Vol.6 No.1 2013
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研究論文:高齢者でも読める文字サイズはどのように決定できるか(佐川ほか)−41−Synthesiology Vol.6 No.1(2013)グル)文字等についても、適切な定数を補足資料として提供することになる。ここにおいて、世界各国の文字を対象とする場合は、表1で漢字を2種に分けたように、文字の形態や構成等に関する視覚的複雑さによる類別技術も必要となる。これに関してはさらに研究を進める必要があろう。ISOにおけるアクセシブルデザインの標準化対象は文字だけではない。人間工学にかかわる広い分野、すなわち身体系、感覚系、認知系のそれぞれの分野について、産総研のヒューマンライフテクノロジー研究部門が中核となり、加齢や障害特性のデータに基づく製品・環境等のデザイン手法の開発と標準化を進めている。アクセシブルデザインはISOにおいて新分野であり、既存の作業グループが存在しなかった。最も近い分野としてISO/TC159「人間工学」という技術委員会があり、そのTCの傘下にアクセシブルデザインの活動領域を作成した。図7はTC159の構成である。全体構成の中で塗りつぶしたワーキンググループ(WG)、すなわち、TC159直属のWG2、SC4傘下のWG10、SC5傘下のWG5、全体の調整をはかるAGAD、等はすべてアクセシブルデザインのために設立した作業グループである。こうした標準化の枠組みづくりも、研究成果普及のためには欠かせない活動であった。アクセシブルデザインは理念が先行し、技術はまだ発展途上の部分も多い。この技術整備には人間特性データの収集等多くの時間と労力が必要であり、産業界のみでは難しい。特に高齢者や障害者の問題解決には具体的な人間工学の知識やデータの蓄積が必要である。アクセシブルデザイン研究は、基礎的な研究成果と標準化による普及活動が密接に連携をとって進められている。6 まとめ:本格研究と標準化図8はこの研究の全体の流れをまとめたものである。図の左下から時計回りに研究が進められ、いったん右下のゴールに至った後、再び新たな問題を解決するために次の研究サイクルに至る道筋が示されている。通常、新たなニーズや問題の把握から基礎データの収集および基礎技術の確立が第1サイクルで行われ、多くの場合、ここで学術論文としての公表が行われる。アクセシブルデザイン技術の場合もここまでは同じステップを踏むが、そのステージで終結すると社会への普及が難しい。なぜならば、対象者の限られた小規模な研究の結果では、高齢者や障害者を含む多くの人々に適用できるかどうかが不明だからである。そこで、普及のための次の研究サイクルへと入る必要がある。図6 韓国、中国、ドイツ、日本、タイ、米国の6カ国における最小可読文字サイズ韓国はハングル文字、中国は漢字、タイはタイ文字、その他はアルファベット小文字。それぞれ明朝タイプの文字とゴシックタイプの文字を使用。(a)、(b)は2~114ポイントの10種の文字サイズに対する1文字の判読率。データは各国の高齢者約20名の平均値。照度は300~500 lx。(c)は最小可読文字サイズ推定式による推定値と(a)、(b)から求めた実測値(80 %正答率サイズ)との相関図。黒塗りおよび太字はゴシックタイプ推定フォントサイズ (ポイント)計測フォントサイズ (ポイント)25201510502520151050(c) 推定フォントサイズと実測フォントサイズの比較(b) ゴシックタイプフォント(a) 明朝タイプフォント文字サイズ (ポイント)韓国中国ドイツ日本タイ米国韓国中国ドイツ日本タイ米国文字サイズ (ポイント)可読正答率1001011.00.80.60.40.20.0100101

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