Vol.6 No.1 2013
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研究論文:光ファイバ広帯域振動検出システムの開発(津田ほか)−47−Synthesiology Vol.6 No.1(2013)振動検出といった動的な計測はできない。動的なブラッグ波長計測法として光フィルタ、またはレーザを復調に利用する波長-光強度変換法がある[6][7]。光フィルタ復調方式は、FBGの反射光を透過率が波長に依存する光フィルタに入射させ、FBGのブラッグ波長変化を光フィルタの透過光強度変化として検出する。一方、レーザ復調方式は、図1に示すようにFBGの反射スペクトルの勾配が急峻な波長域にレーザを入射させることで、わずかなブラッグ波長変化を大きな反射率変化つまりFBGからの反射光強度変化として検出する。3.2 FBGによるAE計測の技術的課題材料に熱的または力学的負荷が加わると、ひずみが発生し突発的な微視破壊が生じる。このときに発生するAEを計測するためには、温度やひずみ変動条件下で超音波振動を高感度に検出できるセンサシステムが必要である。AEがもたらすひずみ変化はせいぜい数με程度で、これに伴うFBGのブラッグ波長変化はせいぜい数pmである[8]。このような微小で高速なブラッグ波長変化はレーザ復調方式を利用して高感度に検出できる。しかし、ひずみ約0.008 %で温度約7 Kの変化をFBGが受けると反射スペクトルは0.1 nm波長シフトし、図1に示すようにレーザ波長はFBGの反射スペクトルから外れる、つまり動作域から外れる問題がある。また光フィルタ復調方式では、周期的な光学特性を有する光フィルタを利用することで動作域を広げることが可能だが、レーザ復調方式と比較すると検出感度が劣る。このようにFBGによる超音波・AE計測技術は未成熟な段階にあり、FBGのブラッグ波長が大きく変動するひずみ・温度変動条件下においても、超音波検出可能なAE計測システムの開発が望まれていた。4 FBGを用いたAE計測システムの開発我々は2008年秋から2011年春まで、JAXAの研究プロジェクトである宇宙オープンラボの課題名「大型構造物の構造ヘルスモニタリング技術の研究開発」に参画し、ロケット等の宇宙構造物に適用されるひずみとAEの同時多点計測可能なFBGセンサシステムの開発に係わった。このプロジェクトではAISTが計測技術の開発と提供、民間企業が計測システムの設計・製作および実験遂行、そしてJAXAが実証試験のための実験場の提供および研究統括を行う研究体制を取った。プロジェクトが開始された2008年当時は、AE計測可能なシステムとしてAWG(Arrayed Waveguide Grating)またはFabry-Perot干渉フィルタといった、周期的な光学的特性を持つ光デバイスを復調用光フィルタに利用するシステムが提案されていた[9][10]。しかしFBGを用いたAE計測は報告されておらず、FBGのAE計測能は未知であった。このような状況であったので、プロジェクト初年度はFBGのAE計測能の評価、および光フィルタ復調方式によるAE計測可能性の検討の2点に課題を絞り研究を行った。4.1 レーザ復調方式によるAE計測FBGによる超音波検出ではレーザ復調方式が最も感度が高いことから、レーザ復調方式により超音波の一種であるAEを検出し、これまでのAE計測に用いられてきた圧電センサとAE計測能を比較した。具体的にはロケット燃料タンクに用いられるCFRP圧力容器の耐圧試験中のAEをFBGと圧電センサで検出し、両センサのAE計測挙動を比較した。これまでレーザ復調方式による超音波計測では、FBGは図2(a)に示すように被検体に貼り付けられたり、埋め込まれたりしていた。このようなFBGの反射スペクトルは、被検体が受けるひずみに応じて波長シフトする。このためひずみ変動条件下で連続的に発生するAEを計測するためには、反射スペクトルシフトをモニタリングしてレーザ波長を超音波検出可能な波長にフィードバック制御することが考ひずみ約0.008 %、または温度約7 Kの変化で反射スペクトルは0.1 nm波長シフトレーザ波長0.1 nm1550.41550.21550.01549.80.00.20.40.60.81.0波長 (nm)反射率微視破壊接着点光ファイバFBGFBG接着、または埋め込み光ファイバAE(a)(b)図1 レーザ復調方式の超音波検出原理ひずみ約0.008 %または温度約7 Kの変化で、反射スペクトルは0.1 nm波長シフト。図2 FBGの被検体への取り付け方法(a)従来の取り付け法、(b)FBG反射スペクトルがひずみの影響を受けない取り付け法。
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