Vol.6 No.1 2013
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研究論文:光ファイバ広帯域振動検出システムの開発(津田ほか)−48−Synthesiology Vol.6 No.1(2013)えられる。しかし、材料破壊時の不連続なひずみ変化にレーザ波長制御が追随できないことから連続的なAE計測は困難である。そこで図2(b)のようにFBGを書き込んだ光ファイバのFBG部以外の個所を被検体に取り付ける工夫をした。この場合、被検体で発生したAEは被検体と光ファイバの接着点を介して光ファイバに入り、FBGに到達する。FBGは被検体に接していないことから、反射スペクトルはAEのみの影響を受けて波長シフトする。屋内であれば温度変化は小さいことから、実験室内で行われる破壊試験ではこのFBGセンサの取り付け法により連続AE計測が可能になった。CFRP圧力容器の耐圧試験中にFBGセンサと圧電センサから検出された累積AE事象数と圧力-時間関係を図3に示す。この耐圧試験では圧力1MPaを越えてから両センサともにAEを検出し始めた。両センサが検出したAEは圧力の増加に伴い増加する、また圧力が一定に保たれた時間ではAE増加率が減少する類似した挙動を示している。このようにFBGは圧電センサと同程度のAE計測能を有することがわかった[11]。4.2 光フィルタ復調方式によるAE計測ロケット等の宇宙構造物に搭載するシステムには寸法、重量、消費電力に大きな制約がある。JAXAが提示したロケット搭載用AE計測システムの仕様制限は、サイズ200×300×150 mm3、重量4 kg、消費電力14 W以下であった。前節に記したレーザ復調システムは、波長可変レーザや光スペクトルアナライザといった重量や寸法ともに大きな計測器を必要とし、上記した仕様制限を満たすことはできない。光フィルタ復調方式を用いたシステムは、レーザ復調方式と比較して超音波検出感度は劣るが、システムを小型化できるメリットがある。そこで光フィルタ復調方式によるAE計測を試みた。周期的な光フィルタを復調器に用いた場合、FBGの反射スペクトル幅と同程度のFSR(Free Spectral Range:光学的特性の周期間隔)を有する光フィルタを用いることで超音波検出感度が最大になることがわかっている[10]。AWGのFSRの選択肢は少なかったが、Fabry-Perot干渉フィルタにはさまざまなFSRを有するフィルタが市販されていた。そこでプロジェクトでは、FBGセンサの反射スペクトル幅と同程度のFSRを有するFabry-Perot干渉フィルタを用いてロケット搭載用システムを試作し、そのAE計測能を評価することにした。前記したロケット搭載用の仕様制限を満足したシステムを作成することができ、同システムをCFRPのAE計測に適用した。しかし、検出感度が低いことから、AE信号とバックグラウンドノイズの識別が困難であった。光源に広帯域光を用いる光フィルタ復調方式では、FBGから反射される光強度はレーザ復調方式と比較して1/10,0000程度と微弱である。このような微弱光を利用する光フィルタ復調方式ではAE検出感度の大幅な改善は難しいと考え、プロジェクト初年度が終了した時点ではAE計測システムの開発にめどが立っていなかった。4.3 新しい計測原理に基づくAE計測システムの開発産総研では当時、FBGのグレーティング長が超音波検出感度に及ぼす影響を評価する実験を行っていた。この実験で用いたレーザ復調システムの実験セットアップを図4に示す。FBGはわずかな温度・ひずみ変化で反射スペクトルが波長シフトすることから、超音波検出に最適なレーザ波長が常に変化する。このため図4の光スイッチをポート1に設定してFBGの反射スペクトルを光スペクトルアナライザで測定した後に光スイッチをポート2に切り替え、レーザ波長をFBGの反射スペクトル勾配が大きな波長、通常は反射率50 %の波長に制御した後に超音波応答を検出していた。レーザ復調方式は超音波検出感度が高いことから単発超音波に対しても良好な感度で応答を得られるはずだが、応答信号を平均化処理しなければ超音波を検出できないことがあった。つまり繰り返し超音波を発生させ、その応答信号を加算平均することで超音波を検出できるケース圧力FBGセンサ圧電センサ時間(s)圧力(MPa)累積AE事象数500010000150002001501005000012345FBG12光サーキュレータ光カプラレーザ波長制御光電変換器光スペクトルアナライザ光スイッチ波長可変レーザ広帯域光源図3 CFRP圧力容器の耐圧試験における圧力、累積AE事象数-時間関係図4 レーザ復調システムの実験セットアップ
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