Vol.6 No.1 2013
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研究論文:光ファイバ広帯域振動検出システムの開発(津田ほか)−46−Synthesiology Vol.6 No.1(2013)る。CFRPは導電性材料であることから、電気センサを用いた場合はショート等電磁障害により正確に測定できない問題がある。また放射性廃棄物を処分するための深部地下貯蔵施設等で数十年単位の長期間にわたり施設の安全性を確保する必要がある場合、耐食性・耐久性の問題から電気センサによる健全性評価は難しい。光ファイバセンサは、上記したような電気センサの問題を解決する構造体健全性評価用センサとして期待されている。中でも波長変調型光ファイバセンサであるファイバ・ブラッグ・グレーティング(FBG)は、ひずみセンサとしてすでに実用化され、近年は超音波センサとしての研究開発が盛んに行われている[2]。このようなことからFBGは、ひずみゲージと圧電センサの両方の機能を備えたひずみと超音波・AEが同時計測可能なセンサとして最も期待されている。しかし、後述するようにFBGによるAE計測には大きな技術的障壁があり、AEセンサとして実用化されていないのが現状である。FBGと既存の振動検出センサであるひずみゲージおよび圧電センサの特徴を比較したものを表1に示す。この論文では、宇宙構造物の健全性評価のための光ファイバセンサシステムの構築を目標にした宇宙航空研究開発機構(JAXA)の研究開発プログラムに携わる中で開発された、コンパクトなAE計測システムの開発経緯と、JAXA、民間企業、産業技術総合研究所(AIST)が共同で構築したFBGセンサを用いたひずみ・AE同時計測システムを紹介する。2 開発される光ファイバセンサシステムがもたらすインパクト近年、航空機は、非破壊検査では検出できない微小な初期欠陥から運用中にき裂が進展することを前提に寿命を評価する損傷許容設計に基づいて製造されている。この設計思想に基づく構造体では、定期的な非破壊検査を行い、次の検査までに急速なき裂進展が見込まれる大きさの欠陥を修理することで構造体の信頼性を確保している。もし構造体中の欠陥の存在や進展を運用中にモニタリングすることができれば、格段にその信頼性を向上させることができる[3]。このためスマート構造体と呼ばれる、欠陥の発生や進展のモニタリングに寄与するひずみ計測やAE計測機能を包含した構造体が、航空・宇宙分野を中心に注目されている。スマート構造体の実現には、耐久性に優れたシンプルなセンサ網から構成されるシステムの開発が望まれている。これまでの電気センサでは、上述のようにひずみとAE計測用のセンサを個別にそろえる必要がありセンサごとに配線を必要とすることから、大型構造物の健全性評価には複雑で重量の大きなセンサ網になる懸念がある。一方、光ファイバセンサは、耐久性に優れ、軽量なことからスマート構造体用センサに適している。特に波長変調型センサであるFBGは、波長多重技術を利用して一本の光ファイバ上に複数のセンサポイントを設けることが可能なことから、極めてシンプルなセンサ網を構築できると考えられる。このような理由から、ひずみとAEの二つの計測機能を有するFBGセンサシステムは、スマート構造体の中核技術として期待されている[4]。3 FBGについて3.1 FBGのセンサ機能FBGは光ファイバの導光路であるコアの屈折率がファイバ軸方向に周期変化した構造をもつ。FBGは0.2~2 nm程度の狭帯域光を選択的に反射する性質があり、この反射光の中心波長はブラッグ波長と呼ばれる[5]。FBGが受けるひずみまたは温度変化に応じて、ブラッグ波長は比例変化する。ブラッグ波長1.55 μmを有するFBGのブラッグ波長のひずみおよび温度感受性は、それぞれ1.2 pm/μεおよび14 pm/Kである。屈折率変調を与えている空孔欠陥が消失・拡散するような400 ℃以上の高温または放射線環境での利用には時間的制約があるが、それ以外の環境ではFBGは耐久性に優れた温度・ひずみセンサとして機能する。なお第1章に、FBGは優れた耐食性・耐久性から放射性廃棄物を処分するための深部地下貯蔵施設のモニタリングセンサとして期待されていると記したが、強力な放射線の照射はFBGを消失させる可能性があることを考慮しなければならない。ブラッグ波長の計測に波長計等の光計測器を用いた場合、サンプリング速度はせいぜい数Hzであることから、10,000~30,0003,000~300,000300~600価格(円/個)電磁障害耐食・耐久性×××××超音波・AE計測×○○○ひずみ計測数Hz~2 MHz数十kHz~数十MHz数kHzまで応答周波数範囲FBGセンサ圧電センサひずみゲージ(注1)測定対象の周波数域に応じた共振周波数を有する圧電センサを選択 する必要がある。(注2)既存技術によるFBGのAE計測には大きな技術的障害がある。(注3)グレーティングが消失する400 ℃以上の高温、または放射線環境で の利用には時間的制限がある。○(注3)○××ひずみと超音波・AEの同時計測○(注2)○(注1)表1 振動測定に用いられるひずみゲージ、圧電センサ、FBGセンサの特徴
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