Vol.6 No.1 2013
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研究論文:高効率SOFCシステムによる分散型発電の実現に向けて(田中ほか)−19−Synthesiology Vol.6 No.1(2013)各都市ガス成分の発熱量の不確かさ±0.1 %程度を議論しているものの、不確かさ計算に取り入れていないので、この研究ではその不確かさも取り入れた。燃料ガスの組成を高精度に分析するには、ガスクロマトグラフ校正用の標準ガス(ガス成分の濃度が既知)の不確かさが重要である。国内で市販されている不確かさ付きの都市ガス用標準ガスを調べたところ、主成分のメタン濃度については、例えば88.47±0.89 %(k = 2)のように、相対不確かさ±1.0 %であり、この研究には不十分であることが判明した。そこで、住友精化(株)の協力のもと、質量比混合法により都市ガス中の各成分を47 Lガスボンベに充填し、各充填質量を国家質量標準にトレーサブルな大型天秤を用いて3回ずつ繰り返し測定し、標準ガスを調製した。得られた充填質量、天秤の不確かさ等から、ISO 6142の方法に従い、標準ガス中の各成分のモル分率およびその不確かさを計算した。その結果、メタンの場合、88.002±0.016、相対不確かさ±0.02 %(k = 2)となり、標準ガス組成の不確かさを既存標準ガスの1/50に低減できた。次に、このような高精度標準ガスを複数用いて、ガスクロマトグラフの校正(検量線の作成)を行った。さらに、サンプルを測定前後に3種類の標準ガスを繰り返し分析でき、別途開発した可搬型のガスサンプラ中の都市ガスサンプルを自動で分析し、ガスサンプリング時の都市ガス流量、ガス圧力、温度等と共に分析データを出力できる高精度発熱量自動測定装置(図7)を紀本電子工業(株)と共同開発した。以上の結果から、都市ガスの発熱量を不確かさ±0.12 %で測定できるシステムを構築することができた。3.2.1.2 都市ガス流量測定手法の開発SOFCシステムに供給される都市ガス等原燃料の流量を測定するには、図7に示すように、SOFCシステムの上流に効率測定用流量計(測定装置)を設置する必要がある。家庭用ガスメーターの検定には計量法で指定された湿式体積流量計が基準器として用いられているが[15]、日本では都市ガスの流量標準がなく、トレーサビリティが十分確保できていないことが問題であったので、計測標準研究部門流量計測科は、この研究開発で都市ガス流量の標準器と実用標準器を開発した。また、上記のようなオイルや水ミストが発生する流量計は、後段のSOFCに影響を与える可能性があるので、効率測定用には向いていない。一方、SOFCシステムの試作機等では、メンテナンスが容易で、繰り返し性に優れる熱式の質量流量制御器(MFC)がよく用いられている。そこで、この研究では、市販のメタン用熱式質量流量計(MFM)を利用した都市ガス流量測定および流量校正システムを構築した。市販のMFMやMFCのメタン流量を高精度質量流量計で校正したところ、8 %の器差を示すものもあり、目標の相対不確かさ±0.6 %の高精度流量測定を実現するには、使用ガスによる流量校正が必須であり、校正に用いる都市ガス等燃料流量の不確かさを低減することが重要であることが判明した。また、ガス組成の影響が少ない体積流量計に対して、MFMは気体の種類によって感度が変化するので、ガスの種類(組成)による補正が必要である。さらに、精密な流量測定にあたっては、質量流量計といえども、圧力・温度の影響を考慮する必要がある。そこで、図7に示すように、MFMの温度依存性を低減するため、熱交換器等によりガス温度を±0.3 ºCの変動で調整でき、各種データを記録できる可搬型の流量測定装置を開発した。また、SOFCシステムの耐久性試験に備え、試験対象に影響を与えず、一定期間ごと(例えば1か月ごと)にMFMを校正し感度ドリフトを空気で評価できるように、同装置には都市ガスのバイパスラインおよび小型空気コンプレッサーと層流式高精度流量計(米国DHI製molbloc)を搭載した。なお、MFMで測定された質量流量(g/min)を標準状態(0 ℃、101.325 kP)の理想気体の体積で換算した流量(l min−1, m3 s−1)をそれぞれ、Nl min−1, Nm3 s−1で表す。MFMの流量校正には、都市ガス主成分のメタン(濃度約89 %)、エタン(6 %)、プロパン(3 %)、イソブタン(2 %)用のMFCをそれぞれ用意し、各流量を質量流量で校正し、各流量を調整後スタティックミキサーで混合し、熱交換器で温調した模擬都市ガスを発生する都市ガス流量校正器を試作した。この校正器を用いて、MFMの校正やMFMのガス組成依存性・温度依存性・圧力依存性等のMFM特性試験を実施した。この校正器では、20 kWのSOFCに相当する70 Nl min−1までの都市ガス流量を校正できる。詳細については、別報[16]を参照されたい。また、使用したメタン用MFMの都市ガス組成補正係数(CFmix)は、重回帰分析により、式(2)で示す多項式で計算できることを確認した[16]。計算値の不確かさは±0.15 %であった。 1/CFmix =∑xi / CFi (2)ここで、xiは成分iのモル分率、CFiは熱式質量流量計におけるメタンに対するガス成分iの相対感度である。さらに、MFMの繰り返し性、直線性、温度依存性、圧力依存性、経時的な感度ドリフトについては、カタログスペックと同程度であることを確認し、これらに起因する不確かさの解析にはカタログスペックを使用してもよいと判断した。以上をまとめると、20 kW級SOFCシステムまで対応できる高精度可搬型都市ガス流量測定装置、流量標準にトレーサブルな流量校正方法および校正器を開発し、校正
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