Vol.5 No.4 2012
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研究論文:マンモグラフィの安全を支える線量計測(田中ほか)−227−Synthesiology Vol.5 No.4(2012)その際、医療現場の線量計の校正を行う校正場(X線場)が、校正事業者が保有するこれまでのW/Al線質のままでは、あまり意味がない。しかし、マンモグラフィ用X線の線質に準拠した校正場の整備には、照射装置の導入等に数千万円規模の設備投資が必要となってしまう。そこで、産総研は依頼試験制度により、産総研の照射装置を活用してスムーズな標準供給ができるような環境を整備した。このようなシナリオを策定して、国際的な同等性のある線量標準が迅速かつ広範に医療現場に供給され、線量評価の信頼性向上につながることを意図した。4 国家標準の開発マンモグラフィに特化したX線線量の国家標準の整備には、線量の絶対測定(単位の定義に沿った測定)が可能な国家標準器の開発と、マンモグラフィ用X線の線質と同じX線標準場の開発が必要となる。以下では、国家標準器の開発とマンモグラフィ用X線標準場の開発について述べる。4.1 国家標準器の開発マンモグラフィを含めた軟X線(ここでは50 kV以下の管電圧)の場合、物理的に明確に定義された空気カーマ用語4(もしくは照射線量用語5)の単位Gy(もしくはC/kg)で標準供給がすでになされている。照射線量の絶対測定が可能である自由空気電離箱が一次標準器として世界的に採用されている。現在のところ、産総研の軟X線の線量の国家標準も自由空気電離箱を採用している(図5)。自由空気電離箱では、電離体積内で生成されたイオンの電荷を測定し、照射線量(または空気カーマ)を求めている。電離体積内の空気の質量をmとすると、照射線量率X(C/kg/s)は次の(1)式によって得られる。X ki… (1)mIΠ=・10=1iここで、(1)式のIは自由空気電離箱で測定されるX線による空気の電離電流、kiは補正係数である。補正係数は、実際の実験条件を、線量の定義される理想的な条件に補正するための係数で、この標準では全部で10種類ある。マンモグラフィ用X線では、それらの補正係数のうち、規定面と集電極中心間の空気層による吸収に対する補正が約1.5〜2 %と最も大きく、その他に散乱線に対する補正が少し(~0.5 %)あるのみで、他の補正係数に関してはかなり小さい(〜0.1 %未満)。散乱線に対する補正等の実測評価が困難な補正係数は、モンテカルロシミュレーションにより評価している。図6に開発したマンモグラフィの線量標準の装置図を示す。マンモグラフィの国家標準を整備する際、マンモグラフィ専用の新しい国家標準器(自由空気電離箱)を開発せず、既存の自由空気電離箱(軟X線の線量の国家標準器)の補正係数をマンモグラフィ用のX線の線質で評価する方法を採った。これは標準の開発から供給までの時間を極力短くし、素早く標準供給の社会的要請に応えるためである。図6に示すように、自由空気電離箱はXYステージ上に設置し、軟X線(W/Al線質)の線量標準と共用できるようになっている。4.2 マンモグラフィ用X線標準場の開発標準場として設定するマンモグラフィ用X線の線質は、現場で最も利用されている線質から重点的に開発を進めた。前述のとおり、線質は主に、X線管球のターゲット材、管電圧、付加フィルタの材料と厚さによって決まる。ただし、線質を規定する際、国内だけでなく国外も意識した。国外を意識した線質とは、ISOやIEC規格等に代表され高圧電源9.0 cm2.0 cm8.0 cm信号入射孔X線遮蔽箱高圧電極集電極保護電極規定面(空気カーマの絶対値を定義する面)電荷収集領域軟X線照射装置マンモグラフィ用X線照射装置国家標準器国家標準器XYステージXYステージ図5 国家標準器(自由空気電離箱)の概略図図6 開発したマンモグラフィ用X線の線量標準の装置図・

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