Vol.6 No.1 2013
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研究論文:高効率SOFCシステムによる分散型発電の実現に向けて(田中ほか)−16−Synthesiology Vol.6 No.1(2013)の材料・構造に依存し、それらを低減することがSOFCの性能向上につながる。SOFCシステムでは都市ガス、液化石油ガス等多様な原燃料を利用でき、図2に示すように、それらを改質してアノードに供給する。つまり、原燃料種、改質条件により、アノードガスの組成は広く変化する。一般的な発電性能試験時の問題として、1. 加湿水素による簡易試験ではSOFCシステムの実運転条件と試験条件が大きく異なる、2. 改質ガスを模擬して供給する場合、毒性の強い純一酸化炭素を取り扱う必要があり危険で、小流量の水蒸気を安定に発生させることは難しく、セル電圧の変動が大きくなることが挙げられる。なお、SOFCシステム(製品)では、アノードガスがそのまま漏えいすることはなく、アノード排ガス中の一酸化炭素等未利用燃料成分は、カソード排ガス中の酸素で燃焼されるので、一酸化炭素の危険性は極めて低い。そこで、この研究では、これらの問題点を解決し、SOFC開発者等がより安全に、簡便に、かつ信頼性をもって発電性能を試験できる模擬改質ガス供給方法を中心に、試験方法の研究開発を行った。開発した改質ガス供給方法を図5に示す。水蒸気発生は、過剰水素を供給のもと、市販の白金触媒を充填した触媒燃焼器にて水素と酸素を200 ºC以上で反応させることにより行った。小流量の水蒸気でも安定に発生でき、H2-H2O混合ガスを調製できる。また、純一酸化炭素の取り扱いを避けるために、市販のニッケルあるいはルテニウム触媒(メタン化用)を用いて、逆シフト反応(H2 + CO2 → H2O + CO)を利用してアノードの直前で二酸化炭素から一酸化炭素をその場発生させると同時に、メタン化反応(4H2 + CO2 → CH4 + 2H2O)を併発させ、メタンも同時に発生できる平衡反応器を開発した。この手法の特徴をまとめると、水素、酸素、二酸化炭素を原料とし、触媒燃焼器と平衡反応器を用いて、改質反応の平衡時と同じ組成・流量の模擬改質ガスを発生させ、アノードに供給できる。また、万一、試験中に一酸化炭素が漏えいした場合でも、二酸化炭素の供給を止めることにより、一酸化炭素の発生を止めることができ、試験時の安全対策を講じることができる。次に、開発したアノードガス供給方法のノウハウを技術移転し、図5に示すように、英和(株)と共同でSOFC発電性能試験装置を開発した(特願2008-045311)。100 W級SOFC試験の場合、コンパクトな触媒燃焼器(10 mL)および平衡反応器(20 mL)を実現した。模擬改質ガスの原料流量は熱式の質量流量計(MFC)で制御しており、高精度流量計(不確かさ±0.2 %)[12]を用いた流量校正により、不確かさ±0.5-1.0 %を達成した。この装置の性能を確認したところ、模擬改質ガスの組成精度は平衡値に対し±0.5-1.0 mol%(図5)、ガス組成の安定性±0.04 mol%が得られ、高精度な発電性能試験方法が実現できた[13]。また、民間の実用SOFCを試験したところ、原燃料の流量比を変えることにより、想定する原燃料や改質条件を容易にかつ迅速に変更することができ、セル電圧は30 s程度で安定して大幅に試験時間を短縮できるとともに、セル電圧の変動を±0.1 %以下に抑制できることが_ H2-H2O-CO-CO2-CH4H2 O2 CO2 点線は、平衡値英和(株)と共同開発した装置模擬改質ガス発生例電解質• 水蒸気を小流量でも安定に発生平衡反応器触媒燃焼器触媒燃焼器用ヒーターセル用電気炉平衡反応器用電気炉カソードアノード空気• CO、CH4をその場発生SOFC模擬改質ガス供給部CO2COCH4H2OH2想定改質温度/ ℃模擬改質ガス組成 / mol %75070065060055001020304050図5 開発したSOFC発電性能評価手法と試験装置
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