Vol.6 No.1 2013
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研究論文:高効率SOFCシステムによる分散型発電の実現に向けて(田中ほか)−21−Synthesiology Vol.6 No.1(2013)幅は±0.02 %で十分小さいことが判明した。都市ガスの高位発熱量(HHV)と流量、出力(60 Hz有効電力)の平均値を測定値とし、表1に示すように、それぞれ44.69 MJ Nm−3、5.507×10−4 Nm3 s−1、10.14 kWであり、式(1)より高位発熱量ベースの発電効率41.2 %(HHV)が得られた。上記各パラメータの変動幅、効率測定時の都市ガス温度・圧力等測定条件が与える不確かさ、および3.2.1.1〜3で示した測定装置由来の不確かさを合成したところ、表1に示すように、発熱量、流量、出力、発電効率の相対不確かさは、それぞれ、±0.12 %、±0.58 %、±0.46 %、±0.74 %となった。したがって、発電効率は41.2 ±0.3 %(HHV)と推定でき、NEDOプロジェクトの目標不確かさ±1.0 %を達成するとともに、この10 kW機がNEDOの開発目標発電効率40 %(HHV)以上をクリアしたことを証明することができた。以上をまとめると、この研究では国家計量標準へトレーサブルな可搬型の高精度効率測定手法および装置を開発し、発電効率をSOFC設置サイトでも相対不確かさ±1.0 %以下で測定できることを明らかにした。よって、将来的に発電効率が50〜70 %に向上した場合でも、効率を不確かさ±0.5〜±0.7 %で測定することが可能になった。また、この手法は、SOFCだけではなく、その他の燃料電池システムあるいはエネルギーシステムの発電効率測定にも応用できると考えられる。3.2.2 発電効率測定試験方法の規格標準化燃料電池システムの発電効率試験方法は、国際規格としてIEC 62282-3-2が発行されているものの、国内ではSOFCの発電効率試験方法のJIS規格は確立されていなかった。また、SOFCが実用化・普及開始される段階では少なくとも商用電力並み(出力測定の不確かさ±0.1 %級)の測定精度をもつ試験方法が必要である。そこで、この研究では、3.2.1項で開発した高精度発電効率測定手法の知見を活かしつつ、SOFC設置サイトへの機器輸送等が測定器に与える影響を調査し、SOFCシステムの最も重要な性能指標の発電効率を有意に比較できるような不確かさで試験できる発電効率試験法のJIS素案を作成し、(社)日本電機工業会のご協力のもと、セル・スタック製造企業、システム開発企業、中立研究機関等から構成される審議委員会で検討を行った。委員会の審議結果を反映しつつ、既存のJIS規格、校正制度等を調査し、SOFCシステムに対し、国家計量標準へのトレーサビリティを確保しつつ、発電効率を±1 %よりも小さな不確かさで測定するJIS標準仕様書(TS)原案を2008年に作成した。原案は日本工業標準調査会(JISC)で審議された後、2010年にJIS TS C0054「メタンを主成分とする気体燃料を用いる固体酸化物形燃料電池システムの発電効率試験方法」が発行され、2011年10月からの家庭用SOFCシステムの販売開始に間に合わせることができた。4 まとめと今後の展望SOFCシステムの早期実用化を支援するとともに、SOFCが商用化された際の公正な取引に重要な性能試験方法の規格標準化を行うために、国家計量標準へのトレーサビリティを確保しつつ、市販の測定器、触媒技術等を統合し、SOFC単セルからシステム(最終製品)までの新規なSOFC性能評価手法を開発した。SOFCシステムの研究開発で重要なSOFC単セル・スタックの性能評価手法については、簡便、安全で、かつ高精度な発電性能評価手法を開発し、民間企業と試験装置を開発するとともに、スタック内の各セル性能のばらつき要因を同時に測定できる手法・装置を開発して、民間のSOFCシステムの研究開発に貢献してきた。また、SOFCシステムの発電効率測定については、可搬型でSOFC設置サイトでも高精度に効率を測定できる手法および装置を開発し、民間企業が開発した10 kW機の発電効率を実測したところ、41.2 ±0.3 %(HHV)という値を得、NEDOプロジェクトの目標値(発電効率40 %以上かつ不確かさ±1.0 %)を達成していることを証明した。なお、将来的に発電効率が向上した場合でもこの手法を十分使用できる。さらにJIS(TS)の原案を作成し、SOFCシステムの販売開始に先駆けJIS(TS)発行が実現できた。今後は、SOFC単セル・スタック性能試験方法のJIS規格化、IEC規格化を急ぐとともに、この研究で開発した手法を活かして、SOFCシステムの発電効率のさらなる向上、新燃料(ジメチルエーテル等)・バイオマス・石炭を利用できるSOFCシステムの研究開発、自動車等の補助電源として期待されている可搬用SOFCの研究開発に貢献し、高効率分散型SOFC発電システムの普及および適用性の拡大に努めていきたい。さらに、SOFCの製品化で重要になる耐久性試験方法の規格標準化も進めていきたい。謝辞本研究開発および性能試験方法の規格標準化は、経済産業省、NEDOから支援を受け実施しましたので、関係各位に感謝申し上げます。また、研究開発にあたり、関西電力(株)、三菱マテリアル(株)、住友精化(株)、紀本電子工業(株)、英和(株)、産総研計測標準研究部門流量計測科をはじめ、連携していただいた皆さまにお礼を申し上げます。試験方法の規格標準化では、(社)日本電機
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