開発(津田ほか)−49−Synthesiology Vol.6 No.1(2013)があった。この検出感度低下の原因を探索したところ光スイッチをポート1にした状態、つまり広帯域光をFBGに入射した状態で超音波計測を行っていたことがわかった。操作ミスであったが、この結果から広帯域光をFBGに入射し、FBGからの反射光強度を平均化処理することで超音波応答を得ることできる。換言すれば広帯域光をFBGに入射したとき、光フィルタによる復調なしでも低感度であるが超音波振動を検出できることがわかった。FBGは超音波振動を受けたとき反射スペクトルがpmレベルで変動している。この波長変動が光強度変化として現れていることから、上述したシステムでは広帯域光源出力の波長依存性を利用して超音波を検出したと考えられる[12]。光源の光出力の波長依存性を利用する考えはこれまで提案されてきたFBGを用いた超音波計測法にはない概念であった。この新しい復調法では復調用光フィルタが不要なことからシステムの大幅な軽量化・小型化が見込まれ、大きなブレークスルーにつながると期待した。そこで光源の光出力の波長依存性を利用する超音波検出法の高感度化について考察した。上記した実験で用いた広帯域光源のスペクトル分布を図5(a)に示す。用いたFBGのブラッグ波長1,550 nm付近では波長に伴い出力が若干低下する傾向を示している。このブラッグ波長近傍での光スペクトル分布を模式的に表したのが図5(b)で、超音波振動により光出力が0.5~1の間で変化すると仮定する。FBGの反射光強度が10の場合、超音波振動に伴う出力変化は5~10になり強度5の変化が得られる。もしFBGの反射光強度を100に増加した場合、同じ振動に伴う出力強度変化は50になる。したがってFBGからの反射光強度を高めることで超音波検出感度は改善される。FBGからの反射光強度を高めるには、強力な光出力を持つ広帯域光源またはファイバ・リング・レーザの利用が考えられる。広帯域光を用いた場合、光源から出力されるごく一部の光を利用して超音波を検出することから極めて効率の悪い計測システムである。そこでファイバ・リング・レーザを用いてシステムを組むことにした[13]。ここでファイバ・リング・レーザについて説明する。ファイバ・リング・レーザは図6のような構成をもつ。光アンプには微弱な広帯域光を放出する、また比較的高い成分強度を有する波長の光を増幅するという二つの機能がある。光アンプから放出された微弱な広帯域光は、FBGでブラッグ波長を中心とする微弱な狭帯域光として反射され、リング状ファイバを経由して光アンプに入射される。光アンプはブラッグ波長を中心とする狭帯域光を増幅し、増幅された光はFBGで再び反射されてリング状ファイバを循環する。このリング共振器と呼ばれるリング状ファイバにおいて、FBGからの反射光は繰り返し増幅されることで、FBGのブラッグ波長におけるレーザが作られる。例えばシステムのリング共振器長を10 mの光ファイバで構成した場合、FBGからの反射光がリング共振器の周回に要する時間は約33 ns、周波数に換算して30 MHzである。このためFBGがひずみ、温度変化を受けてブラッグ波長が変動しても、十分な応答速度でひずみ・温度に応じたブラッグ波長でレーザ発振する。リング共振器に光カプラを挿入し、レーザの一部を取り出し、光電変換器に入力してレーザ強度を測定する。光アンプが有する光利得に波長依存性がある場合、FBGのブラッグ波長変化をレーザ強度変化として検出することができる。ファイバ・リング・レーザを用いてFBGのブラッグ波長でレーザ発振させ、波長計等の光計測器を用いてブラッグ波長を測定してFBGが受けるひずみを計測する技術はこれまでにもあった。しかし、ファイバ・リング・レーザに組み込まれる光アンプの光利得の波長依存性を利用して、ブラッグ波長変化をレーザ強度変化に変換することでFBGが受ける振動を検出する技術は、この研究の独創的な発案である。このシステムを利用した超音波検出の一例を紹介する。00.51(b)(a)光出力光出力(dBm)波長波長(nm)超音波振動157015601550154015301520-15-20-25-30-35図5 (a)用いた広帯域光源の出力光スペクトル分布、(b)波長1,550 nm付近のスペクトル分布模式図

元のページ 

10秒後に元のページに移動します

※このページを正しく表示するにはFlashPlayer9以上が必要です