Vol.6 No.1 2013
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研究論文:高齢者でも読める文字サイズはどのように決定できるか(佐川ほか)−38−Synthesiology Vol.6 No.1(2013)図4は3種の文字(ひらがな/カタカナ/アラビア数字、漢字5~10画、漢字11~15画)の文字に対して、最小の可読サイズの平均値を示したものである。条件として、年齢2段階(20歳代、60~70歳代)、視距離2段階(0.5、2 m)、輝度2段階(0.5、100 cd/m2)を組み合わせた計8条件を設定し、計測を行った。若年者全48名の結果(平均値)では、最も条件の良い100 cd/m2、0.5 m視距離、ひらがなに対する結果ではおよそ4ポイントのサイズの文字まで読めるが、高齢者では12ポイントとかなり大きくしなければならない。これは、先に示した視力の結果とも対応する。視距離が長くなると文字を大きくしなければならないのは幾何学的に当然であるが、暗くなると文字を大きくしなければならないことは、目の特性からくる要求である。4.2 推定式図4の結果は限定的な条件に対するものであるが、一般条件に幅広く適用するためには、この結果を他の年齢、視距離、輝度レベルに拡張しなければならない。図3の結果をさらに分析すると、新たに“サイズ係数”という変数を導入することによって、全体の結果がサイズ係数を用いた簡単な式で表されることが明らかとなった。サイズ係数とは、(1)式に示すように、視距離を視力で割った値である。S = D / V (1)ここでSはサイズ係数、Dはメートルで表した視距離、Vは視力である。サイズ係数の値は、該当する視距離における目の分解能(実寸)に対応する。視力の定義は目が分解できる最小の角度θで定義されており、この定義では視力は距離に依存しない。しかし、高齢者は目の調節能力に限界があり、特に短い視距離(およそ1m以下)では距離によって視力が大きく異なる。図3(a)に示した視距離と視力のデータから高齢者の距離ごとの視力を知ることができるが、視力そのものは角度の情報のみとなるので、文字サイズと直接結びつかない。そこで、(1)式によるサイズ係数を導入することにより、視距離に対応した実寸の分解能を知ることができ、文字サイズと関連付けることができると考えた。すなわち、最小可読文字サイズは実寸の分解能であるサイズ係数に比例すると考えた。なお、分解能を角度で表記する場合と実寸で記述する場合の変換(tanθ=θ)については、角度θは十分小さな値であり、その誤差はここでは無視できる。図5は、導入したサイズ係数に対して実験で得られた最小可読文字サイズを表したものである。この結果を見ると、やや近似の程度の悪いところが見られるものの、全体として最小可読文字サイズはサイズ係数の関数で表現できることが分かる。そこで、最も簡単な式として、サイズ係数と最小可読文字サイズの間に、次の一次式を当てはめることにした。P=aS + b(2)ここで、Pは最小可読文字サイズ(単位:ポイント)、aおよびbは明朝体やゴシック体等のフォントタイプや漢字、ひらがな等の文字種によって異なる係数である。aおよびbの値は、図4の近似直線から表1のとおりである。式(2)は定数bをもつ一次式であるが、サイズ係数が可読文字サイズに比例するという考えを踏まえると式(2)は原点を通るb=0の式となるのが理想である。しかし、図5のデータを見ると実際はサイズ係数の大きな領域では図4 日本語文字1文字を読む場合に必要なフォントサイズ(a)視距離0.5 mおよび2 m、輝度100 cd/m2および0.5 cd/m2の条件における日本語一文字(ひらがな・カタカナ・アラビア数字、漢字5~10画、漢字11~15画)を読む場合に必要な最小の文字サイズ。若年者48名の結果。(b)同様の条件における高齢者44名の結果。 (a)若年者48名最小可読文字サイズ(ポイント)60504030201002.0 m2.0 m0.5 m0.5 m(b)高齢者44名漢字11~15画漢字5~10画ひらがな・カタカナ・数字100 cd/m2/明朝100 cd/m2/ゴシック0.5 cd/m2/明朝0.5 cd/m2/ゴシック100 cd/m2/明朝100 cd/m2/ゴシック0.5 cd/m2/明朝0.5 cd/m2/ゴシック100 cd/m2/明朝100 cd/m2/ゴシック0.5 cd/m2/明朝0.5 cd/m2/ゴシック100 cd/m2/明朝100 cd/m2/ゴシック0.5 cd/m2/明朝0.5 cd/m2/ゴシック

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