Vol.6 No.1 2013
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研究論文:高齢者でも読める文字サイズはどのように決定できるか(佐川ほか)−39−Synthesiology Vol.6 No.1(2013)文字サイズがやや低くなる傾向にある。全体を適合させるには、原点を通る冪関数かまたは式(2)のように定数bをもつ一次式が良い。この研究では、最終的に標準化という応用面に結びつける必要があることから、高精度よりもむしろ一般的な使いやすさを重視し、冪関数よりも簡単な一次式を選択した。さらに、原点を通らない式(2)はあくまで目の調節可能範囲の距離(近点から無限遠)に適用するもので、視距離がゼロ近傍の限界点では、そもそも視力が定義できない。この領域は適用外である。したがって、視距離ゼロの点において式(2)はP=bとなり、あるサイズが読めるという矛盾した結果になるが、ここは適用外であり、必ずしもP=0に収束する必要はないと考えた。4.3 計算例式(2)を適用して、最小可読文字サイズを求めてみる。例えば、70歳で視距離50 cm、100 cd/m2の明るさにおいて、ゴシック体、5~10画の漢字を読む場合を想定する。図3(a)より視距離50 cmでの70歳の視力(0.4)が分かり、視力からサイズ係数S[距離(m)/視力=0.5/0.4=1.25]が求められる。表1中の対応する値を読んで以下のように計算すると、最小可読文字サイズP(ポイント)が推定できる。P = 8.1 × 1.25 + 3.4 = 13.5(ポイント)同じ計算を明朝体で行うと14.8ポイントとなり、ゴシック体よりもサイズが大きくなる。すなわち、明朝体の方がゴシック体に比べて読みづらいことが分かる。また、明るさの条件が100 cd/m2より暗くなると図3(b)のとおり視力が落ちるためサイズ係数が大きくなり、最小可読文字サイズも大きくなる。最小可読文字サイズは、文字の可読性判断の基盤となる尺度を提供するものである。年齢、視距離、輝度によって視力がさまざまに変化しても、それらの変数を統合して一つの尺度を導けたことの利便性は大きい。なお、最小可読文字サイズは確率80 %で読める閾値付近のサイズであるので、このサイズではまだ“読みやすい”とは言えない。読みやすい文字サイズを求めるには、読みやすさ評価について研究を進め、新たに尺度を構成すると良い[7]。5 標準化による技術の普及前述したように、アクセシブルデザインは個人対応ではなく、より多くの人を含む集団を対象とする。集団の特徴を踏まえて技術を標準化し、社会全体に普及させることが重要である。この研究の研究成果である最小可読文字サイズの推定方法も、標準化をとおして、より多くの人に対して読みやすい文字サイズを提供できると期待される。5.1 JIS(日本工業規格)の制定この研究の基盤となるデータはまず日本語文字に対して図5 サイズ係数と最小可読文字サイズの関係(a)サイズ係数の関数として表した明朝体の3種の文字(ひらがな・カタカナ・アラビア数字、漢字5~10画、漢字11~15画)の最小可読文字サイズ。直線はそれぞれの文字種の結果に対する一次近似式。(b)同じ測定条件で、ゴシック体の3種の文字に対する結果。表 1 日本語文字の最小可読文字サイズを求める計算式の係数明朝体サイズ係数最小可読文字サイズ(ポイント)6050403020100ひらがな・カタカナ・数字漢字5-10画漢字11-15画ひらがな・カタカナ・数字漢字5-10画漢字11-15画ゴシック体サイズ係数65432105040302010065432104.18.6漢字11~15画3.48.1漢字 5~10画3.06.4ひらがな、カタカナ、アラビア数字ゴシック体3.69.6漢字11~15画2.89.6漢字 5~10画2.68.2ひらがな、カタカナ、アラビア数字明朝体ba文字の種類
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